ここに分類不可の三題噺を置きます。

三題噺(イヤリング、午後9時のバス停、まだ温かい紅茶)

2025/10/07 21:14
奈美恵に彼氏が出来た。毎日のように会ったり通話をしていたのに、パタっと途絶えて、生活から消えていった。こんなにもあっさり、友情って壊れるものなの?恋と友情は、両立なんてしないの?どちらも愛の一部と思っていた私は、思いっきり格差を見せつけられて、突然生まれた壁の前でへたり込んでいる。奈美恵が勧めてくれたピアス、穴を開けるのが怖くてイヤリングにした。それだけのことすら間違いだったかと思う。イヤリングは、ドレッサーの1番奥のスペースに追いやった。

そんな夜をひと月ほど越えて、私は独り時間の使い方が上手くなった。夜は居酒屋でなく、カフェで閉店まで過ごすのが日課になった。閉店の午後9時と、同じ時刻に出発するバスに乗って、自宅近くまで帰る。今日は中秋の名月。まだ温かい紅茶を飲みながら、まばゆい月を見上げる。奈美恵のことは、なんだか薄れて忘れてしまった。大切な友人だったけれど、彼女の道の邪魔はしない。彼女が好きだったからこそ、このまま離れるのが正解なんだ。
〜〜〜♪
スマホが着信を伝える。驚いて画面を見ると、「奈美恵」の文字。心臓が押し込まれて、苦しい感覚。雲がかかり月が隠れる。深呼吸をした。…………着信は止まる。耳にカフェのBGMが緩やかに溶け込んでくる。顔を上げた。また月が顔を出している。私は紅茶を飲み干して、バス停に向かう。
(明日気が向いたら、返信しよう)
今まで放っておかれたのだもの、私のペースを優先していいはずだよ。今日は穏やかな夜にしたい。バスに揺られながら、月をずっと目で追っていた。

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