ここに分類不可の三題噺を置きます。
三題噺(止まない雨、標識、灰色の花束)
2025/10/23 15:18止まない雨の中、標識が山奥のダムの方角を示している。冷たく葉に伝う水滴が、掻き分けて進む僕を揶揄うよう。体温はどんどん下がっていく。このまま眠れたら、心臓が止まったら。それも悪くないと笑う。でもまだ。自分の辛さの水嵩を知らない。きっとダムは水で満ちて、優雅に鯨が踊っているはずで。そんな綺麗な、僕の痛みで満ちたダムを、決壊させてやる。傷でも綺麗であればいいなんて、そんな世界は間違ってるだろ。そうだろ……雨は止むわけない、だってこんなにも僕は乾いている。顔を洗うように、額から髪をかきあげて。雨と呼吸をする。あと少しだ。森を抜けて、崖の下のダムを見つめる。ほんのちょっとも、水なんて溜まっていない。僕は混乱して頭を掻きむしる。雨はすっかり晴れて、ダムに虹をかけていた。誰かがダムに花束を投げ入れた。灰色の花束は、誰に向けられたものなのか。足元がぐらつき、ダムに真っ逆さま、落ちる。あぁ、水が溜まっていたなら、助かっただろうに。目を瞑った。涙の泉は、僕を包み込んだ。耳に泡の弾ける音。立ち上がれば、腰丈ほどに水を溜めた場所があった。灰色の花束が、目についた。それを拾って、元の場所に戻る階段を探す。そんなものあるだろうか、探すしかない。痛みの数を数えるのは、やめにしよう。なんにもならない。そう気付けたら、きっと雨あがりも近い。止まない雨は、晴れを願わなければ終わりはない。顔を上げれば、「お帰りはこちら。おばかさんへ」の標識。笑い飛ばせたら、次のステージに間に合わせなきゃ。次の舞台はどこだ?
