ここに分類不可の三題噺を置きます。
三題噺(密室、通い詰め、お弁当)
2025/11/14 11:50「けっして扉を開けてはならない」
誰かがそう言った。誰が言ったかは定かではなく、諸説あるが、とにかく扉を開けてはならないのだ。だから、誰も近寄らない。近寄る奴は白い目で見られる。最悪、どこかへ連れ去られてしまう。そんな世界で、僕は思った。
「扉の中に、誰か閉じ込められてるのでは?」
直感があり、根拠があった。「けっして扉を開けてはならない」と言った人物は、皆不可解な死を遂げていた。それならば、扉を開けて欲しいと願う誰かが、扉の中に存在するのではないか。僕は連れ去られないよう白昼堂々と、扉の前に立った。
「ごめんください」
返事はない。ドアをノックする。
「ここにきてはダメなのよ」
扉の向こうから声がして、ノブを押した。開かない。
「ドアを開けてもらえませんか?」
「……この扉は開けてはならないのよ」
中にいる人から、直接約束を聞けた。その日はそれで満足して帰った。
通い詰めるようになって、3か月ほど。扉についている大きめの覗き窓から、お弁当を差し入れする仲になった。中の人は名乗らない。僕はおそらく、と思いつつ、危険な逢瀬をやめなかった。
「この扉、開けちゃダメなのよ?」
笑い声の混ざる、挑発的な可愛い声。それには無視をする。開けて欲しいのだろう。でも、やっぱり開けてはダメなのだ。可哀想にね。
「ねぇ、お外でなにが起きてるか教えてちょうだい?」
僕はお弁当と、新聞を届けるようになった。3か月、6か月、1年と月日が流れていく。僕が1週間ほど通わなかったら、中でしくしくと泣いていた。
「ごめんね、君のことにかかりっきりってわけにはいかないんだ」
「えぇ、えぇ。存じています。かかりきりになった男から死にました。この扉は忘れ去られた方が平和なのです」
僕は久々のお弁当を窓のへりに差し出した。向こうで驚いた気配がする。彼女はお弁当を受け取った。凄い勢いで食べてるみたいだ。ぐすっと鼻を啜る音もする。
「まぁ、僕は君が忘れない程度に、程々に。会いにくるよ」
「うん、ありがとう……!!」
さて、この扉。開ける権利は僕にしかないようだ。どうする?どうするんだ人類よ。僕はにやりと口角をあげた。
誰かがそう言った。誰が言ったかは定かではなく、諸説あるが、とにかく扉を開けてはならないのだ。だから、誰も近寄らない。近寄る奴は白い目で見られる。最悪、どこかへ連れ去られてしまう。そんな世界で、僕は思った。
「扉の中に、誰か閉じ込められてるのでは?」
直感があり、根拠があった。「けっして扉を開けてはならない」と言った人物は、皆不可解な死を遂げていた。それならば、扉を開けて欲しいと願う誰かが、扉の中に存在するのではないか。僕は連れ去られないよう白昼堂々と、扉の前に立った。
「ごめんください」
返事はない。ドアをノックする。
「ここにきてはダメなのよ」
扉の向こうから声がして、ノブを押した。開かない。
「ドアを開けてもらえませんか?」
「……この扉は開けてはならないのよ」
中にいる人から、直接約束を聞けた。その日はそれで満足して帰った。
通い詰めるようになって、3か月ほど。扉についている大きめの覗き窓から、お弁当を差し入れする仲になった。中の人は名乗らない。僕はおそらく、と思いつつ、危険な逢瀬をやめなかった。
「この扉、開けちゃダメなのよ?」
笑い声の混ざる、挑発的な可愛い声。それには無視をする。開けて欲しいのだろう。でも、やっぱり開けてはダメなのだ。可哀想にね。
「ねぇ、お外でなにが起きてるか教えてちょうだい?」
僕はお弁当と、新聞を届けるようになった。3か月、6か月、1年と月日が流れていく。僕が1週間ほど通わなかったら、中でしくしくと泣いていた。
「ごめんね、君のことにかかりっきりってわけにはいかないんだ」
「えぇ、えぇ。存じています。かかりきりになった男から死にました。この扉は忘れ去られた方が平和なのです」
僕は久々のお弁当を窓のへりに差し出した。向こうで驚いた気配がする。彼女はお弁当を受け取った。凄い勢いで食べてるみたいだ。ぐすっと鼻を啜る音もする。
「まぁ、僕は君が忘れない程度に、程々に。会いにくるよ」
「うん、ありがとう……!!」
さて、この扉。開ける権利は僕にしかないようだ。どうする?どうするんだ人類よ。僕はにやりと口角をあげた。
