ぽくぽとうーうのにちじょう

ぽくぽの朝は早い。春から秋にかけては、日の出と同じくらいに起きる。決まって晴れた朝である。
「うーう!おはよう!ぽくぽ、おぬわうく!」
「そう毎朝毎朝、庭の様子見なくてもいいだろ……」
「む!だむ!やさう、むすくーつるかも!」
「虫食うくらいならいい野菜だろ……」
そうは言いながらも、うーうはベッドから起き上がるとぽくぽを抱き上げて、ぎゅーっと抱きしめてやる。それから、庭への窓を開けてやった。ぽくぽは嬉しそうに庭へ駆ける。陽射しがツルツルとしたぽくぽの額を照らす。
「おい、ちょっと待て」
うーうに呼ばれて、ぽくぽは振り返り戻ってきた。うーうはお手製の麦わら帽子をぽくぽに被せてやる。耳と角が外に出るように、穴が空いている麦わら帽子。黄緑のリボンが可愛らしい。まぁぽくぽが陽に焼けることはないのだけども。うーうは、ホースを持ってきて、ぽくぽに差し出した。ぽくぽは土の上に座り、ホースの先を咥える。やがて、水がホースから出てくる。
「んぐんぐんぐ……ぷわぁ!」
ぽくぽはホースからぐいぐい水を飲み、口を離すと水を身体に浴びた。気が済むと、一度うーうにホースをかざす。うーうは受け取ると、ホースにシャワーヘッドをつけてやる。ぽくぽはホースを返してもらい、軽い足取りで庭の奥へと入った。
「ん……あかすそ、そだつすぐた」
家庭菜園の両脇に植えた赤紫蘇が、他の野菜に影を作るほど成長している。虫除けのために最初に植えたのだが。うーうが赤紫蘇のジュースにしたりしたのだが、消費は追いつかなかった。
「まぶくか」
ぽくぽは自分の爪を使って、いい具合に赤紫蘇を間引いていく。うーうは様子を見てるだけだが、赤紫蘇が少しもったいなく思えてきた。
「それ、捨てるのか?」
「たぶるぶんだくたぶたら、らーぬんのふりょうぬする」
「食べる分だけって相当残らねぇ?」
「だから、ふりょーぬする」
「肥料ねぇ」
うーうは山になった赤紫蘇を見てみた。虫食いもなく、香りもいい。せっかくぽくぽが作ったのに、来年の野菜に繋がるとはいえ肥料にするのはなんかもったいない。うーうは赤紫蘇を回収して家に持って帰った。ぽくぽは首を傾げたが、畑の手入れに戻る。
「きゅーる、るっぱ!」
ぽくぽは大きいきゅうりを収穫すると、齧りながら他の野菜も収穫した。ナス、プチトマト、オクラ、とうもろこし……夏野菜をあれこれ。秋冬の作物も苗を作ってある。頃合いを見て夏野菜を引っこ抜き、入れ替えで植えるのだ。うーうは畑のことは分からないが、ぽくぽは畑をよく知っていた。うーうと出会う前、畑を作っていたのである。
「お、むつばつ」
ミツバチが花の蜜を吸いにきた。ぽくぽはじーっと見つめ、ばくん!とミツバチを食べた!
「ん、つくつくすてあまく、おうすー」
ぽくぽはミツバチを摘みながらせっせと野良仕事。ミツバチは、ぽくぽが幼い頃からの大好物である。そのため、ぽくぽは庭で養蜂がしたいと言ったことがある。流石に引越しなどで差し支えるので、うーうから却下された。さて、野菜かごはいっぱいになった。ぽくぽは満足げに腕を組み、鼻から息をふんすと出す。かごを抱えて、家まで運ぶ。
「うーうー!あさごはんぬすよー!」
「おー。ちょっと待ってな」
うーうはテーブルに赤紫蘇を広げて、一枚一枚ハサミで切り揃えてパッキングしてみていた。人と関わるのはごめんだが、無人販売で外に置いておけば、誰か持っていくかもしれない。盗まれても、特に困らない。
「ぽくぽ、土ついた足で家に上がるなよ」
「およ?」
ぽくぽは家に上がる時は土を落とさなきゃならないのをすっかり忘れていた。ホースでもう一度身体を流す。濡れた身体をうーうに丁寧に拭いてもらい、部屋に入る。
「あさごはん!」
「はいはい、ちょっと待て」
ぽくぽは朝ごはんの前に、採れたてのとうもろこしを齧っていた。
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