ここに分類不可の三題噺を置きます。

三題噺(硝子、午前4時、時計塔)

2025/09/18 10:22
ゴーン、ゴーン……午前4時の鐘が鳴る。午前4時?なんだってこんな夜更けを通り越して暁待ちの時刻に。時計塔を見上げる。確かに4時を指している。目を擦ると、何かが沁みる。涙ぐみながら目を開けると、濃いピンクの霧が辺りを包んでいた。
(おいてけ)
急に頭がズキズキと痛み、胸も同じような痛みを覚える。手先の感覚が痺れる。ここを離れないと。じゃないと死にそうだ。方向感覚もめちゃくちゃだが、霧から離れようと足を進める。
(おいてけ!!)
さらに強く響く声。キーンと耳鳴りがした。俺は戦利品である硝子細工のランプシェードを、思わず落とした。硝子で出来ているはずなのに、割れて粉々にならない。拾おうとしたが、嫌な予感がしてそのまま置いていった。霧を吸ってはダメだな、とハンカチで口を覆い、とにかく離れた。やがて霧は晴れて、水平線から太陽が昇った。俺はタバコを一本吸う。煙が街を日常に戻していくような感覚があった。
後日、盗みに入った美術館を見に行った。あの日盗んで、街のどこかに置き去りにした硝子のランプシェード。何事もなかったように、堂々と鎮座して展示されていた。
(こりゃ、たまげたね)
オカルトになんて興味はねぇ。でも実際目の当たりにするとな、背筋のひとつも凍るってもんだな。さて。もう一度盗むか、怖気付いて逃げ出すか。人生はふたつにひとつだ。ランプシェードは、一瞬パッと青い明かりがついてふっと消える。おいおい、今の、電源はなんだよ?周囲の客は気づかない。怪盗のプライドに響いた、面白くなってきたじゃねぇか。いいだろう、今夜もう一度盗みにきてやるよ。根比べと行こうぜ、呪われた竜胆のランプシェードよ。

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