ここに分類不可の三題噺を置きます。

三題噺(夕立、古い切符、レモン色の傘)

2026/04/26 13:41
レモン色の傘の骨は、僕のグレーの傘の骨と同じだろうか。骨が同じなら、同じ場所に埋まってもいいだろうと思うのに。あの日、切符は2枚買った。君は改札で切符を車掌さんに切って貰い、すり抜けていく。僕が、改札を通らないのを見透かしていたように、君は振り返って笑った。レモン色の傘は、僕に預けたまま。
「夕立に会うよ」
「そうね、その頃には帰るわ」
そのあと幾度夕立に降られても、君が帰ってくることはなかった。便りは、旅行先のポストカードに、切符を貼り付けたものだけ。切符を綺麗に剥がし、ポストカードと切符をコレクションファイルに綴じる。広い世界で生きている君が残した、レモン色の傘。この静かな田園には似合わないなと思って、押し入れにしまったんだ。それでも見たくない頃に、君はポストカードを寄越す。仕方なく、レモン色の傘の埃を払う。夕立が哀愁を洗い流して、秋には稲穂が実るだろう。ここは豊かな場所だ。君を引き止めることは、叶わなかったけれど。傘を開いた。あの日の2人が、内側に投影されて幻と消える。あぁ、声だけはもう一度聞きたいな。雨音に紛れてないか探して。それにも疲れたから、目をつぶった。風が強くなった。

コメント

[ ログインして送信 ]

名前
コメント内容
削除用パスワード ※空欄可