ここに分類不可の三題噺を置きます。

三題噺(交差点、冷たい麦茶、忘れられた傘)

2025/10/02 09:23
コンクリートジャングルを整備する、立体交差点。頭上に車が行き交い、目の前でも「下の道」だとか皆が言って、混雑を極めている。風の強い今日は連日より少し肌寒く、凍らせてきた冷たい麦茶を持て余していた。信号待ちの時間は、長く感じられた。
(あ)
強風に飛ばされてきた、忘れられたビニール傘。道路の真ん中に躍り出てしまい、危険だと思った。でも、誰も見ちゃいない。僕はとびだすことも出来やしない。目をつぶった、衝撃映像なんて見たくもない。
(君は優しい人なんだなぁ)
鼓膜の奥で声がして、そっと目を開ければ壊れかけたビニール傘が手元にある。僕は傘と道路をかわるがわる見やる。さっき見た傘のようだ、僕の手にある。なぜ?
(薄情な男に忘れられた、名もなき傘だよ。出来ることなら君、ゴミ捨て場まで俺っちを運んで、この生を終わらせて欲しい。お願いだ)
鼓膜の奥、胸から響くメロディのような。僕は傘を拾う。なぜだか顔に笑みが溢れた。
「僕の気が済むまで、おしゃべりに付き合ってくれる?」
傘は身震いするように、ピシャ!!っと風に煽られ音を出す。
(こりゃ、まいったね。そう言われちまうと、ゴミ捨て場に行くのが惜しくなるじゃないか)

男の子は傘を機嫌良さそうに振りながら街に溶けていく。魅入られたのは誰?

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