ここに分類不可の三題噺を置きます。

三題噺(ひとつだけ傘立てに残ったビニール傘、錆びついた観覧車、口笛を吹く子供)

2025/09/25 17:34
ひとつだけ残った、傘立てのビニール傘(錆びついていて誰も持ち帰らない)を、口笛を吹いた子供が攫っていった。骨も折れかけているその傘を、我が物顔で振り回すものだからいい迷惑だ。口うるさいが愛はあるおばさまが、
「こら!傘を振り回したら危ないでしょ!」
と、叱ってからは、少し落ち着いて傘を引きずるように歩いた。引きずっていると、ポコ、と傘の先がなにかの穴に引っかかる。子供は敏感に感じ取って振り返り、穴を覗き込む。穴の中にはネズミが住んでいた。
「観覧車を作る材料がないんだ」
「観覧車を?」
「ネズミのためのネズミによるネズミの観覧車を、丘の上に作りたいんだ!」
ネズミは胸を張って堂々と宣言する。けれど身体が小さいから、子供にしか聞こえないのだ。でも子供の耳には届いているから、彼は拍手して口笛を吹いた。
「この傘なら、あげていいよ」
「なんと!心優しい人間だ!貴方の家からチーズを盗むのはやめにします」
ネズミが巣穴から出ると、どこに隠れていたのかぞろぞろ集まってきて、錆びた傘をどこかへ持っていってしまった。ネズミを見かけた人達の悲鳴がこだまのように広がり、子供は大笑いをした!

人知れない海が見える丘、ネズミしか乗れない錆びついた観覧車が出来上がった!

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