刀鍛冶の少女

アケビとの電話は日付が変わる時間にまで及んだ。ほぼ、アケビの寝落ちで電話は切れた。俺も眠くて仕方なかったから、切れたと同時に眠りについてしまった。それでも、早く切ればよかったなんて微塵も感じることはなく、むしろもっと話していたいくらいだった。なんだかアケビが夢の中でもずっと笑っているような気がして、昨日はすごくいい気分で眠れたのだ。で、カモメの鳴き声で目が覚めた朝七時。昨夜話していた通り、俺はアケビに会いに散歩に行くことにした。

「またあの娘のとこか?」
「! デュース」
「ちょっと頻度が多いんじゃねぇか?」
「そうか?」

ストライカーを海に降ろそうとした時、デュースに呼び止められた。デュースは興味津々といった様子で、口角はにんまりと上がっている。嫌な予感がした。

「お前、アケビのことが好きなんだな」
「…………は?」

言ってやった、というような得意気な顔が無性に腹が立つ。唐突な物言いに、眉間にシワが寄った。

「俺がアケビを好きって、そりゃ好きじゃなきゃ会いに行かねぇだろ」
「そーいう好きじゃねぇって、分かんねぇか?」
「どーいう好きだよ?」

呆れた声を出せば、デュースは声を殺して笑った。なんだってんだ。

「例えば、あの娘の唇を奪いたい、なんて思ったことはねぇのか?」
「!? はぁ!? ……はぁー!?」

なんだそりゃ。そんなこと、思ってなんか。思ってなんか……!

「ほら、なんでそこでお前は慌てるんだよ」
「慌てるって……! そんな、き、きすとか別に……! そんなことするために会いに行ってるわけじゃねぇよ!」
「それは本当だとしても、したいとは思わねぇのか?」

その言葉に、俺は口を半開きにしたまま固まってしまった。俺が? アケビと? ……キス? 混乱する頭に流れてきたのは、アケビと食べたジェラートのことで。あん時、アケビは俺の食べかけを……。

「おおお、思わねぇよっ!」
「へぇ? その顔で言われても説得力はねぇな」

顔が熱っぽくて暑い。胸がざわざわとくすぐったい。今すぐデュースの前から消えてしまいたかった。俺はストライカーをさっさと海に降ろし、その上に飛び乗った。

「青いなぁ、エース。さっさと素直に認めて告白しちまえよ」
「うっせぇ、バーカ! バカデュース!」

俺は今までにない全速力で、バーニングエイトを目指した。ドキドキと心臓が早鐘を鳴らすのはなんでなのか。俺はアケビとどうなりたいのか。全部、全部、答えなんて当に出てるけど、認めるわけにはいかなかった。アケビにそんなこと、求めるわけにはいかないだろ。
8/27ページ
スキ