ここに分類不可の三題噺を置きます。
三題噺(くじら雲、銀のスプーン、ねむり)
2025/11/01 20:33くじらのお腹のように、白い筋が空に引かれている。巻雲は大気が不安定な証だ。早めに頓服薬を飲む。今から帰れば、雨が降る前に家に帰れるのに、私はそうはしなかった。巻雲が膨れて、くじらが顔を出す。水をたっぷりと含んだ、大きな口を広げる。もう、溢れるように雨は降るだろう。膝の上に乗った、2組のティーセット。無駄になった、何故なら先ほど。知らない女だった。知らない女の隣で知らない顔をする彼。問い詰める気にもなれなかった。ティーセットを箱から出し、放り投げた。と同時に、くじらは水を吐き出して。そこらじゅう水浸しだ。銀のスプーンを放り投げると、跳ね返って返ってきた。銀だから傷もない。私は銀のスプーンをひとつだけ、持ち帰ることにした。この銀のスプーンではちみつを掬って、紅茶に混ぜて眠ろう。急にねむい。雨で身体が冷えている。ねむろう。ねむり。銀のスプーンを握れば、自分の体温が移って、温かかった。
