刀鍛冶の少女

 真っ直ぐで綺麗に伸びた黒髪が羨ましかった。指を通せば、するりと抜けていく感触も大好きだった。放課後、アケビを学校へ迎えに行ったら、いつもの笑顔はそのままに髪型がガラリと変わっていた。くるくる、ふわふわの髪の毛に唖然とする。

「エース、お疲れ様です!」
「お、おう」

ニコニコと駆け寄ってきたアケビに、少し挙動不審になってしまった。首をかしげる彼女を安心させるよう、ポン、と頭を撫でる。昨日までと違う触り心地に、やはり戸惑う。

「どうかしました?」
「いや……なんでもねぇ」

俺が歩き出せば、アケビはその後ろをついてくる。それとなく手をアケビの方へ寄越せば、嬉しそうに飛び付いてくる。いつもその反応が嬉しいけど、恥ずかしくて顔は見れなかったりする。二人きりの帰り道はまだ慣れない。しばらく無言で歩いていると、アケビがなにか言いたそうなのが分かった。

「どうした?」
「えっと、その……可愛くなかったですか」

消え入りそうな声で、そう呟く。もしかしなくても、髪型についてだろう。不安そうにこちらを見つめるアケビは、間違いなく可愛かった。普段そんなこと気にしない彼女だから、尚更。けれど、昨日までの真っ直ぐな髪のが……俺は好きだったりする。どう伝えれば、彼女を傷つけないで済むだろうか。

「エースとおそろいだと思って、嬉しかったのですが」
「……は? 俺とお揃い?」

呆気に取られていると、アケビが背伸びをして俺の髪に触れた。指がかするように耳に触れて熱くなる。

「髪の毛、ナミさん達に巻いてもらって……エースの髪とおそろいだなぁ、と思って嬉しかったんです」
「…………俺の髪は癖っ毛ってやつだろお」

照れ臭くなって、顔をそらした。どうしてこう、この子は純真で真っ直ぐなのか。たまに眩しすぎて、胸が辛くなるほどだ。

「エースの癖っ毛、私は好きです」
「……俺も、アケビの真っ直ぐな髪が好きなんだよ」
「!! じゃあ、」
「けど! アケビはどんな格好してても可愛いからな!」

綺麗にまとめたであろう髪を、ぐしゃぐしゃと掻き回してしまうような男ですまない。そう心の中で謝る。それでも、嬉しそうに俺を見上げるアケビに、敵う日なんて来ないんだろうと思った。
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