ぽくぽとうーうのにちじょう
ぽくぽ。それは四つ足の白い怪獣。時刻は午前8時、子供用の椅子に上手に座り、怪獣は朝食を食べている。
「む。やっつすまった……」
今、ぽくぽの握りしめたフォークから、プチトマトが逃げ出した。ころころと転がり、向かい側へ行く。向かい側には若い男が座っており、ぽくぽと食卓を囲んでいた。男の食べているプレートにぶつかり、プチトマトは止まる。
「うーう、プツトマトかーすて」
「どうしようかなぁ。俺が食べちまうか?」
男はそうやってぽくぽをからかう。ぽくぽは眉間に皺を寄せ、フーッと鼻息を荒くした。太い尻尾がぶんぶん!と上下に風を切る。
「そる!ぽくぽのプツトマト!」
「はいはい、分かってるよ」
男はプチトマトを指で摘み、ぽくぽがあーと開いた口に放り込んだ。口の中にはズラリと歯が並ぶ。鋭い歯も平らな歯もある。ぽくぽは舌でプチトマトを潰して食べた。
「だーだ。……うーう、むだまやくおかわるすたう」
「残念ながら、今日の卵はそれで最後だ」
「なんと!むっかまうにかったばかる!」
「いや3日もあれば卵10個くらい減るぞ?誰が食べたんだか」
「ぽくぽ!」
ぽくぽははーい、と挙手するので、男は笑った。ぽくぽは、今卵料理ブームである。ぽくぽの真っ黒でまあるい瞳は、向かいの男のプレートに乗った目玉焼きを見つめている。
「いや、これは俺のだからやらん」
「ぶぅ」
「夕方に雨らしいからな。朝食食べたら買い物に行くぞ」
ぽくぽは山羊のような耳をピンと立て、嬉しそうな顔をする。まあこの怪獣は少しアヒル口なので、いつも機嫌良さげには見える。
「かうもの!さんぽ!だーだ!」
「勝手に走るなよ?何年も直んねーが」
「たまご!ぬばうかおー!」
「2倍買うって?先月はおどぶを気にしてたのに?」
「なぬ!?たまご、ふとる??」
「なんでも食べ過ぎたら太る」
「なんとううことだ……ゆゆすくずたう……ぽくぽ、こんなおどぶぬなやまさるたことなうのぬ……」
なんということだ、ゆゆしきじたい。ぽくぽ、こんなにおでぶになやまされたことないのに……。ぽくぽの不完全な言葉を、男は難なく理解して笑う。
「そりゃお前、俺と生活始めてから運動量減ってるからだろ。運動不足」
「うんどうぶそく」
ぽくぽはムンクの叫びのように手を頬に当てた。親指が内側に握り込めるが、本数は4本しかない。宝石のようにツヤツヤとした爪がついている。
「ほら、卵は2倍買ってやるからさっさと食え」
「はーう……ん?たまごぬばう?んー」
ぽくぽは目を細めて考え事をしながら、残っていたサラダとウインナーを食べた。卵2倍にしたら太るのでは……でも卵2倍、素敵な響き!
「やったあたまごぬばう!」
「お前喜びがあとから追いかけてくるんだよな」
男は幸せそうに笑う。それを見て怪獣も笑う。ぽくぽは四つ足の白い怪獣。背中に折り重なるように生えたウロコは、陽の光を受けると虹色に光る。雨が降る前に、2匹は人間の世界へ飛び出すだろう。
「む。やっつすまった……」
今、ぽくぽの握りしめたフォークから、プチトマトが逃げ出した。ころころと転がり、向かい側へ行く。向かい側には若い男が座っており、ぽくぽと食卓を囲んでいた。男の食べているプレートにぶつかり、プチトマトは止まる。
「うーう、プツトマトかーすて」
「どうしようかなぁ。俺が食べちまうか?」
男はそうやってぽくぽをからかう。ぽくぽは眉間に皺を寄せ、フーッと鼻息を荒くした。太い尻尾がぶんぶん!と上下に風を切る。
「そる!ぽくぽのプツトマト!」
「はいはい、分かってるよ」
男はプチトマトを指で摘み、ぽくぽがあーと開いた口に放り込んだ。口の中にはズラリと歯が並ぶ。鋭い歯も平らな歯もある。ぽくぽは舌でプチトマトを潰して食べた。
「だーだ。……うーう、むだまやくおかわるすたう」
「残念ながら、今日の卵はそれで最後だ」
「なんと!むっかまうにかったばかる!」
「いや3日もあれば卵10個くらい減るぞ?誰が食べたんだか」
「ぽくぽ!」
ぽくぽははーい、と挙手するので、男は笑った。ぽくぽは、今卵料理ブームである。ぽくぽの真っ黒でまあるい瞳は、向かいの男のプレートに乗った目玉焼きを見つめている。
「いや、これは俺のだからやらん」
「ぶぅ」
「夕方に雨らしいからな。朝食食べたら買い物に行くぞ」
ぽくぽは山羊のような耳をピンと立て、嬉しそうな顔をする。まあこの怪獣は少しアヒル口なので、いつも機嫌良さげには見える。
「かうもの!さんぽ!だーだ!」
「勝手に走るなよ?何年も直んねーが」
「たまご!ぬばうかおー!」
「2倍買うって?先月はおどぶを気にしてたのに?」
「なぬ!?たまご、ふとる??」
「なんでも食べ過ぎたら太る」
「なんとううことだ……ゆゆすくずたう……ぽくぽ、こんなおどぶぬなやまさるたことなうのぬ……」
なんということだ、ゆゆしきじたい。ぽくぽ、こんなにおでぶになやまされたことないのに……。ぽくぽの不完全な言葉を、男は難なく理解して笑う。
「そりゃお前、俺と生活始めてから運動量減ってるからだろ。運動不足」
「うんどうぶそく」
ぽくぽはムンクの叫びのように手を頬に当てた。親指が内側に握り込めるが、本数は4本しかない。宝石のようにツヤツヤとした爪がついている。
「ほら、卵は2倍買ってやるからさっさと食え」
「はーう……ん?たまごぬばう?んー」
ぽくぽは目を細めて考え事をしながら、残っていたサラダとウインナーを食べた。卵2倍にしたら太るのでは……でも卵2倍、素敵な響き!
「やったあたまごぬばう!」
「お前喜びがあとから追いかけてくるんだよな」
男は幸せそうに笑う。それを見て怪獣も笑う。ぽくぽは四つ足の白い怪獣。背中に折り重なるように生えたウロコは、陽の光を受けると虹色に光る。雨が降る前に、2匹は人間の世界へ飛び出すだろう。
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