そういうことはあまり(アトランティス夢小説)
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朝おきて雨戸を開けたら目の前は白一色。そんな雪の日でも二人は外で会う。
アトランティスは常に人混みを避けていて、寒さより人気がないことの方に重きをおいているからだ。だけどそのことについて議論したり価値観を問われたりするのは大嫌いで、それをよく知っている彼女は何も言わない。
彼女が望んでいるのは大好きな人の傍らでひととき過ごすことだし、それを互いに良しとしているというのが大前提なのだ。
雪道をいつもの倍の時間をかけてサクサクと歩き、待ち合わせ場所の池のほとりにたどり着くと、守り主みたいに太く大きい幹の傍らにアトランティスがいた。
さすがの彼もこの陽気ではそれなりに厚着をするようで、身頃が緑色で袖は白い合皮でできたスタジアムジャンパーと、裾をロールアップしたジーンズを身につけている。
ジャンパーの緑は彼の肌色とトーンが合わせてあって、シンプルなコーディネートだけれどもとてもよく似合っていた。
彼女はそれが嬉しくて、ついいつもと違うことをしてみたくなった。
足元の雪を一すくいして軽くかためると、こちらに背を向けているアトランティスに向かって雪玉をなげた。
しかし彼もさすがは超人、ヒュンと近づく白い物体の気配を感じると、振り返って鋭い水の一閃を口から放った。アトランティスのフェイバリットホールド「ウォーターマグナム」だ。
狙いは見事に命中し、雪玉は放物線の頂上でべチャリとほどけ、しぶきが辺りに飛びちった。
ときにリングロープをも切断するそれが、水鉄砲程度の水圧だったのは不幸中の幸いだろう。
しかし、彼女は頭からそのしぶきをかぶってしまった。
「きゃっ!」
「おまえか!?」
アトランティスはしまった、と思った。小走りにかけよって相手を見下ろすと、濡れた髪の毛がペッタリと顔のまわりにはりついていた。
「だ、だいじょうぶ……ごめんなさいね、ちょっとビックリさせようと、して」
くしゅん、と小さなくしゃみで言葉はさえぎられた。
「いや、よければよかったんだ。周囲の確認もしないで横着したオレが悪い」
アトランティスは鋭いカギ爪で柔らかな頬を傷つけないようにそっとへばりついた髪をなで分けた。
こんな寒さのなかで濡れたままでいたら間違いなく彼女は風邪を引いてしまう。ニンゲン、ことに女性は信じられないくらい脆弱なのだ。かと言ってこの場で濡れた衣服を脱げとも言えない。
本当にこいつらは――面倒な生き物だ。
二人はアトランティスの自宅にいた。
あのあと彼は彼女を抱えあげ、その身体が凍えてしまわないうちに、と急いで自分の家まで駆けた。それからこの居間に放りこみ、石油ストーブとコタツのスイッチをいれたあと「ちょっと待ってろ」と言って姿を消した。
幾らもしないうちに今度は(恐らく自分の)ジャージの上下とバスタオルを持ってきて「着替えろ、終わったら呼べ」と言いのこし、ふたたび部屋を出ていった。
乾いた衣服に着替えてホッとした彼女が、命じられた通り着替えが終わったことを室外に向かって告げると、片手に盆を、もう片方には電気ポットをぶら下げたアトランティスがガラリと引戸を開けて姿を現した。
「悪りぃけど乾燥機なんて上等なモンはねえからコタツにいれて乾かすしかねえ」
むっつりと彼はそう言って彼女の向かいに腰かけた。
それからガチャガチャと騒がしく音をたてながらマグカップに何かの粉末をいれ、ポットから熱湯を注ぎ――たちまち甘い香りが周囲に立ちこめ。
なみなみとココアのはいった大きなマグカップがドン、と彼女の目の前におかれた。
「のめ」
「ありがとう」
舌をやけどしそうに熱い飲み物にふうふう息を吐きかけ一口すすると、甘さがじんわり身体にしみ込んで、寒さのせいですっかり気持ちがしぼんでいたことに気がついた。
「おいしい」
「……冷たかったろ」
彼女は自分の耳をうたがった。アトランティスからそんな慰憮の言葉をかけられたのは初めではないだろうか。
そっと顔色をうかがえば真っ赤な瞳にも気遣いの色が見える。なんだか急に恥ずかしくなってあわてて下を向き、たちまちのうちにココアを飲みほした。
アトランティスは常に人混みを避けていて、寒さより人気がないことの方に重きをおいているからだ。だけどそのことについて議論したり価値観を問われたりするのは大嫌いで、それをよく知っている彼女は何も言わない。
彼女が望んでいるのは大好きな人の傍らでひととき過ごすことだし、それを互いに良しとしているというのが大前提なのだ。
雪道をいつもの倍の時間をかけてサクサクと歩き、待ち合わせ場所の池のほとりにたどり着くと、守り主みたいに太く大きい幹の傍らにアトランティスがいた。
さすがの彼もこの陽気ではそれなりに厚着をするようで、身頃が緑色で袖は白い合皮でできたスタジアムジャンパーと、裾をロールアップしたジーンズを身につけている。
ジャンパーの緑は彼の肌色とトーンが合わせてあって、シンプルなコーディネートだけれどもとてもよく似合っていた。
彼女はそれが嬉しくて、ついいつもと違うことをしてみたくなった。
足元の雪を一すくいして軽くかためると、こちらに背を向けているアトランティスに向かって雪玉をなげた。
しかし彼もさすがは超人、ヒュンと近づく白い物体の気配を感じると、振り返って鋭い水の一閃を口から放った。アトランティスのフェイバリットホールド「ウォーターマグナム」だ。
狙いは見事に命中し、雪玉は放物線の頂上でべチャリとほどけ、しぶきが辺りに飛びちった。
ときにリングロープをも切断するそれが、水鉄砲程度の水圧だったのは不幸中の幸いだろう。
しかし、彼女は頭からそのしぶきをかぶってしまった。
「きゃっ!」
「おまえか!?」
アトランティスはしまった、と思った。小走りにかけよって相手を見下ろすと、濡れた髪の毛がペッタリと顔のまわりにはりついていた。
「だ、だいじょうぶ……ごめんなさいね、ちょっとビックリさせようと、して」
くしゅん、と小さなくしゃみで言葉はさえぎられた。
「いや、よければよかったんだ。周囲の確認もしないで横着したオレが悪い」
アトランティスは鋭いカギ爪で柔らかな頬を傷つけないようにそっとへばりついた髪をなで分けた。
こんな寒さのなかで濡れたままでいたら間違いなく彼女は風邪を引いてしまう。ニンゲン、ことに女性は信じられないくらい脆弱なのだ。かと言ってこの場で濡れた衣服を脱げとも言えない。
本当にこいつらは――面倒な生き物だ。
二人はアトランティスの自宅にいた。
あのあと彼は彼女を抱えあげ、その身体が凍えてしまわないうちに、と急いで自分の家まで駆けた。それからこの居間に放りこみ、石油ストーブとコタツのスイッチをいれたあと「ちょっと待ってろ」と言って姿を消した。
幾らもしないうちに今度は(恐らく自分の)ジャージの上下とバスタオルを持ってきて「着替えろ、終わったら呼べ」と言いのこし、ふたたび部屋を出ていった。
乾いた衣服に着替えてホッとした彼女が、命じられた通り着替えが終わったことを室外に向かって告げると、片手に盆を、もう片方には電気ポットをぶら下げたアトランティスがガラリと引戸を開けて姿を現した。
「悪りぃけど乾燥機なんて上等なモンはねえからコタツにいれて乾かすしかねえ」
むっつりと彼はそう言って彼女の向かいに腰かけた。
それからガチャガチャと騒がしく音をたてながらマグカップに何かの粉末をいれ、ポットから熱湯を注ぎ――たちまち甘い香りが周囲に立ちこめ。
なみなみとココアのはいった大きなマグカップがドン、と彼女の目の前におかれた。
「のめ」
「ありがとう」
舌をやけどしそうに熱い飲み物にふうふう息を吐きかけ一口すすると、甘さがじんわり身体にしみ込んで、寒さのせいですっかり気持ちがしぼんでいたことに気がついた。
「おいしい」
「……冷たかったろ」
彼女は自分の耳をうたがった。アトランティスからそんな慰憮の言葉をかけられたのは初めではないだろうか。
そっと顔色をうかがえば真っ赤な瞳にも気遣いの色が見える。なんだか急に恥ずかしくなってあわてて下を向き、たちまちのうちにココアを飲みほした。
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