ここに分類不可の三題噺を置きます。

三題噺(硝子、潮騒、鍵)

2025/08/28 08:28
広くて狭い館の中、粉々に砕けた硝子を片付けるのも億劫で、裸足で踏み潰す。血塗れの足で、ようやく疲れてソファーに腰掛けた。訪ねてくる者など、いない。次の迎えを待つなど、惨めで苦しいだけだ。天井を見上げた。潮騒が騒がしく、嵐の到来を知らせている。なんとなく、この館が建っている崖ごと削れ落ちる予感がした。雨音が次第に強くなって、心が凍えていく。血でぬめる床を、なんとか踏ん張って這って。逃げようと玄関まで来て、鍵を無くしたことに気づいて失笑した。戸締りは許されないのだ。情けないこの心の檻、全てを海底に沈めなくてはならない。俺はそっとドアノブから手を離し、部屋に戻った。手放せないものばかりの館の、部屋の隅々までそれを確認して。血塗れの足が床に絵の具のように広がっていく。最初のソファーに戻ってきた。ひとつだけ深呼吸をすると、強烈な眠気に襲われた。潮騒はまだ遠く、風だけがごうごうと窓を叩いていた。

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