刀鍛冶の少女

エースと電伝虫を買ってから、丸三日経った。あの後、喧嘩したのがバレないように帰るのが大変だった。棟梁には結局バレて、私は拳骨を喰らった。なので、なんとなーくこちらから電話をかけたら怒られるんじゃないか、という親に対する後ろめたさがあり連絡がとれずにいた。エースから連絡は来ない。仕事が終わると、眠るまでじーっと赤い子電伝虫を見つめる夜が続いた。けれど、作刀も順調だし、むしろエースと知り合ってから独創性だとか洗練さが増したような気がする。うん、私は頑張ってるから、今夜は電話をしてみよう。私は早々に今日の仕事を切り上げて、湯浴みに向かう。今夜はきっといい夜になる。


アケビから電話が来ねぇ。買った時の反応を考えれば予想外だ。青い子電伝虫をぼんやりと眺める日が続いている。こちらからかけてみようかとも思ったが、アケビは真面目だから作業中は出ないだろうし、よしと意気込んだら夜襲にあったりして出来ずにいた。決して、ダイヤルを回すのに躊躇しているとかではない。それに、もしかしたらやっぱりアケビを怖がらせたんじゃないか、という不安が消えなかった。アケビは、あの日帰る時に怖がっているように見えたから。……嫌われたのかな。荒い波音があざ笑うように、俺の心を揺らす。

(酒でも貰ってくるかな)

そう思って、自分の部屋を出ようとした時だ。プルプルプル、急に電伝虫が鳴きだした。驚いてビクッと肩が揺れる。番号はお互いにしか教えてない、はず。ということは、今俺を呼んでいるのは間違いなくアケビなわけで。ゴクリと唾を飲み込んだ。早く、早く出ないと切れちまう! 慌てて、けれどもゆっくりと受話器を取った。

「……もしもし」
「もしもし! エースですか! アケビです!」

この上なく元気そうな、明るい声を聞いて胸に火が灯るような感覚になった。俺が考えていたことが杞憂だと分かると、三日間我慢していた分だけ話したい気持ちが溢れてきた。

「エースだ。変わりねぇか?」
「元気ですよ*今日もたくさん働いたんです、褒めてください!」
「!! お、う。アケビ、よく頑張ったな!」
「えへへ*」

アケビはどうも上機嫌のようだ。褒めろ、なんて初めて言われて少し驚いた。けれど、妹のようでものすごく可愛い。

「アケビ、偉い!」
「ふふふ」
「すごい!」
「そんな*」
「可愛い!」
「!!」

調子に乗って褒めていると、急にアケビが息を飲んで黙った。そうして、しばらく返事を待っていたら。

「……そんなことないです」

と、蚊の鳴くような声で言われた。おそらく、照れている。俺はルフィによくしてたように、意地悪がしたくなった。

「アケビ、」
「はい」
「可愛い」
「そ、そんなこと」
「可愛い」
「…………!!」
「可愛いったら可愛い!」
「もうっ! そんなこと絶っ対ないです!」

なんでそこまで頑なに拒むのか。可笑しくて可笑しくて笑えば、むくれた声がする。

「可愛くなんてないですもん! 嘘吐くなら切りますよ!」
「いや、嘘は言ってねぇって」
「嘘ですー!!」

しまいには泣き出しそうな声を出すもんだから、慌てた。もう少し、声を聞いていたいのに。

「悪かった、ごめん」
「……もう言いません?」
「言わない、言わないさ」
「……ならいいです」

しばらく、お互いに無言。受話器の向こうから虫の鳴く声が聞こえてくる。バーニングエイトは秋島だ。アケビはきっと、いつも俺と話している縁側にいるんだろう。

「……アケビ、」
「……なんですか」
「声、聞かせろ」
「あーあーあー」

そういうことじゃねぇって。口には出さずに笑い声を漏らす。あぁ。

「明日、また散歩に行ってもいいか?」
「!! もちろんです」

声聞くと、会いたくなっちまうんだなぁ。
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