ここに分類不可の三題噺を置きます。
三題噺(手袋、薬、夜明け前)
2025/10/11 21:04まだ誰もが寝静まった頃、舅の息苦しそうな咳でトキは目を覚ましてしまった。時計を見やる。夜明けにはまだ早いが、動いてしまおうと身体を起こす。くれぐれも、子供と旦那を起こさないように。別の部屋で眠る舅の様子を伺う。不規則だが寝息が聞こえる。トキは階段を降りて、一階の茶の間のストーブをつけた。室内は冷え切っていて、トキはかじかむ指をストーブにかざして。暖かさを握り込んで、手袋をはめた。ストーブのぬくもりは、心許なく手袋に馴染んで消えていく。トキはスコップを手に玄関に出た。夜中に積もった雪を、旦那が出勤出来るように雪かきする。自分の家の近くに、街灯があってよかったとトキは思う。黙々と雪かきをしているうちに、白々と明るくなっていく。寒いのに汗が出て、雪に落ちた。トキは汗っかきである。終える頃には、腰が痛く。トキはトントン、と手で腰を叩いて伸びをした。
「おトキさんや、おトキさん」
舅の掠れた声を聞き逃さず、トキは家に戻る。
「はーいお義父さん、どうされましたか」
「寒い、上着は」
「ここにありますよ」
モンペを舅にかけてやり、時計を見ればそろそろ旦那も子供も起きてくる。朝ごはんにソーセージを茹でて。彩にブロッコリー。あとは、食パンにジャムでも塗ってもらう。旦那は起きてくると、あくびをしながら舅に体調を伺う。けれども、舅はトキにしか身体の不調を訴えない。
「いただきます」
家族3人で食卓を囲んでいる間も、トキはあれこれ段取りを考えて落ち着かない。旦那は見かねて、
「トキ、食べ終わってからでも大丈夫だよ」
と声をかける。そう言われると、ようやくトキは心を落ち着かせるのだった。この瞬間のため、トキは朝から1人働いても辛くないのである。
「お義父さん、お薬飲みましょうね」
「む」
こう言わないと、舅は困ったことに薬を飲まない。恥ずかしいことではないのに。トキだって、体調が悪ければ薬を飲むのだから。
「また降ってきたなぁ」
旦那が残念そうに傘を持ち出し、スノーブーツを履く。口付けをひとつ交わし、見送る。
「いってらっしゃいませ!」
昼下がりには、また雪かきをせねば。トキは煩わしくなんて思わず、むしろ心を洗われる作業と思っていた。雪国に嫁いで、トキは幸せだった。
「おトキさんや、おトキさん」
舅の掠れた声を聞き逃さず、トキは家に戻る。
「はーいお義父さん、どうされましたか」
「寒い、上着は」
「ここにありますよ」
モンペを舅にかけてやり、時計を見ればそろそろ旦那も子供も起きてくる。朝ごはんにソーセージを茹でて。彩にブロッコリー。あとは、食パンにジャムでも塗ってもらう。旦那は起きてくると、あくびをしながら舅に体調を伺う。けれども、舅はトキにしか身体の不調を訴えない。
「いただきます」
家族3人で食卓を囲んでいる間も、トキはあれこれ段取りを考えて落ち着かない。旦那は見かねて、
「トキ、食べ終わってからでも大丈夫だよ」
と声をかける。そう言われると、ようやくトキは心を落ち着かせるのだった。この瞬間のため、トキは朝から1人働いても辛くないのである。
「お義父さん、お薬飲みましょうね」
「む」
こう言わないと、舅は困ったことに薬を飲まない。恥ずかしいことではないのに。トキだって、体調が悪ければ薬を飲むのだから。
「また降ってきたなぁ」
旦那が残念そうに傘を持ち出し、スノーブーツを履く。口付けをひとつ交わし、見送る。
「いってらっしゃいませ!」
昼下がりには、また雪かきをせねば。トキは煩わしくなんて思わず、むしろ心を洗われる作業と思っていた。雪国に嫁いで、トキは幸せだった。
