ここに分類不可の三題噺を置きます。

三題噺(砂時計、偽の星図、右手の刻印)

2025/11/24 17:02
砂時計は、砂が落ちた瞬間を見届けないと、結局のところ時間は分からない。僕はいつも見逃す。つまりは、人よりも鈍臭くて支度が遅いのだ。思考の回路も、きっと遅いのだと思う。
学校で授業を受けた。大好きな星空についての授業だった。僕は天体観測が好きだ。目を爛々輝かせて僕は教科書の星図を見る。違和感があった。あったのだけど言葉に出来ず、授業は進んでいく。
「冬に見える代表的な星座、さそり座のアンタレスは」
絶対に違う。思わず立ち上がる。けれど、何も言えない。手が震えて、怪訝な顔をする先生と生徒から逃げ出して、中庭に来た。僕の教科書の星図は、正しいのだろうか。いや、正しいはずなんだ。毎晩答え合わせを、夜空としてきたのだから。星との距離だって、一光年も間違えないさ。僕が苦手なのは、時間を守ることだけ。砂時計の30分が、45分になってしまう。それだけのこと。星空は全部受け止めてくれるのに、学校では偽の星図で語られるなんて。涙が出るほど悔しかった。右手の甲で涙を拭う。何故か焼けるような熱があった。見れば、赤い紋章の刻印が、右手に現れる。しゃっくりと共に涙が止まる。
ーーーーこの世界の理を、もう一度書き直す者よ
キーンと激しい耳鳴り。耳に声が響く、低く、逆らえないような声が。頭が痛い、逃げ出したい。けれど、恐怖する度に刻印が熱く焼ける。僕は、なにか大変なことをしたのだろうか。ただ、星を眺めていただけだ。
ーーーー星を眺め続けろ、それでいい。偽の星図を書き換えろ、それでいい。ここに砂時計がある。この砂が落ち切るまでに書き換えろ
頭の中に砂時計が置かれる。砂は落ち切っている。僕は。砂時計をひっくり返した。豪快な笑い声が聞こえ、遠ざかっていく。砂時計は進みはじめてしまった。さぁ、星図の書き直しを始めよう。

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