ここに分類不可の三題噺を置きます。
三題噺(ししおどし、図書カード、未送信のメッセージ)ビー玉男
2025/11/17 18:12ししおどしがなにかを責めるように、かん、かん、と一定のリズムで響く。祖父からの呼び出しで、久々に重苦しい実家に戻って来た男は、自分の部屋にもしかしたら図書カードを置いてきたかもしれないというので気が気でなかった。学生時代、本をよく読んだ。もう亡くなったが、家族で唯一心を許していた伯母が、毎年図書カードをくれた。残りがあったのでは。残高がなくとも、カードが残っていればいいな、と男は思う。自分の部屋を通り過ぎる、長すぎる廊下の突き当たりに、祖父の書斎がある。壁には父親が趣味で集めた日本画が、所狭しと並んでいる。どれも男は好きではなかった。もっとビビッドで、パキッとした、キラキラのやつが好きだった。
「入りなさい」
名前すら呼ばないんだね、と男は思う。呼ばれたくはないけどね。祖父の声は、相手の全てを飲み込み、支配しようという声であった。頭など下げず、書斎に入り。椅子には座らなかった。カン、と祖父が杖を叩きつけて脅す。知らんぷりをした。ちょっとだけ怖かったから、ポケットの中のビー玉に触れる。男は、まっすぐに祖父を見た。見覚えのない顔、多分覚えることを拒んでいるかもしれない。
「もう自由な暮らしには懲りたろう。家に戻って仕事をしなさい」
「自由に懲りるなんて、相当未熟な人間だね。僕は違うよ」
祖父は片眉をあげ、への字に口を閉じ、目をムッと閉じた。その間に、僕は部屋を出ようとする。
「行かせるか」
祖父の声で、シークレットサービスかなんだかの、男たちが僕に群がる。そのまま、僕をどこかへ誘導する。自殺未遂をした友人を思い返す。最後の返信は未送信だ。
「入りなさい」
名前すら呼ばないんだね、と男は思う。呼ばれたくはないけどね。祖父の声は、相手の全てを飲み込み、支配しようという声であった。頭など下げず、書斎に入り。椅子には座らなかった。カン、と祖父が杖を叩きつけて脅す。知らんぷりをした。ちょっとだけ怖かったから、ポケットの中のビー玉に触れる。男は、まっすぐに祖父を見た。見覚えのない顔、多分覚えることを拒んでいるかもしれない。
「もう自由な暮らしには懲りたろう。家に戻って仕事をしなさい」
「自由に懲りるなんて、相当未熟な人間だね。僕は違うよ」
祖父は片眉をあげ、への字に口を閉じ、目をムッと閉じた。その間に、僕は部屋を出ようとする。
「行かせるか」
祖父の声で、シークレットサービスかなんだかの、男たちが僕に群がる。そのまま、僕をどこかへ誘導する。自殺未遂をした友人を思い返す。最後の返信は未送信だ。
