朝餉(ザ・ニンジャ夢小説)
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陽射しよりも空気の冷たさで目をさますような朝。
彼女はとなりで眠っている恋人――ザ・ニンジャを起こさないよう、そっと寝床をはなれて台所に立つ。湯を沸かし朝食の支度をしながら、今日もまた二人で一日を始められることに喜びを感じている。
寝室で一人になったザ・ニンジャは、おもむろにパチリと目を開けた。実をいえば先ほど彼女が起きたとき、すでに目は覚めていた。シノビたるもの、たとえ眠っているときでも警戒は怠らないのだ。だが、そこで身を起こしてしまうと、自分のせいで目を覚ましてしまったのだと、彼女がすまながるので、あえて寝たフリをする。しばし夜具のぬくもりに包まれたまま、台所の様子に耳をそばだてる。
トントントン、と一定のリズムでなにかを切る音。おそらく今朝のみそ汁は大根あたりか。そして敏い耳をもつニンジャには、音の種類がニつあることが分かる。食材を切っているつもりで狙いがはずれ、ときたま包丁がまな板を叩いてしまうのだろう。そのたどたどしさ、至らないなりに朝餉をこしらえようとするいじらしさに、ニンジャは小さく笑みを浮かべる。
「さて、拙者も起きるとするか」
「おはよう、今朝は冷えるな」
ニンジャがのれんをかき分けて台所に姿をみせ、声をかけると、彼女はパッとふり向いてこぼれるような笑みをうかべた。
「おはようございます、ニンジャさん!」
「ああ」
予想通り、コンロにかけられた小鍋の湯のなかで千六本にされた大根がユラユラたゆたっていた。
「さて、朝餉の支度を手伝おうか」
「はい、今朝はイワシの丸干しとだし巻き卵、それから大根のおみそ汁です。わたしはおみそ汁とイワシの丸干しを、ニンジャさんはだし巻き卵をお願いします」
「またか。そなたは本当にだし巻き卵が好きだな」
「だってニンジャさんが作る卵焼きはとっても美味しいんだもの」
「そう言ってもらえると、こしらえる張り合いがあるな」
ニンジャは長方形をした卵焼き器を取りだすと、コンロにかけた。ガスの火で充分に温めながら、うすく油をひく。その一方で卵を割り、出汁と醤油とちょっぴりの砂糖を加えて卵液をつくる。その頃には卵焼き器もちょうどよく熱せられていて、ニンジャがごく少量の卵液をそこへ流しこむと、シュンと小さく音をたてた。やがて、卵液に熱が通りはじめ、頃合いを見てとったニンジャは箸でフチをすくうと奥から手前へクルクルと巻いていった。そうして焼けた塊を奥へずらし、卵焼き器に再び卵液を流しこむ。それを五度くり返した。
かたわらでは彼女が持ち分の調理をすすめながら、目をかがやかせてニンジャのたくみな手さばきを眺めている。
「卵を巻くときの箸さばきや手首の返しが達人ってカンジ」
ニンジャは苦笑した。
「いつも見ていてよく飽きぬものだ」
かつては手裏剣、クナイはもちろんのこと、マキビシ、鎖鎌、はては発破まで、自在に暗具を使いこなしていたニンジャにとって、調理など造作もないことだった。彼女の手をわずらわせずとも彼一人で食事の支度などいくらでも出来る。
いや、むしろずっと昔は手ずから調理したものしか口にしないことにしていた。
他人が調えた膳には毒が盛られているおそれがあったから。
シノビというなりわい故に。
彼女はとなりで眠っている恋人――ザ・ニンジャを起こさないよう、そっと寝床をはなれて台所に立つ。湯を沸かし朝食の支度をしながら、今日もまた二人で一日を始められることに喜びを感じている。
寝室で一人になったザ・ニンジャは、おもむろにパチリと目を開けた。実をいえば先ほど彼女が起きたとき、すでに目は覚めていた。シノビたるもの、たとえ眠っているときでも警戒は怠らないのだ。だが、そこで身を起こしてしまうと、自分のせいで目を覚ましてしまったのだと、彼女がすまながるので、あえて寝たフリをする。しばし夜具のぬくもりに包まれたまま、台所の様子に耳をそばだてる。
トントントン、と一定のリズムでなにかを切る音。おそらく今朝のみそ汁は大根あたりか。そして敏い耳をもつニンジャには、音の種類がニつあることが分かる。食材を切っているつもりで狙いがはずれ、ときたま包丁がまな板を叩いてしまうのだろう。そのたどたどしさ、至らないなりに朝餉をこしらえようとするいじらしさに、ニンジャは小さく笑みを浮かべる。
「さて、拙者も起きるとするか」
「おはよう、今朝は冷えるな」
ニンジャがのれんをかき分けて台所に姿をみせ、声をかけると、彼女はパッとふり向いてこぼれるような笑みをうかべた。
「おはようございます、ニンジャさん!」
「ああ」
予想通り、コンロにかけられた小鍋の湯のなかで千六本にされた大根がユラユラたゆたっていた。
「さて、朝餉の支度を手伝おうか」
「はい、今朝はイワシの丸干しとだし巻き卵、それから大根のおみそ汁です。わたしはおみそ汁とイワシの丸干しを、ニンジャさんはだし巻き卵をお願いします」
「またか。そなたは本当にだし巻き卵が好きだな」
「だってニンジャさんが作る卵焼きはとっても美味しいんだもの」
「そう言ってもらえると、こしらえる張り合いがあるな」
ニンジャは長方形をした卵焼き器を取りだすと、コンロにかけた。ガスの火で充分に温めながら、うすく油をひく。その一方で卵を割り、出汁と醤油とちょっぴりの砂糖を加えて卵液をつくる。その頃には卵焼き器もちょうどよく熱せられていて、ニンジャがごく少量の卵液をそこへ流しこむと、シュンと小さく音をたてた。やがて、卵液に熱が通りはじめ、頃合いを見てとったニンジャは箸でフチをすくうと奥から手前へクルクルと巻いていった。そうして焼けた塊を奥へずらし、卵焼き器に再び卵液を流しこむ。それを五度くり返した。
かたわらでは彼女が持ち分の調理をすすめながら、目をかがやかせてニンジャのたくみな手さばきを眺めている。
「卵を巻くときの箸さばきや手首の返しが達人ってカンジ」
ニンジャは苦笑した。
「いつも見ていてよく飽きぬものだ」
かつては手裏剣、クナイはもちろんのこと、マキビシ、鎖鎌、はては発破まで、自在に暗具を使いこなしていたニンジャにとって、調理など造作もないことだった。彼女の手をわずらわせずとも彼一人で食事の支度などいくらでも出来る。
いや、むしろずっと昔は手ずから調理したものしか口にしないことにしていた。
他人が調えた膳には毒が盛られているおそれがあったから。
シノビというなりわい故に。
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