ここに分類不可の三題噺を置きます。

三題噺(金木犀、冷めたスープ、手紙を出す日)

2025/10/05 09:12
金木犀の香りを探していたら、秋雨がすべての花を落としたあとでした。いつでも私は、動き出すのが遅くて、世界から取り残されたような気持ちになります。世界は追いかけてくるくせに、手を伸ばしてはくれないのです。
私は私のスピードで、地球を滑っていければいいのにな。取りこぼしたものが多すぎて、やっぱり立ち止まってしまう。取りに戻る勇気も出ませんでした。

ここで、冷めてしまったスープを飲んだ。頭が冴えていく。外では木枯らしが吹いている。けれど、手紙を出すのは今日と決めている。もう、この気持ちから逃げないように。

貴方が手を差し伸べてくれた。だから、私はその手を掴みたい。貴方と手を繋いで、もう離さずに生きていきたい。愛しています、貴方が手を差し伸べてくれたのだと、信じています。手を引っ込めるのなら、この手紙に返信はしないでください。愛しています。どうか、手を取って。どうか。

手紙を書き終えて、封筒に入れて封蝋を落とす。外は小雨が降っている。寒くたって雨であったって、今日手紙は出す。それが覚悟なんだと勝手に思い込んで。手紙を握りしめて、駅前のポストまでゆっくりと歩く。取り残されてるのは、世界の方。だって私の心、もう青空を求めて羽ばたいている。そうか。そうなんだ。手紙を投函する。私は手から解けて手紙が吸い込まれるのを、笑って見送った。

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