刀鍛冶の少女
やっちまった。つい、その、出来心というか。堪えきれなかった。だって、あんなタイミングでギュッと目をつぶるから……! いや、アケビのせいにしちゃダメだ。俺だ、俺が全面的に悪い。アケビの気持ちも無視して、あんなことするなんて最低だ、男として。俺は酷い罪悪感に飲まれながら部屋を出た。勿論、アケビと顔なんて合わせられない。アケビは全然気付いていないみたいで、無邪気に朝ご飯はなんでしょう、なんて聞いてくる。可愛い。じゃなくて。
「……エース?」
「いや、えっと。とりあえず、食堂行こうぜ」
先導を装い、アケビに背を向ける。ひょこひょこと着いてくる気配がする。あーもう、走りてぇ。走ってアケビから逃げ出したい。けど、逃げて隠れたら今度は、きっと見つけて欲しいとか思っちまう。俺の心は、どんどん欲張りになってる。はぁ、と小さくため息を吐いて、食堂に入った。すると、他の船員がにまにまとこちらを見る。やめろ。
「エース、青春だな?」
そんな声をかけてきたサッチを思わず蹴り飛ばした。
「いってぇなぁ! 蹴ることねぇーじゃんよ。なぁ、アケビちゃーん」
「えと、状況がよく読めないです……」
「だからさー、いてててて!」
余計な事を言われる前に、サッチの頬をギリギリと摘まんでやった。アケビの顔が曇る。
「エース、イジメはよくないです」
「……そうだな。悪りぃ」
サッチをパッと離すと、なおも懲りずににまにま笑っている。
「ま、仲良くやんな! 俺は楽しみながら見てるぜ!」
「見んな!」
「???」
俺はアケビの手を引いて、さっさと飯をもらい、席に座った。その間も、まともに顔は見れない。黙々と食べ始めた俺の横で、いただきますを忘れずにアケビは食事を摂った。ちら、と横目に見れば、本当に美味しそうにパンを頬張っている。その笑顔が眩しい。俺は思わず見惚れて食事の手を止めた。
「! エース、どうしたの?」
急に俺の視線に気付いて、こちらを見るアケビとバッチリ目が合う。その瞬間、身体に稲妻が走ったような感覚に陥った。くそ。アケビの顔の周りパンくずだらけなのに、なんでこんなに可愛くてしょうがないのか。固まったままの俺の、反応をじっと待つアケビ。
「エース? 具合悪い?」
「……まぁ、ある意味」
「えぇ!! 大変です、すぐナースさんを」
「待て待て! いい、やめてくれ元気だから」
すぐに立ち上がったアケビの腕を、慌てて思い切り引っ張ってしまった。その反動で、アケビが俺に背中から倒れこんでくる。ふわっと香るいい匂いに、頭がクラクラする。
「わっ! エース、びっくりしました!」
「悪りぃ……」
「うーん。朝、部屋を出てからエースの様子が変です。どうしたんですか?」
「……アケビが、」
「私?」
好き過ぎて困ってるなんて、こんなとこで言えるわけねぇ。それに、俺の一方的な熱烈片想いだ。伝えたって、アケビが困るだけ。……そう思ったら、急に心が冷え込んで。力なくアケビの腕を離した。
「エース、言わなくちゃ分からないです」
「……朝、言ったろ」
「えと、おはよう?」
「それじゃねぇ、バカ」
アケビのバカ。なんて。こんなの女の子が言うセリフじゃねえか。かっこ悪りぃな、俺。手で顔を隠し、うつむいた俺を、アケビは心配そうに見つめる。それすら嬉しいなんて、歪んでる。息が苦しくて、ぐちゃぐちゃの感情が、好きという事実だけ伝え続ける。もう、楽しいのか辛いのか分からない。恋がこんなにしんどいなんて、思ってもみなかった。
「エース、私のこと、嫌いになりましたか……?」
「!! そんなこと、あるわけねぇ……!!」
「じゃあ、なんで」
今にも泣きそうなアケビの顔に、俺まで涙が出そうになる。やめろ、やめてくれ。これ以上、かっこ悪いとこアケビに見せたら、俺。俺じゃいられなくなる。
「理由なんて、ねぇよ……」
そう誤魔化すのが精一杯だった。納得いかない、といった表情のアケビを置き去りにして、俺は食堂を出た。そうして、アケビに見つからないように船内を動き回った……なにやってんだ、俺は。
「……エース?」
「いや、えっと。とりあえず、食堂行こうぜ」
先導を装い、アケビに背を向ける。ひょこひょこと着いてくる気配がする。あーもう、走りてぇ。走ってアケビから逃げ出したい。けど、逃げて隠れたら今度は、きっと見つけて欲しいとか思っちまう。俺の心は、どんどん欲張りになってる。はぁ、と小さくため息を吐いて、食堂に入った。すると、他の船員がにまにまとこちらを見る。やめろ。
「エース、青春だな?」
そんな声をかけてきたサッチを思わず蹴り飛ばした。
「いってぇなぁ! 蹴ることねぇーじゃんよ。なぁ、アケビちゃーん」
「えと、状況がよく読めないです……」
「だからさー、いてててて!」
余計な事を言われる前に、サッチの頬をギリギリと摘まんでやった。アケビの顔が曇る。
「エース、イジメはよくないです」
「……そうだな。悪りぃ」
サッチをパッと離すと、なおも懲りずににまにま笑っている。
「ま、仲良くやんな! 俺は楽しみながら見てるぜ!」
「見んな!」
「???」
俺はアケビの手を引いて、さっさと飯をもらい、席に座った。その間も、まともに顔は見れない。黙々と食べ始めた俺の横で、いただきますを忘れずにアケビは食事を摂った。ちら、と横目に見れば、本当に美味しそうにパンを頬張っている。その笑顔が眩しい。俺は思わず見惚れて食事の手を止めた。
「! エース、どうしたの?」
急に俺の視線に気付いて、こちらを見るアケビとバッチリ目が合う。その瞬間、身体に稲妻が走ったような感覚に陥った。くそ。アケビの顔の周りパンくずだらけなのに、なんでこんなに可愛くてしょうがないのか。固まったままの俺の、反応をじっと待つアケビ。
「エース? 具合悪い?」
「……まぁ、ある意味」
「えぇ!! 大変です、すぐナースさんを」
「待て待て! いい、やめてくれ元気だから」
すぐに立ち上がったアケビの腕を、慌てて思い切り引っ張ってしまった。その反動で、アケビが俺に背中から倒れこんでくる。ふわっと香るいい匂いに、頭がクラクラする。
「わっ! エース、びっくりしました!」
「悪りぃ……」
「うーん。朝、部屋を出てからエースの様子が変です。どうしたんですか?」
「……アケビが、」
「私?」
好き過ぎて困ってるなんて、こんなとこで言えるわけねぇ。それに、俺の一方的な熱烈片想いだ。伝えたって、アケビが困るだけ。……そう思ったら、急に心が冷え込んで。力なくアケビの腕を離した。
「エース、言わなくちゃ分からないです」
「……朝、言ったろ」
「えと、おはよう?」
「それじゃねぇ、バカ」
アケビのバカ。なんて。こんなの女の子が言うセリフじゃねえか。かっこ悪りぃな、俺。手で顔を隠し、うつむいた俺を、アケビは心配そうに見つめる。それすら嬉しいなんて、歪んでる。息が苦しくて、ぐちゃぐちゃの感情が、好きという事実だけ伝え続ける。もう、楽しいのか辛いのか分からない。恋がこんなにしんどいなんて、思ってもみなかった。
「エース、私のこと、嫌いになりましたか……?」
「!! そんなこと、あるわけねぇ……!!」
「じゃあ、なんで」
今にも泣きそうなアケビの顔に、俺まで涙が出そうになる。やめろ、やめてくれ。これ以上、かっこ悪いとこアケビに見せたら、俺。俺じゃいられなくなる。
「理由なんて、ねぇよ……」
そう誤魔化すのが精一杯だった。納得いかない、といった表情のアケビを置き去りにして、俺は食堂を出た。そうして、アケビに見つからないように船内を動き回った……なにやってんだ、俺は。
