ここに分類不可の三題噺を置きます。

三題噺(ガラス瓶、終電、白い息)

2025/10/11 20:23
ガラス瓶を洗浄してリサイクルする仕事をしているマッカーは、年末の忘年会シーズンで、ゴム手袋にビールの香りが移るほど働いた。今日は仕事納めの28日、皆がそそくさと早めに上がっても、マッカーは真面目に仕事を続けていた。
「マッカーくん、そんなに今夜1人で頑張ったってしょうがないじゃないか。年明けも忙しいよ、新年会があるからね」
「新年会に備えて、今は忘年会の分を洗い切るべきではないですか」
工場長は困った顔をし、ぽりぽりと頭を掻く。
「恥ずかしい話だけどね。そんなに熱心に残業をされても、支払えるほど儲かってないんだ。諦めて、来年に持ち越してはくれないか?」
マッカーは黙ってガラス瓶を洗うので、工場長はため息を吐いて背を向けた。気持ちよく年末休みに入らせて欲しいものだ、と。少しだけマッカーを疎ましく思う。
「残業代、今夜の分は要りません。僕が今年を終わらせたいだけなので」
工場長は背中越しにマッカーを見て、手を上げて振り、去っていった。マッカーが働いてるスペースと、玄関以外は明かりが消える。暖房まで切られたらしく、マッカーは白い息を吐きながら仕事をする。仲間に話しかけられないから、楽だ。マッカーは没頭してガラス瓶を洗う。最後の一本を洗ったところで、終電の20分前だった。ジャスト。マッカーは静かにガッツポーズをした。
「お疲れ様でした」
1年間、世話になった工場にマッカーは頭を下げた。電気を消し、駅へ走る。凛とした空気に、白い息が弾む。気分はよかった。電車にも間に合った。終電はマッカーを優しく運んでいく。ガタゴト、ガタゴト。あと3日でなんでもない夜明けが来て、年が進む。それでも、節目ってのは人間にとって大事なのだ。マッカーは、その想いが人より強いだけ。初日の出が見れるといいな。マッカーは腹を空かせながら、3日後の朝日に思いを馳せた。

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