刀鍛冶の少女
雑貨屋を出ると、商店街を抜けて中央街までぶらぶらと歩いた。一個ずつに分けた子電伝虫を、アケビはさっきから見つめては嬉しそうに笑う。店で店主に散々冷やかされたのだが、彼女にはよく分かってないみたいだ。
「ねぇ、これいつかけてもいいんですか?」
「いい、ぜ。毎回でれるわけじゃないけどな」
「やったー、今よりたくさんお話出来ますね!」
ご機嫌で鼻唄を歌う彼女に、内心ほっとしている自分がいる。散歩で立ち寄るのは、俺の一方的な行動だったから。本当は迷惑なんじゃないかって心のどっかで怯えていた。けれど、会いたいのに会いに行かないなんて、俺らしくもねぇ。くいは残さない。俺はそんな生き方しか出来ねぇから。……こいつがあれば、いつでも話が出来るし、アケビの都合にも合わせられる。いい買い物をしたと思った。
「あ! あっちの店のジェラート! 評判だけど食べたことないんですよね」
言うが早いか、アケビはその店の方へ駆け出した。女の子って、甘いもの好きだよなぁ。彼女の後ろを追いかけながら、俺は誰かに見られているのを感じていた。嫌な予感がする。警戒しながらも、それをアケビに悟られないように気をつける。
「エースはどの味がいいですか?」
「ん?」
「ジェラート! 二つ買って半分こすれば二種類食べられます!」
キラキラの目でそう言われて、思わず吹き出した。普段、物静かな彼女がはしゃいでいる。俺も、多分。
「アケビが好きなの、二つ選べばいいじゃねーか」
「え、いいんですか……あ、ダメな味とかあります?」
「じゃあ甘すぎないので頼む」
そう言えば、アケビはメニューと睨めっこを始めた。そうして、アケビが頼んだのはラズベリーとサマーオレンジだった。確かに、それなら俺も飽きずに食べられそうだ。鮮やかなオレンジのジェラートを持たされて、アケビはラズベリーに口をつけた。しばらく、溶けていくジェラートと格闘しながら歩く。
「エース、エースのも一口ください!」
「おう、交換こだな、!」
勢い良く返事したはいいが、はたと冷静になる。ジェラートを、交換。それって、つまりは。顔に熱が集まるのが分かる。
「エース?」
「いや……お前がいいなら、どうぞ……」
顔を合わせられずに、ジェラートを交換する。嬉しそうに俺の分を食べるアケビを横目に、俺は溶けていくラズベリーをどうするか考えていた。そのことに集中し過ぎていた。はっと気付けばひと気のない路地に出ていて、囲まれていると直感で思った。
「アケビッ、伏せろ!」
「え、えっと?」
驚きながらも伏せてくれたおかげで、アケビの首を獲ろうとする刃が彼女を傷つけることはなかった。剣を持った男を睨みつけ、拳を握り吹っ飛ばす。
「かかれぇ! こっちは50人いんだ、火拳のエースを討ち取れぇ!」
頭らしい男が叫ぶ。親父のナワバリのこの島で、随分と軽率に動くもんだ。次々と斬りかかってくる男達をいなし、のしていく。姑息なことにアケビを狙ってくるために、いつもの数倍はやりにくい。一瞬アケビに背を向けた瞬間に、敵の一人がアケビの腕を掴んだ。
「い、嫌っ!」
「はっはぁ! 捕まえたぜ嬢ちゃん! しかしまぁ、火拳のエースともあろうもんが、こんなキズものの芋娘を選ぶなんてなぁ」
「……!! アケビに触んじゃねぇよゲス野郎が!!」
俺の中で何かが切れた。ひと睨みして叫べば、アケビを捕まえた男は泡を吹いて気絶した。そこからは、能力を使って徹底的にやった。俺の身体が炎に変わり、メラメラと闘志が舞い散る。
「火拳!!」
バキバキと建物と共に頭の男をぶん殴った。終わってみれば、残ったのは倒れた男達と崩れた瓦礫だけだ。頭の男も、立ち上がってくる気配はない。はぁ、と熱く息を吐いた。
「エース……」
「!! アケビ……」
無事を確認する言葉が出てこなかった。海賊である俺の姿を、初めて見られた。それは誇り高い俺の姿であるはずなのに、どうしようもなく怖くなった。この恐怖はどこから来るんだ。アケビの次の言葉が恐ろしくて、ただ呆然と立ちすくむ。
「エース、すごく綺麗……綺麗でした!」
「は……」
「メラメラ燃える炎が生きているようで、すごく綺麗でした!」
予想もしなかった言葉に、呆気に取られる。そうして、力が抜けて膝から崩れ落ちてしまった。
「! エース、どこか怪我した!?」
「いや、どこも怪我してねぇよ……にしても、はは、なんだよそれ」
道端に大の字に寝そべり、大声で笑った。アケビは不思議そうに、それでも俺の側を離れずにしゃがみこんだ。
「エース、守ってくれてありがとう」
「当たり前だろ。お前は俺の、」
俺の、なんだ? 言葉に詰まった俺を、また不思議そうに彼女は見ていた。
「ねぇ、これいつかけてもいいんですか?」
「いい、ぜ。毎回でれるわけじゃないけどな」
「やったー、今よりたくさんお話出来ますね!」
ご機嫌で鼻唄を歌う彼女に、内心ほっとしている自分がいる。散歩で立ち寄るのは、俺の一方的な行動だったから。本当は迷惑なんじゃないかって心のどっかで怯えていた。けれど、会いたいのに会いに行かないなんて、俺らしくもねぇ。くいは残さない。俺はそんな生き方しか出来ねぇから。……こいつがあれば、いつでも話が出来るし、アケビの都合にも合わせられる。いい買い物をしたと思った。
「あ! あっちの店のジェラート! 評判だけど食べたことないんですよね」
言うが早いか、アケビはその店の方へ駆け出した。女の子って、甘いもの好きだよなぁ。彼女の後ろを追いかけながら、俺は誰かに見られているのを感じていた。嫌な予感がする。警戒しながらも、それをアケビに悟られないように気をつける。
「エースはどの味がいいですか?」
「ん?」
「ジェラート! 二つ買って半分こすれば二種類食べられます!」
キラキラの目でそう言われて、思わず吹き出した。普段、物静かな彼女がはしゃいでいる。俺も、多分。
「アケビが好きなの、二つ選べばいいじゃねーか」
「え、いいんですか……あ、ダメな味とかあります?」
「じゃあ甘すぎないので頼む」
そう言えば、アケビはメニューと睨めっこを始めた。そうして、アケビが頼んだのはラズベリーとサマーオレンジだった。確かに、それなら俺も飽きずに食べられそうだ。鮮やかなオレンジのジェラートを持たされて、アケビはラズベリーに口をつけた。しばらく、溶けていくジェラートと格闘しながら歩く。
「エース、エースのも一口ください!」
「おう、交換こだな、!」
勢い良く返事したはいいが、はたと冷静になる。ジェラートを、交換。それって、つまりは。顔に熱が集まるのが分かる。
「エース?」
「いや……お前がいいなら、どうぞ……」
顔を合わせられずに、ジェラートを交換する。嬉しそうに俺の分を食べるアケビを横目に、俺は溶けていくラズベリーをどうするか考えていた。そのことに集中し過ぎていた。はっと気付けばひと気のない路地に出ていて、囲まれていると直感で思った。
「アケビッ、伏せろ!」
「え、えっと?」
驚きながらも伏せてくれたおかげで、アケビの首を獲ろうとする刃が彼女を傷つけることはなかった。剣を持った男を睨みつけ、拳を握り吹っ飛ばす。
「かかれぇ! こっちは50人いんだ、火拳のエースを討ち取れぇ!」
頭らしい男が叫ぶ。親父のナワバリのこの島で、随分と軽率に動くもんだ。次々と斬りかかってくる男達をいなし、のしていく。姑息なことにアケビを狙ってくるために、いつもの数倍はやりにくい。一瞬アケビに背を向けた瞬間に、敵の一人がアケビの腕を掴んだ。
「い、嫌っ!」
「はっはぁ! 捕まえたぜ嬢ちゃん! しかしまぁ、火拳のエースともあろうもんが、こんなキズものの芋娘を選ぶなんてなぁ」
「……!! アケビに触んじゃねぇよゲス野郎が!!」
俺の中で何かが切れた。ひと睨みして叫べば、アケビを捕まえた男は泡を吹いて気絶した。そこからは、能力を使って徹底的にやった。俺の身体が炎に変わり、メラメラと闘志が舞い散る。
「火拳!!」
バキバキと建物と共に頭の男をぶん殴った。終わってみれば、残ったのは倒れた男達と崩れた瓦礫だけだ。頭の男も、立ち上がってくる気配はない。はぁ、と熱く息を吐いた。
「エース……」
「!! アケビ……」
無事を確認する言葉が出てこなかった。海賊である俺の姿を、初めて見られた。それは誇り高い俺の姿であるはずなのに、どうしようもなく怖くなった。この恐怖はどこから来るんだ。アケビの次の言葉が恐ろしくて、ただ呆然と立ちすくむ。
「エース、すごく綺麗……綺麗でした!」
「は……」
「メラメラ燃える炎が生きているようで、すごく綺麗でした!」
予想もしなかった言葉に、呆気に取られる。そうして、力が抜けて膝から崩れ落ちてしまった。
「! エース、どこか怪我した!?」
「いや、どこも怪我してねぇよ……にしても、はは、なんだよそれ」
道端に大の字に寝そべり、大声で笑った。アケビは不思議そうに、それでも俺の側を離れずにしゃがみこんだ。
「エース、守ってくれてありがとう」
「当たり前だろ。お前は俺の、」
俺の、なんだ? 言葉に詰まった俺を、また不思議そうに彼女は見ていた。
