ここに分類不可の三題噺を置きます。

(古い望遠鏡 、金魚すくいの紙の網 、星座を片目でしか見られなくなった友人 )一次創作デモ

2025/09/03 09:07
夏祭りの現場に駆けつけた時には、もう一帯全てが飲み込まれたあとだった。
「どこに溜まり込んでんだか……」
(黒いシミ)の吹き溜まりを探す。夏祭りは足場がないほど人が倒れていて、事件の大きさを物語る。僕の先を行く晋太郎は、ポケットの中で宝石をじゃらじゃらと鳴らしていた。ふと、屋台に置き忘れたように古い望遠鏡がある。そこから吹き溜まるような(黒いシミ)の気配を感じる。前方から笑い声が聞こえる。子供が2人、金魚すくいではしゃいでいる。他の人間が意識のない中で。間違いない、彼らが元凶。晋太郎は(能力)を展開すると、いつも通りティラノサウルスの幻影で全て飲み込もうとした。しかし、あろうことか金魚すくいのポイに阻まれる。
「あァ!?クソ生意気だな坊ちゃんたちよぉ」
晋太郎が出力をあげる。晋太郎は誰に対しても容赦がない。けれど、俺はそんな晋太郎が好きだけれども、俺は俺のやり方を通したかった。
「ねぇ、なんで(シミ)を呼び起こしたの!?」
「えっ」
「君たちにはどんな願いがあったの!?」
叫ぶように問い掛ければ、幼い子供たちは泣いた。興が冷めたとばかりに晋太郎がため息を吐く。
「優が、片目しか見えなくなって。望遠鏡なら片目でも星座が見えるかもと思ったんだけど。高くて手に入らない」
「うん」
「片目で見える方法ばかり探したけど、そうじゃないんだ。俺は優に両目を返してあげたいんだ」
優と呼ばれた少年は答えない。この話にはもう1段階奥行きがある。それを探ろうとした瞬間、古い望遠鏡がガタガタと震え出す。
「だーから。物語の紐解きなんて後回しでいいんだって」
古い望遠鏡から(黒いシミ)が溢れ出て、辺りを飲み込んでいく。晋太郎はポケットの中の宝石を爆竹のように爆ぜて、ティラノサウルスで飲み込んでいく。晋太郎が背中越しに、顎で子供達を指し示した。俺は慌てて子供を保護する。
「治してあげたかっただけなんだっ……」
少年は泣く。抱きしめて背中を叩いた。強い願いが(黒いシミ)を呼ぶ。
「君たちは悪くないよ」
金魚すくいを離れ、戦闘から遠ざかる。俺は戦えないけれど、(黒いシミ)はどうにかしたい。人の夢を塗り潰すようなそれが、人の絶望を食いものにするそれが、俺は許せないんだ。

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