刀鍛冶の少女

 日が暮れて夕食の前になるまで、私はエースの腕の中にいた。日だまりのような暖かさに、気がつけばうたた寝をしていたようだ。エースに起こされて日没を知った。

「アケビはよく寝る子だな」
「うー……ん、よく育ちます、から」
「なんだそりゃ」

寝ぼけてしまったようで、エースに笑われた。その笑顔も温かい。目が覚めたのに、私は夢見心地のようにふわふわとしていた。エースの胸に頬を寄せれば、ドッドッと力強い心音。男と女でこんなに違うものなのか、と私は興味深くなって耳を澄ませた。

「アケビ? なにしてんだ?」
「エースの心音聞いてます」
「ばっ……やめろ! やめてくれ……!」

ベリッっと私を引き離すと、エースはそっぽを向いてしまう。そんなに可笑しなことをしただろうか? ただ、エースがとても気まずそうに顔を赤くするので、

「ごめんなさい、興味深くて」

と、素直に謝った。今度はじとーっとした目でエースに見つめられてしまう。困るやら、なんだかこそばゆいやらで、今度は私が視線をそらした。はあ、とエースのため息が聞こえる。

「……エース? 怒った?」
「怒るわけねえだろ。俺には、アケビがなに考えてるのか分かんねえだけ」

わしゃわしゃと頭を撫でられ、心地よさに目を閉じる。私にも、エースが何を考えてるのかなんて分からないけどな。それでもいいし、気にもしない。エースがエースでいてくれるなら、それでいいな、と思う。そう伝えようとしたら、くしゃみが出た。

「くしゅっ、くしゅん!」
「……ああ、随分長いこと埃っぽい場所にいさせちまったな。悪かった」

エースに手を引かれ、薄暗い倉庫から抜け出す。その手をずっと、握っていたいと思った。

 また朝のように食堂に向かう途中、大柄な黒ひげの男性とすれ違った。

「よぅ、エース隊長じゃねえか。今までどこ行ってたんだぁ?」
「うっせー、放っとけ」

エースと軽く挨拶を交わすと、私の横をすり抜けていく。その時に一瞬、目があった。ぞわ、と背筋を寒気が走る。

「……!?」
「アケビ、どうした?」

不思議そうなエースに、自分でもどう答えたものかと戸惑う。ただ、直感的にあの人は関わってはいけない人だと、自分が恐怖したようだった。

「……大丈夫、なんでもないです」

エースの仲間が意味もなく怖いだなんて、失礼だと思い普通を装った。少し震える身体を誤魔化すように、エースの腕に抱きついて歩いた。
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