ポクポの旅路
私の両親は働き者で、私は幼い頃から家で1人で過ごすことが多かった。ポケモンたちが面倒を見てくれて、一緒に遊んだ。父さんが一緒に仕事をするパートナーのジュナイパーが、たまに私のお守りをする。ジュナイパーの膝の上に乗って、翼で隠してもらうのが好き。くちばしに触れると嫌がりつつも、観念していつも触らせてくれる。最近は7歳の時に捕まえたメノクラゲがドククラゲに進化したので、少し家は窮屈になった。ドククラゲに進化してから、ジュナイパーと一緒の時間は夜だけになった。それが少し寂しい。でも、ドククラゲはいつも私の様子を観察してくれて、毒の触手だからジュナイパーよりもやってくれることは少ないけれど、面倒を見てくれた。
「ドククラゲ、背中に乗せて!」
そう声をかければ屈んでくれ、背中にうつ伏せに乗っかると上下に揺れながら、広いとは言えない部屋をうろついてくれた。ドククラゲの背中は冷たくて気持ちがいい。赤くぷよぷよしたところを撫でた。くすぐったいようで左右に揺れる。
「今日はジュナイパー帰ってくるかなー」
「ドゥドゥー」
きっと帰ってくるよ、とドククラゲは私をあやすように細かく揺れた。今日は私の10歳の誕生日。父さんも母さんも、きっと早めに帰ってくる。…………旅に出た兄さんはどうかな。帰ってはこないかも。ポケウォッチを見る。連絡はきてない。ふぅ、とため息を吐いたので、ドククラゲは心配そうに鳴いた。
「ううん、ごめん。大丈夫だよ。ウツギ博士のポケモン講座でも見よう」
ドククラゲと一緒に、夕刻まで両親を待った。
結局、父さんも母さんもいつも通りで。少し遅い時間に帰ってきた。でも誕生日おめでとうはちゃんと伝えてくれて、父さんはケーキを買ってきてくれた。母さんがまだ帰ってきてないのに気づくと、料理の下拵えを始めた。ジュナイパーは、心なしかいつもより嬉しそうに、そっと私を抱きしめた。ジュナイパーの膝の上、ドククラゲと並んでニュースを見た。ポケモンの大量発生のニュースが出る。いつか、そういう場所に行ってみたい。草むら中にヤンヤンマがたくさんいるところ、見てみたいな。
「ただいま〜」
母さんの声がして、玄関まで走る。母さんは靴を脱ぎながら、はいはい、と私を受け止めて頭を撫でた。
「なにもなかった?」
「んーん。ドククラゲとウツギ博士のポケモン講座見てたよ」
「ポクポは勉強熱心ね。いいこと。お誕生日おめでとう。遅くなっちゃってごめんね」
「大丈夫」
母さんは自分の着替えもそこそこに、父さんと料理を始めた。私はダイニングに行き、ジュナイパーとドククラゲのご飯の支度をする。ポケモンのご飯の支度は、小さい私の役割だった。
夕飯を食べ終えると、母が手招きをする。素直に隣に座ると、私の手にモンスターボールを乗せた。
「今日、ちょっとお仕事でイッシュ地方の人と話したから、ここら辺ではちょっと珍しいポケモン、交換してもらったのよ。ポクポの誕生日に、その子を託すわね」
モンスターボールを開けてみた。黄色いトカゲのようなポケモンが顔を出す。落ち着かないようにキョロキョロとしている。垂れ下がった耳に触れると、キャッっと鳴いて、パチっと電気が走った。それにも驚いたみたいで、私の顔を見て首を傾げる。「大丈夫だった?」と心配しているみたい。私はそっと頭を撫でた。
「エレキテル、っていうでんきタイプのポケモンよ。一回、進化する!」
「そうなんだ!楽しみ」
私は母さんに笑顔を見せる。母さんが私の頭を撫でる。撫で撫での連鎖。
「その子が進化したら、ポクポも旅に出てもいいわよ」
私は目を丸くして、旅がしたいか考えた。遠くまでは行ってみたいけど、お家にはいつでも帰れるようにしたいな。
「ふふ。本当はドククラゲがいるからいつ出してもよかったんだけどね。ポクポはのんびり屋さんだし、2匹いた方が楽しいかと思って」
「うん。とりあえずエレキテルを育てるよ。旅に出るかは、ちょっと考えてみる」
「ポクポは慎重ねぇ」
大量発生は見てみたいけど、それって近所の草むらでも起こるし。自分がまだ幼くて、ドククラゲの扱いも上手くないから、ずっと家で過ごしているだけ。
「あら、トクトからメール来てるね。「ポクポ、誕生日おめでとう」だって」
私の端末に連絡くれればいいのに。変な兄だ。兄は私みたいに心配性じゃないから、とっくに家を出ていろんな街を歩いている。今はどんな子と旅してるんだろうな。
「なんか、プレゼントも送ったって言ってるわね」
「なに貰えるのかなぁ」
ぼんやり天井を見上げて、エリキテルを撫でる。エレキテルは私の膝の上で丸まって寝出した。
「ほんとにポクポは、ポケモンに好かれるわね」
「うん。嬉しい」
エレキテルが進化するまで、もう少しだけ家にいる。ジュナイパーと会えないのは寂しいから。ジュナイパーは私の側に寄ってきて、膝の上のエレキテルを覗き込んで。自分の羽を一枚抜くと、エレキテルの上に乗せてやった。この羽、大事にしよう。
「だから、ジュナイパーはくちばし触られるのが嫌なんだってば」
父さんがケーキを配膳しながら苦笑する。ジュナイパーは頭を振った。家族みんなが、その動作で笑った。
「ドククラゲ、背中に乗せて!」
そう声をかければ屈んでくれ、背中にうつ伏せに乗っかると上下に揺れながら、広いとは言えない部屋をうろついてくれた。ドククラゲの背中は冷たくて気持ちがいい。赤くぷよぷよしたところを撫でた。くすぐったいようで左右に揺れる。
「今日はジュナイパー帰ってくるかなー」
「ドゥドゥー」
きっと帰ってくるよ、とドククラゲは私をあやすように細かく揺れた。今日は私の10歳の誕生日。父さんも母さんも、きっと早めに帰ってくる。…………旅に出た兄さんはどうかな。帰ってはこないかも。ポケウォッチを見る。連絡はきてない。ふぅ、とため息を吐いたので、ドククラゲは心配そうに鳴いた。
「ううん、ごめん。大丈夫だよ。ウツギ博士のポケモン講座でも見よう」
ドククラゲと一緒に、夕刻まで両親を待った。
結局、父さんも母さんもいつも通りで。少し遅い時間に帰ってきた。でも誕生日おめでとうはちゃんと伝えてくれて、父さんはケーキを買ってきてくれた。母さんがまだ帰ってきてないのに気づくと、料理の下拵えを始めた。ジュナイパーは、心なしかいつもより嬉しそうに、そっと私を抱きしめた。ジュナイパーの膝の上、ドククラゲと並んでニュースを見た。ポケモンの大量発生のニュースが出る。いつか、そういう場所に行ってみたい。草むら中にヤンヤンマがたくさんいるところ、見てみたいな。
「ただいま〜」
母さんの声がして、玄関まで走る。母さんは靴を脱ぎながら、はいはい、と私を受け止めて頭を撫でた。
「なにもなかった?」
「んーん。ドククラゲとウツギ博士のポケモン講座見てたよ」
「ポクポは勉強熱心ね。いいこと。お誕生日おめでとう。遅くなっちゃってごめんね」
「大丈夫」
母さんは自分の着替えもそこそこに、父さんと料理を始めた。私はダイニングに行き、ジュナイパーとドククラゲのご飯の支度をする。ポケモンのご飯の支度は、小さい私の役割だった。
夕飯を食べ終えると、母が手招きをする。素直に隣に座ると、私の手にモンスターボールを乗せた。
「今日、ちょっとお仕事でイッシュ地方の人と話したから、ここら辺ではちょっと珍しいポケモン、交換してもらったのよ。ポクポの誕生日に、その子を託すわね」
モンスターボールを開けてみた。黄色いトカゲのようなポケモンが顔を出す。落ち着かないようにキョロキョロとしている。垂れ下がった耳に触れると、キャッっと鳴いて、パチっと電気が走った。それにも驚いたみたいで、私の顔を見て首を傾げる。「大丈夫だった?」と心配しているみたい。私はそっと頭を撫でた。
「エレキテル、っていうでんきタイプのポケモンよ。一回、進化する!」
「そうなんだ!楽しみ」
私は母さんに笑顔を見せる。母さんが私の頭を撫でる。撫で撫での連鎖。
「その子が進化したら、ポクポも旅に出てもいいわよ」
私は目を丸くして、旅がしたいか考えた。遠くまでは行ってみたいけど、お家にはいつでも帰れるようにしたいな。
「ふふ。本当はドククラゲがいるからいつ出してもよかったんだけどね。ポクポはのんびり屋さんだし、2匹いた方が楽しいかと思って」
「うん。とりあえずエレキテルを育てるよ。旅に出るかは、ちょっと考えてみる」
「ポクポは慎重ねぇ」
大量発生は見てみたいけど、それって近所の草むらでも起こるし。自分がまだ幼くて、ドククラゲの扱いも上手くないから、ずっと家で過ごしているだけ。
「あら、トクトからメール来てるね。「ポクポ、誕生日おめでとう」だって」
私の端末に連絡くれればいいのに。変な兄だ。兄は私みたいに心配性じゃないから、とっくに家を出ていろんな街を歩いている。今はどんな子と旅してるんだろうな。
「なんか、プレゼントも送ったって言ってるわね」
「なに貰えるのかなぁ」
ぼんやり天井を見上げて、エリキテルを撫でる。エレキテルは私の膝の上で丸まって寝出した。
「ほんとにポクポは、ポケモンに好かれるわね」
「うん。嬉しい」
エレキテルが進化するまで、もう少しだけ家にいる。ジュナイパーと会えないのは寂しいから。ジュナイパーは私の側に寄ってきて、膝の上のエレキテルを覗き込んで。自分の羽を一枚抜くと、エレキテルの上に乗せてやった。この羽、大事にしよう。
「だから、ジュナイパーはくちばし触られるのが嫌なんだってば」
父さんがケーキを配膳しながら苦笑する。ジュナイパーは頭を振った。家族みんなが、その動作で笑った。
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