ここに分類不可の三題噺を置きます。
三題噺(赤い糸電話、落としたかが、約束の匂い)
2025/10/19 09:19赤い糸電話とは言っても、赤いのは受話器なのです。それでも、みんな私の糸電話を羨ましがりました。あんまりにうるさいので、糸は切ってしまいました。赤いコップになった受話器に、私の涙が溜まっていきます。そのうち、受話器は透き通るガラスのようになって、私の涙は受話器の中で海になりました。塩辛さまで再現されています。
夢を見ます、受話器の海の中でダイビングをする夢。受話器の中には、魚もヒトデもいないのです。浅瀬の寂しい海。頭上から光が差しているおかげで、海底には私の影が落ちます。私は私の影がゆらゆら動くのを、ダンスするように楽しみます。あはは。声も水に溶けていく。けれど、思わず声を上げたところで、肺に水が攻め込んで、目覚めてしまうのです。そうすると、糸電話で誰かと繋がりたくなるのが常でした。自分で切ってしまったのに。
秋になれば金木犀の香り、けれど雨が降れば途端に散ります。雨上がりの庭、私は冷ややかな空気を吸いに外に出ました。太陽もなんだかぼやけている。
「探したよ」
庭の外、声が届く距離に貴方がいる。誰だったか、思い出せない。糸電話の糸を切った時、最後に話をしてくれた人なのか、受話器の海を泳ぐ時に、日差しを注いでいた人なのか。どちらでもいい。きっとどちらもおそらくは。
「約束、守っておくれね」
貴方の声が耳に馴染んで、約束の匂いを運ぶ。金木犀の残り香が立ち込める、小さな庭。彼を招いて庭を横切って、室内に戻る。太陽が雲から顔を出して、辺りは明るくなった。ジャムを乗せたクッキーでも食べよう。もう、寂しいなんて言わないよ。
夢を見ます、受話器の海の中でダイビングをする夢。受話器の中には、魚もヒトデもいないのです。浅瀬の寂しい海。頭上から光が差しているおかげで、海底には私の影が落ちます。私は私の影がゆらゆら動くのを、ダンスするように楽しみます。あはは。声も水に溶けていく。けれど、思わず声を上げたところで、肺に水が攻め込んで、目覚めてしまうのです。そうすると、糸電話で誰かと繋がりたくなるのが常でした。自分で切ってしまったのに。
秋になれば金木犀の香り、けれど雨が降れば途端に散ります。雨上がりの庭、私は冷ややかな空気を吸いに外に出ました。太陽もなんだかぼやけている。
「探したよ」
庭の外、声が届く距離に貴方がいる。誰だったか、思い出せない。糸電話の糸を切った時、最後に話をしてくれた人なのか、受話器の海を泳ぐ時に、日差しを注いでいた人なのか。どちらでもいい。きっとどちらもおそらくは。
「約束、守っておくれね」
貴方の声が耳に馴染んで、約束の匂いを運ぶ。金木犀の残り香が立ち込める、小さな庭。彼を招いて庭を横切って、室内に戻る。太陽が雲から顔を出して、辺りは明るくなった。ジャムを乗せたクッキーでも食べよう。もう、寂しいなんて言わないよ。
