ここに分類不可の三題噺を置きます。

三題噺(踏切、アイスクリーム、約束)

2025/09/24 17:46
※いつぞやのビー玉男を再出演。

もう全てが嫌だった。全ての出来事が俺を苦しめた。親、兄弟、友達、恋人。どれも不足してるか過密で引き剥がしたいかで。仕事も好きじゃなかった、休日はやることもなかった。もういいよ、こんな人生。踏切の警報音が天国へのファンファーレに聞こえる。俺は目掛けて走り込んだ。どん、と人にぶつかったが気にかけなどしない。
「おい、待てよ」
ガッ、と力強く肩を掴まれる。構わず走り抜けようとしたが、びくともしない。仕方なく力を抜き、振り返る。電車は鈍い音を立てて走り去っていく。
「……なんの用だよ」
飛び込もうとしたことを咎められるのか、やわな説教なぞ、聞きたくもない。俺の肩を掴んできた男は、俺と年端も変わらないように見える。彼はアイスクリームのコーンを咥えながら、不機嫌そうに眉を寄せて俺の肩を指差す。自分の手で確認すると、べったりとアイスクリームがついた。
「弁償してよ」
「弁償って……お前が突っ立ってるのが悪いだろ?むしろ俺の服弁償してくれよ」
「着る明日もないのに?」
カリッと、アイスクリーム男が残ったコーンを食べ進める。瞳を覗くと、ビー玉のようでゾッとした。逃げようにも、踏切は締まっている。飛び込むのは……あ、れ。
「アイスクリーム、食べて頭冷やしな?」
男は急に笑顔で俺の肩を叩き、服の裾を引いてアイスクリーム屋まで連れてくる。冷たさと甘さが、心を癒していく。不意に、もう亡くなった祖母がよくアイスクリームを買ってくれたのを思い出し、目頭が熱くなった。
「生きるのが生き物のルール、約束だかんね」
隣の男は未だに意味の分からないことを言っているが。ここで会ったが100年目、の予感?勘弁してくれよ……。

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