ここに分類不可の三題噺を置きます。

三題噺(夢の抜け殻、整列、ハンカチ)

2025/08/03 19:09
「夢の抜け殻の回収場所も、最近はてんで減ってね」
母親が書類のサインとか、抜け殻の処分法を熱心に聞いてくれている。大事な母だ。大事な母を喜ばすために始めたのに
、抜け殻になった今、俺はなにがしたかったのか分からなくなった。
「大丈夫よ、なにも心配いらないわ。誰だってそういうことはあるからね」
誰にでもあることなのか、これ。みんな馬鹿だなぁ。頑張らなくちゃならないライン、なんにだってあるだろう。出来ずにずるりと抜け殻から抜け出てさ。肝心のやりたかったことは、最初望みごと忘れてしまうなんて。
回収日は木曜日で、母さんは直通のバスにだけ乗せてくれた。母は強い人だから、笑ってくれた。母がいれば、なんとか俺もやり直せるかもしれない。そんな甘ったれたことを思いながら下車して、そっから長い坂を整列してじわじわと進んだ。前方でハンカチを落とした人がおり、誰にも気づかれずに踏みつけられていた。哀れに思って拾った。持ち主に届くとは思えないが、先導員に渡して、また俺も坂を登る。坂を登りながら、前のやつの抜け殻の形を観察したり、落とし物をよく見つけたり。なぁこれが出来るなら出来たんじゃねえのか。抜け殻は答えないし、元の形も教えてくれない。ただただ、不燃ごみで燃えないから、この坂を登っている。抜け殻が残していった虚無との戦いは、始まっていた。

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