刀鍛冶の少女

お昼頃、二人はモビーディックに到着した。ストライカーを引き上げ、格納するとエースはアケビを白ひげのもとへ案内した。船に乗る以上、船長の許可は必要不可欠だからだ。アケビが来たことに関しては、船員は皆歓迎ムードだった。もうすでに宴の準備を始めている者もいる。そんな愉快な奴らをすり抜けて、アケビは真剣な顔で白ひげと対峙した。甲板で今日も酒をあおる船長の周りには、心配そうに、だが笑顔のナース達。

「グララララ……ようやく来たか、アケビ。待ちくたびれたぞ」
「?? 待たせた覚えはないのですが……」

至っていつも通り、緊張もしないアケビにエースは内心ヒヤヒヤとする。白ひげはアケビを見下ろし、こう言葉をかけた。

「俺の息子になる覚悟は出来たか?」
「?? え、嫌です。」

きっぱりと、はっきりアケビはそう答えた。その答えに、賑わっていた場が一気に凍りつく。白ひげは怒ることはなく、ただ驚いたようで目を丸くしていた。

「私の父親……親父は十代目鬼徹、ただ一人ですので」

アケビはまっすぐ前を見据え、ただそう伝えた。エースは止める言葉もかけられずに行く末を見守る。白ひげは立ち上がると、マルコが慌てた様子で若い衆を下がらせた。ブワッと場の空気が変わる。白ひげが覇王色の覇気を使ったのだ。逃げ遅れたまだ弱い者達は泡を吹いて倒れた。アケビは、変わらずに真っすぐ白ひげを見上げていた。

「俺のジョリーロジャーを背負わずに、この船に乗ると?」
「えっと……私はエースと遊びたくて来ただけなんですけど……ダメなんですか?」

あまりの空気の読めなさに、エースは弟を思い出した。アケビは首を傾げたまま、続ける。

「あ! 勿論お仕事はします、毎日刀を作って海賊団に献上します! 皆さんの武器のメンテも毎日やります! だから、」

アケビの言う言葉に、命乞いのような悲壮感はない。寧ろ、ワクワクと希望に満ち溢れた声に変わっていった。

「エースといっぱい、遊ばせてはくれないでしょうか?」
「…………グラララララ! そうか、それだけ働くなら乗せねえわけにはいかねえなぁ! しかしお前、……グララララ!」

白ひげは毒気を抜かれ、さぞ愉快というように笑い続けた。吊られて、団員達も笑い出す。エースだけは、顔を赤らめてアケビから顔を逸らした。

「アケビ、エースは好きか?」
「!! おい、親父、余計なこと聞くなよ!!」

慌てるエースを白ひげはにこやかにあしらう。その質問に、アケビはとびきりの笑顔を見せた。

「はい! 大好きです!」

その瞬間、エースはその場にしゃがみ込んで、しばらく顔を上げなかった。
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