ここに分類不可の三題噺を置きます。

三題噺(廃駅、指輪、不完全な地図)

2025/09/10 17:27
はい。盛大にフラれたから、婚約指輪を廃駅に投げ込みました。清々した。したからといって、胸に空いた穴は塞がんないけど。今は、我慢しないで泣いとくか。
「あのう」
廃駅の、ホーム下から声がする。恐る恐る覗き込んでしまった。たぬきが鼻先で指輪を拾っている。可愛らしい。俺は動物が好きだ、特にきつねとたぬきなんかは特に。でも野生動物に触っちゃダメなので、じーっと目を合わせていた。
「あのう、これ、大事なものだと思うんですけど」
なんだか丸っこい女の声がする。こいつが喋ったのか?目を離せなくなる。
「それとも、私にくれたんですか?」
「おうおう、いいよ。持って帰っちまいな」
「嬉しいです。また会いに来ますね」
たぬきは指輪を咥えなおし、とことこ夕日に向かって歩いて行った。胸の充足感が、非日常を覆い隠して、真っ赤な夕暮れだった。
後日、当時の住まいに泥で汚れている紙切れが届き、どうやら結婚式場を指しているようだが、不完全な地図のため行かなかった。完璧な地図だったとしても、怖気づいて行かなかっただろうが。俺は今でも独身を貫いている。

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