ここに分類不可の三題噺を置きます。
三題噺(銀紙のチョコ、閉架書庫、線路の草いきれ)
2025/12/03 18:51一枚の板チョコを手渡されて、「これを食べ切る間だけ閉架書庫を見せてあげよう」
そう言って、番人は消えてしまった。銀紙の中、整列したブロックが波を打って、節目で割れるようになっている。それを指で確かめる。溶けてしまうと始末に負えないので、ポケットにしまって。ポケットに収まるにはギリギリのサイズで、角は飛び出している。さて、どうしようか。私はチョコレートは苦手なんだ。
閉架書庫の中は埃っぽく、窓はあるけどその光が埃を照らし出して、古いフィルムを見るようだった。納まっている本はどれも分厚くて、あまり興味が持てなかった。本棚の合間を、動物園にでも来たみたいに、ぼんやりと漂って背表紙を眺める。足を止める。頭一個分高い位置に、なぜか惹かれる本がある。背表紙はくたびれたオレンジ色。その影がどうしても気になった。手を伸ばせば、ギリギリ届く。本の角に指を引っ掛けて、地べたに座って広げた。急に突風に包まれる。反射的に目を閉じた。
目を開けば、線路の脇の草いきれの中にいる。青臭い香りと、小鳥の鳴き騒ぐ声。列車がのんびりと通り過ぎる。坂の下りの方を見れば、広い海があった。潮の香りを風が運んで。線路沿いを歩いてみようか?駅に辿り着いたら、閉架書庫から抜け出せているのか?すこし背筋が寒くなった。誰もいない今のうちに、空に問うことにしよう。
「本当にチョコレートを食べ切らなきゃ、書庫から出られないのか?」
番人の声が耳に届いた。
「強く惹かれて開いた本は、貴方の幸福の形を再現している。旅人よ、チョコレートのことは忘れなさい。そして、この世界を書き記せば本の中身は豊かになる。いってらっしゃい」
声が染みて、脳に入り込み。深呼吸をしたら、恐怖は消えていた。銀紙の中のチョコレートを、割らずにかじる。あれ、チョコレートって好きじゃなかったんだっけ。まぁ、いいや。草いきれの中に寝転び、お日様をめいっぱい浴びて。満足したら、明るいうちに駅まで辿り着こう。チョコレートがあるから、1日くらいは保つさ。
そう言って、番人は消えてしまった。銀紙の中、整列したブロックが波を打って、節目で割れるようになっている。それを指で確かめる。溶けてしまうと始末に負えないので、ポケットにしまって。ポケットに収まるにはギリギリのサイズで、角は飛び出している。さて、どうしようか。私はチョコレートは苦手なんだ。
閉架書庫の中は埃っぽく、窓はあるけどその光が埃を照らし出して、古いフィルムを見るようだった。納まっている本はどれも分厚くて、あまり興味が持てなかった。本棚の合間を、動物園にでも来たみたいに、ぼんやりと漂って背表紙を眺める。足を止める。頭一個分高い位置に、なぜか惹かれる本がある。背表紙はくたびれたオレンジ色。その影がどうしても気になった。手を伸ばせば、ギリギリ届く。本の角に指を引っ掛けて、地べたに座って広げた。急に突風に包まれる。反射的に目を閉じた。
目を開けば、線路の脇の草いきれの中にいる。青臭い香りと、小鳥の鳴き騒ぐ声。列車がのんびりと通り過ぎる。坂の下りの方を見れば、広い海があった。潮の香りを風が運んで。線路沿いを歩いてみようか?駅に辿り着いたら、閉架書庫から抜け出せているのか?すこし背筋が寒くなった。誰もいない今のうちに、空に問うことにしよう。
「本当にチョコレートを食べ切らなきゃ、書庫から出られないのか?」
番人の声が耳に届いた。
「強く惹かれて開いた本は、貴方の幸福の形を再現している。旅人よ、チョコレートのことは忘れなさい。そして、この世界を書き記せば本の中身は豊かになる。いってらっしゃい」
声が染みて、脳に入り込み。深呼吸をしたら、恐怖は消えていた。銀紙の中のチョコレートを、割らずにかじる。あれ、チョコレートって好きじゃなかったんだっけ。まぁ、いいや。草いきれの中に寝転び、お日様をめいっぱい浴びて。満足したら、明るいうちに駅まで辿り着こう。チョコレートがあるから、1日くらいは保つさ。
