病弱な体術使い
ハートの海賊団、船内--時刻は日付が変わる頃。今日も今日とて海賊達は宴会に明け暮れている。賑わい盛り上がる船員たちを他所に、キャプテンであるトラファルガー・ローは席を立った。そうして、食堂を離れると一人、船内の奥にある別室を訪ねた。暗がりの中でロウソクを一つ灯された部屋では、青白い肌の女が小説を読みふけっている。その様子を見、ローはため息をこぼす。それに気付いた女は、嫌そうに本から顔を離した。
「睡眠薬を投与した方がいいか?」
「眠くない」
「寝ようとしないからだ」
ローは長い脚を組み、ベッドに腰掛ける。未だに本を読もうとする女から、本を取り上げた。起き上がり取り返そうとする女の、肩を思い切り押し込め寝かしつける。グッと漏れる息。忠告するように、女の耳元でローは喋る。
「元気でいれば、明日がある。その命は保証してやる。だから今は、寝ろ」
「……だって眠くないんだもん」
なおも愚図る女の息は、細くか弱い。医者のローから見ずとも、その女の命は儚いものと知ることが出来る。白く透き通るような頬を、確かめるようにローの指が滑る。首筋に手をやれば、片手で絞め殺せてしまいそうだ。女はされるがまま、しかし不快感を持ってローを見つめる。いたわられる程、決して弱くはないと訴えかけるように。
「……なにも考えるな。目を瞑っていれば、いずれ寝れるだろ」
「そうして、もう目が覚めなかったら?」
「怖いのか?」
「怖いわけじゃないけど」
強がる女に、ローは微笑みを落とした。そう言えているうちは、この女は大丈夫だろうと思ったからだ。戦闘員であり、患者であり、……そして大切なクルーである彼女。彼女を手放さない為に、今までありったけの医療を施してきた。それは無駄ではなく、きっと明日も彼女は笑えているはず。そこまで考えて、怖がっているのは自分なのではないかとローは嘲笑した。その笑みの変化に、女は不安げな表情を見せる。
「……ロー?」
「そんなに寝れねぇなら、手でも握っててやろうか?」
意地悪のつもりで、ローは言った。天邪鬼な彼女なら突っぱねるだろうと。しかし。
「じゃあお願いしようかしら」
今夜の彼女は、一枚上手だった。妖艶な笑みをたたえ、そっと差し出される右腕。少し面食らいながら、ローはしっかりとその手をとった。女の冷たい手のひらに、ローの熱が染み込んでいく。
「……キャプテンにここまでさせてるんだ、さっさと目を閉じろ」
満足気に目を閉じる女を、ローは慈愛の目で見下ろしていた。ロウソクを吹き消してしまえば、あとには暗闇と息遣いが残される。祈るように繋がれた手は、明け方まで離れることはなかった。
「睡眠薬を投与した方がいいか?」
「眠くない」
「寝ようとしないからだ」
ローは長い脚を組み、ベッドに腰掛ける。未だに本を読もうとする女から、本を取り上げた。起き上がり取り返そうとする女の、肩を思い切り押し込め寝かしつける。グッと漏れる息。忠告するように、女の耳元でローは喋る。
「元気でいれば、明日がある。その命は保証してやる。だから今は、寝ろ」
「……だって眠くないんだもん」
なおも愚図る女の息は、細くか弱い。医者のローから見ずとも、その女の命は儚いものと知ることが出来る。白く透き通るような頬を、確かめるようにローの指が滑る。首筋に手をやれば、片手で絞め殺せてしまいそうだ。女はされるがまま、しかし不快感を持ってローを見つめる。いたわられる程、決して弱くはないと訴えかけるように。
「……なにも考えるな。目を瞑っていれば、いずれ寝れるだろ」
「そうして、もう目が覚めなかったら?」
「怖いのか?」
「怖いわけじゃないけど」
強がる女に、ローは微笑みを落とした。そう言えているうちは、この女は大丈夫だろうと思ったからだ。戦闘員であり、患者であり、……そして大切なクルーである彼女。彼女を手放さない為に、今までありったけの医療を施してきた。それは無駄ではなく、きっと明日も彼女は笑えているはず。そこまで考えて、怖がっているのは自分なのではないかとローは嘲笑した。その笑みの変化に、女は不安げな表情を見せる。
「……ロー?」
「そんなに寝れねぇなら、手でも握っててやろうか?」
意地悪のつもりで、ローは言った。天邪鬼な彼女なら突っぱねるだろうと。しかし。
「じゃあお願いしようかしら」
今夜の彼女は、一枚上手だった。妖艶な笑みをたたえ、そっと差し出される右腕。少し面食らいながら、ローはしっかりとその手をとった。女の冷たい手のひらに、ローの熱が染み込んでいく。
「……キャプテンにここまでさせてるんだ、さっさと目を閉じろ」
満足気に目を閉じる女を、ローは慈愛の目で見下ろしていた。ロウソクを吹き消してしまえば、あとには暗闇と息遣いが残される。祈るように繋がれた手は、明け方まで離れることはなかった。
