ここに分類不可の三題噺を置きます。
三題噺(まどろみ、手紙、青)
2025/10/31 22:09窓からの風でカーテンがひるがえる。姉さんはレースを摘むようにしてカーテンを留めた。夏の終わり、少しだけ湿った風が部屋に広がる。俺は姉さんがテーブルで書き物をしているのを確認して、不貞腐れるように窓辺に寝転んだ。まどろみが運ぶのは、2年前まで飼っていたぶち猫の足音、昔はよく呼ばれた姉の声、なかなか言い出せなかった外に出かけたい、引っ込み思案だった俺は、この家の小さなテラスが好きで、ひとりボールで遊んでいた。そんな俺を見かねて、素足にサンダルを通してテラスに降りてきてくれた姉さん。思い出は夏の青に詰まっている。高く高く、入道雲の登る。
「出かけてくるわね」
姉さんの声で瞬きを数度。雨が降るよ、傘持ってったら。口が乾いて、音にはならなかった。雨が降るかもしれない夏の夕暮れに、なにをそんな急いでお手紙なんか出しに行くの。手紙しか返してくれないんでしょう、そんな男のどこがいいの。なんて、お手紙の宛名しか知らない男を非難する。夏が終わる。くすぶる焚き木に身を寄せる季節がやってくる。姉が身を寄せるのは、もう俺ではないのだろう。
「出かけてくるわね」
姉さんの声で瞬きを数度。雨が降るよ、傘持ってったら。口が乾いて、音にはならなかった。雨が降るかもしれない夏の夕暮れに、なにをそんな急いでお手紙なんか出しに行くの。手紙しか返してくれないんでしょう、そんな男のどこがいいの。なんて、お手紙の宛名しか知らない男を非難する。夏が終わる。くすぶる焚き木に身を寄せる季節がやってくる。姉が身を寄せるのは、もう俺ではないのだろう。
