ここに分類不可の三題噺を置きます。
三題噺(ガラスの木漏れ日、飛び立つ雀、椅子は一脚だけ)
2025/10/19 09:26すべてレプリカで出来たガラスの園。飛び立つ雀はゼンマイ仕掛け、鴉はまだ制作途中。青磁で仕上げた床を、そろり裸足で歩く。水と太陽光だけが本物で、見事な噴水が部屋の中央に鎮座している。噴水の水音が、時間を忘れさせた。ガラスの木の下に、木漏れ日が降り注ぐ。遮熱仕様のガラスを通り抜けるから、温度はない。室温はエアコンで調整してある。暗くなれば、レプリカの満月が毎夜浮かぶ。これだけは、夜にここへいるのに不便だったので、作った。楽園を設計した、美しい庭。僕だけの、庭。椅子は木の下に一脚しかない。座るのは1人だけ、この空間の神様になるんだ。そう思っていた。
「なんで僕に、本物の光を見せたの?」
吐息のような呟き、聞いているのはゼンマイ仕掛けの雀だけ。現実を生きるのが辛かった、だから自分を閉じ込める殻を作るつもりだった。その殻の中を、一緒に歩いてほしい人が出来た。その人のためにだけ、一脚作られた椅子。僕にとっては、ティアラを作ったつもりだった。その人は、僕の元を去った。「貴方の神にはならない」と、柔らかく微笑み、振り向きもせずにどこかへ消えた。崖から叩き落とされるショックで、この殻の中は随分と充実した。楽園と呼べるほどに。
一脚しかない椅子に、腰をかける。木材を組んで出来ていて、クッションはない。折り畳んで仕舞える。長く座っていると疲れてしまう。背を寄せると、木の角が引っかかって、とても神の座る椅子ではない。これでいい。これでいいんだ。木漏れ日の角度が落ちていく。身体を痛めることを承知で、この椅子で微睡む。水音と、光。雀がレコードを流すように鳴いて。風を受けて鳴るのは鈴。貴方だけいない楽園。虚しくなって、ガラスの木の葉を手折った。ガラスの細かい粒が落ちて、指先は赤く染まっていく。ガラスの葉は紅葉したよう。血が落ちる、青磁の床に弾かれて、夢はどこかへ流れていく。僕は。生きたかっただけなんだ。
「なんで僕に、本物の光を見せたの?」
吐息のような呟き、聞いているのはゼンマイ仕掛けの雀だけ。現実を生きるのが辛かった、だから自分を閉じ込める殻を作るつもりだった。その殻の中を、一緒に歩いてほしい人が出来た。その人のためにだけ、一脚作られた椅子。僕にとっては、ティアラを作ったつもりだった。その人は、僕の元を去った。「貴方の神にはならない」と、柔らかく微笑み、振り向きもせずにどこかへ消えた。崖から叩き落とされるショックで、この殻の中は随分と充実した。楽園と呼べるほどに。
一脚しかない椅子に、腰をかける。木材を組んで出来ていて、クッションはない。折り畳んで仕舞える。長く座っていると疲れてしまう。背を寄せると、木の角が引っかかって、とても神の座る椅子ではない。これでいい。これでいいんだ。木漏れ日の角度が落ちていく。身体を痛めることを承知で、この椅子で微睡む。水音と、光。雀がレコードを流すように鳴いて。風を受けて鳴るのは鈴。貴方だけいない楽園。虚しくなって、ガラスの木の葉を手折った。ガラスの細かい粒が落ちて、指先は赤く染まっていく。ガラスの葉は紅葉したよう。血が落ちる、青磁の床に弾かれて、夢はどこかへ流れていく。僕は。生きたかっただけなんだ。
