ここに分類不可の三題噺を置きます。

三題噺(眠れない夜、借り物の名前、冷たい手)宝石の国、束の間の国

2025/07/22 05:18
眠れない夜は「コランダム」として月を見上げる。みんな元気にしているだろうか。俺がスパイとしてこの国にいる間は、故郷の安全は保証するって契約だった。あまり信じてもいないが。どちらにしろ、あの国に俺の居場所はもうなかった。裏切らない友達も、眠っていたし。唯一愛せた人は、怒らせてしまった。あそこに残ることもそれなりに地獄だ。だったら、影の英雄みたいな顔してここでのうのうと生きていた方がマシだろう。
「サンサ、夜更かし?」
「……リューコ」
リューコガーネットとは、生まれ故郷でも似たような時期に生まれて、わりあい仲が良かった。違う国に生まれると、こうも性格が違うのかと感心したのを覚えている。顔つきも、掘ってる奴が違うから別人に見える。金剛先生が彫る宝石達は、どこか柔和で暖かい顔つきをしている。
「眠れないの?」
「……朝日を、待とうかと思って」
コランダムである自分と、本当はお別れしてしまいたい。俺はこの国を愛してしまった。藝朮などなくとも、安らかで満たさせるこの土地にいたい。されど、奪われるばかりのこの国で、僕なんか役に立つだろうか。誰にも言えない問いかけは尽きない。
「サンセットサファイアに、恥じない朝日だねぇ」
リューコがそう呟く。故郷のリューコとダブる。俺はどんどんと底の方まで落ちていく。いのちって、なんだろう。
「どうした?見たかったんじゃないのか?」
「いや……まぁそうだな。俺の名前、サンセットサファイアだしな」
「そうそう!朝日が似合う名前でカッコいいよ!」
リューコが笑う。みんなのサンセットサファイア、サンサに切り替える。この孤独が溢れて何もかも壊したら、月人の願いは叶うだろうか。手袋の下の冷たい手が、真実の在処を求めている。俺には荷が重い。荷が重いからこそ、誰かに手伝ってもらうことは選択肢になかった。でも、それならば、どこへ。なにをしに、俺はここにいる?

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