刀鍛冶の少女
目を覚ますと、アケビはもうベッドにはいなかった。大きくひとつあくびをして、俺は寝ぼけた頭を掻きながら起床した。窓から入る日差しが眩しい。どうやら気候は安定しているようだ。ベッドから抜け出し、寝癖もそのままに気の赴くまま、食堂へ向かう。昨日は食べ損ねたが、今日はしっかり食おう。そう思い席についたのだが。
(……アケビ、どこ行ったかな)
食べながら落ちつきなくキョロキョロとしてしまう。アケビは食堂にはいなかった。船にはいるんだろうが、なにせモビーディック号は広い。アケビがどこに行ったかなんて検討はつかなかった。親を見失った幼子のように、置いていかれた寂しさを覚える。
「なーに考えてんだ?」
「!! ……デュース」
によによと面白くない笑みを張り付けたデュース。デュースは俺の隣に座り、脇腹を小突いてきた。
「なんだよ、なんでもねえよ」
「アケビがどこにいるか探してんだろー?」
「!!」
図星を突かれ、俺の体温は上がる。ただ無言でじとーっと睨めば、またデュースは笑みを深くした。面白くねぇ。俺は頭の後ろで手を組みふんぞり返った。
「だったらなんだよ」
「どこにいるか、俺は知ってるぞ。教えてやろうか」
「……おう」
気恥ずかしくて、返事は短くなった。どーしようかなあ、なんて言うデュースの脇腹を、今度は俺が小突く。
「いてて、しょーがねえな。デュース様が教えてやるよ」
「いいからさっさと教えろ」
先を急かせば、また笑われた。もう一度小突こうとすれば、堪忍したように両手を挙げる。そうして、俺に耳打ちしてきた。
デュースが言うには、アケビは刀鍛冶の仕事を船大工達の工房を借りてやっているらしい。朝から籠りっぱなしだそうだ。俺はもう昼時だし、そろそろ終わるだろうと思って工房に向かった。船大工達にもからかわれ、俺は数回照れから怒鳴ってしまった。そんな喧騒、聞こえていないかのように、アケビは奥で刀剣を研いでいた。俺が真っ正面に座り込んでも、反応はなしだ。
「……アケビ?」
「…………。」
「おーい、アケビちゃーん?」
「…………わっ! ビックリした! エースいつからいたんですか?」
顔を上げてくれたのは一瞬で、俺の返事を待つことなくアケビはまた刀剣に目を落とした。なんだろうか、モヤモヤとする。それを悟られないように、俺はアケビに声をかける。
「さっきからいたぜ。それ、まだ終わらねえのか?」
「終わらないです」
「……なんか、手伝うこととか」
「ありません」
キッパリとそう言われ、情けなくも胸がズクっと痛む。そういえば、仕事中のアケビに直接声をかけるのは初めてかもしれない。いつもと違う雰囲気、ピリッとした空気を纏うアケビ。俺はそのオーラに呑まれ、いつしか息を飲んで作業を見つめた。刀剣を研ぐ音だけが耳に届く。それは、アケビと一緒に笑っている時とはまた違う心地よさだった。
「エース、」
「わ、えっと。なんだ?」
アケビが急に口を開くので、驚いて顔を上げる。バチっとあった視線に、心臓がひっくり返った。アケビはモゴモゴと口ごもると、
「恥ずかしいので、あっち行っててください!」
と、出口の方を指差した。
「ほら、早く!」
「わ、悪い」
言われるがまま、工房の外に出る。外に出て、俺はその場にしゃがみこんで頭を抱えた。
(今のは本当に邪魔だったのか……それとも、俺だから照れたのか?)
少し頬を染めたアケビの表情が頭にこびりつく。脈があるのかないのか、アケビは何を考えているのか。今日も分からなくて俺の心は掻き乱される。それを問い詰めることは出来そうにないが、俺はアケビが出て来るまで工房の近くで待つことにした。
(……アケビ、どこ行ったかな)
食べながら落ちつきなくキョロキョロとしてしまう。アケビは食堂にはいなかった。船にはいるんだろうが、なにせモビーディック号は広い。アケビがどこに行ったかなんて検討はつかなかった。親を見失った幼子のように、置いていかれた寂しさを覚える。
「なーに考えてんだ?」
「!! ……デュース」
によによと面白くない笑みを張り付けたデュース。デュースは俺の隣に座り、脇腹を小突いてきた。
「なんだよ、なんでもねえよ」
「アケビがどこにいるか探してんだろー?」
「!!」
図星を突かれ、俺の体温は上がる。ただ無言でじとーっと睨めば、またデュースは笑みを深くした。面白くねぇ。俺は頭の後ろで手を組みふんぞり返った。
「だったらなんだよ」
「どこにいるか、俺は知ってるぞ。教えてやろうか」
「……おう」
気恥ずかしくて、返事は短くなった。どーしようかなあ、なんて言うデュースの脇腹を、今度は俺が小突く。
「いてて、しょーがねえな。デュース様が教えてやるよ」
「いいからさっさと教えろ」
先を急かせば、また笑われた。もう一度小突こうとすれば、堪忍したように両手を挙げる。そうして、俺に耳打ちしてきた。
デュースが言うには、アケビは刀鍛冶の仕事を船大工達の工房を借りてやっているらしい。朝から籠りっぱなしだそうだ。俺はもう昼時だし、そろそろ終わるだろうと思って工房に向かった。船大工達にもからかわれ、俺は数回照れから怒鳴ってしまった。そんな喧騒、聞こえていないかのように、アケビは奥で刀剣を研いでいた。俺が真っ正面に座り込んでも、反応はなしだ。
「……アケビ?」
「…………。」
「おーい、アケビちゃーん?」
「…………わっ! ビックリした! エースいつからいたんですか?」
顔を上げてくれたのは一瞬で、俺の返事を待つことなくアケビはまた刀剣に目を落とした。なんだろうか、モヤモヤとする。それを悟られないように、俺はアケビに声をかける。
「さっきからいたぜ。それ、まだ終わらねえのか?」
「終わらないです」
「……なんか、手伝うこととか」
「ありません」
キッパリとそう言われ、情けなくも胸がズクっと痛む。そういえば、仕事中のアケビに直接声をかけるのは初めてかもしれない。いつもと違う雰囲気、ピリッとした空気を纏うアケビ。俺はそのオーラに呑まれ、いつしか息を飲んで作業を見つめた。刀剣を研ぐ音だけが耳に届く。それは、アケビと一緒に笑っている時とはまた違う心地よさだった。
「エース、」
「わ、えっと。なんだ?」
アケビが急に口を開くので、驚いて顔を上げる。バチっとあった視線に、心臓がひっくり返った。アケビはモゴモゴと口ごもると、
「恥ずかしいので、あっち行っててください!」
と、出口の方を指差した。
「ほら、早く!」
「わ、悪い」
言われるがまま、工房の外に出る。外に出て、俺はその場にしゃがみこんで頭を抱えた。
(今のは本当に邪魔だったのか……それとも、俺だから照れたのか?)
少し頬を染めたアケビの表情が頭にこびりつく。脈があるのかないのか、アケビは何を考えているのか。今日も分からなくて俺の心は掻き乱される。それを問い詰めることは出来そうにないが、俺はアケビが出て来るまで工房の近くで待つことにした。
