刀鍛冶の少女
買い出しに行っていたら、エースと鉢合わせた。食い逃げをしたらしい。追ってきた店主には包丁を下ろしていたので、エースを止めて代金を肩代わりした。エースはさっきから、どことなく落ち着きがない。……私のこと、綺麗だなんて言うし。なんか、こそばゆくて調子狂うなぁ。そんなこと、誰にも言われたことないのに。後ろを歩くエースを振り向けば、私の頭よりだいぶ高い所にエースの顔がある。じっと見上げれば、エースは複雑な表情になった。
「ど、どうした? 前向いてねぇと危ねぇぞ。」
「……うん、そうだね」
なんだろう、この気持ち。エースといると、楽しくて仕方ないのに、たまにむずむずと居ても立っても居られなくなる。なんとなくエースから距離を置きたくて早足になるが、エースの足は長いから意味なんてなかった。
「おいおい、やけに早足だな? 急いでんのか?」
「……だって、エースといるとむずむずするんだもん」
「むずむず?」
エースは不安そうな、けど何か期待もしている様な、そんな表情をする。私は、今どんな表情をしているだろうか。
「エース、私今どんな表情してる?」
「…………可愛い顔」
エースがぼそっとそんなことを言うので、私は今度こそパニックになって走り出した。
「あ! おい、待ってって!」
エースの言葉も振り切って、家まで全力疾走した。
家に帰ると、私が呼吸を荒げているので皆に驚かれた。しかし、その後からエースが現れたら、皆が納得した様に笑みを浮かべながら職場へ戻って行った。なんだと言うんだ。
「おい、アケビ……」
「エースは私の部屋で待っててください! 私これからご飯作るので!」
ぶっきらぼうにそう伝えて、私は厨房に入った。入る前にちらとエースを見れば、少ししょげながらもどことなく嬉しそうにしているので、やっぱりエースの気持ちは読めなかった。……さっきから私は何を気にしているんだろう。私の気持ちも、エースの気持ちもよく分からない。人の気持ちを知りたいと思ったのは、生まれて初めてな気がする。だって、私は刀鍛冶だ。刀剣の気持ちだけ考えていればいい。
「痛っ」
ほら、やっぱり。私の迷いが包丁に伝わったのか、私は久々に刃物で指を切った。大した傷じゃないので、水で血を洗い流し絆創膏を貼る。ダメだ、料理に集中しなくちゃ。私は野菜や肉を切りながら、料理の完成をイメージした。そうして浮かんできたのは、私の料理を美味しそうに食べるエースの顔で。私の手はまた止まる。
(ダメダメダメ! 今エースの事考えたら!)
なんだか熱っぽくなってきた。火もまだ使ってないのに。具合悪いのかな、私。結局頭の片隅にエースの顔がチラついて、どことなくぼんやりしながら料理を完成させた。
「「いただきまーす!!」」
食事の時間は決まって18時。刀派の皆で一斉に食事を摂る。どうしても手が離せない者には作り置くが。エースは私の隣に座った。いつもここで夕飯を食べる時はそうだからだ。私は何故か箸を運ぶエースを見つめていた。今だに身体が熱い。いつもよりも速いペースでがっつくエースは、一通りおかずを食べると、
「うっめええ!!」
と叫んだ。私はほっとして自分の食事を始める。
「美味え! 美味えよ! これ全部アケビが作ったのか!?」
「全部じゃないですけど、これとそれは作りました」
「マジか!! 特に美味え!!」
そうやって褒められると、胸がポカポカと暖かくなる気がした。作ってよかった。私は嬉しくて笑みをこぼしたのだが。
「アケビはいい嫁さんになるな!」
その一言でまた身体がのぼせ上がる。嫁さん!? 誰の!?
「よ、嫁になんか行かないです!!」
「えっ!? あっ、ちが、違くて!! 今のは、その」
お互い言葉にならない言葉を並べて、最後は無言で食事を終えた。
「ど、どうした? 前向いてねぇと危ねぇぞ。」
「……うん、そうだね」
なんだろう、この気持ち。エースといると、楽しくて仕方ないのに、たまにむずむずと居ても立っても居られなくなる。なんとなくエースから距離を置きたくて早足になるが、エースの足は長いから意味なんてなかった。
「おいおい、やけに早足だな? 急いでんのか?」
「……だって、エースといるとむずむずするんだもん」
「むずむず?」
エースは不安そうな、けど何か期待もしている様な、そんな表情をする。私は、今どんな表情をしているだろうか。
「エース、私今どんな表情してる?」
「…………可愛い顔」
エースがぼそっとそんなことを言うので、私は今度こそパニックになって走り出した。
「あ! おい、待ってって!」
エースの言葉も振り切って、家まで全力疾走した。
家に帰ると、私が呼吸を荒げているので皆に驚かれた。しかし、その後からエースが現れたら、皆が納得した様に笑みを浮かべながら職場へ戻って行った。なんだと言うんだ。
「おい、アケビ……」
「エースは私の部屋で待っててください! 私これからご飯作るので!」
ぶっきらぼうにそう伝えて、私は厨房に入った。入る前にちらとエースを見れば、少ししょげながらもどことなく嬉しそうにしているので、やっぱりエースの気持ちは読めなかった。……さっきから私は何を気にしているんだろう。私の気持ちも、エースの気持ちもよく分からない。人の気持ちを知りたいと思ったのは、生まれて初めてな気がする。だって、私は刀鍛冶だ。刀剣の気持ちだけ考えていればいい。
「痛っ」
ほら、やっぱり。私の迷いが包丁に伝わったのか、私は久々に刃物で指を切った。大した傷じゃないので、水で血を洗い流し絆創膏を貼る。ダメだ、料理に集中しなくちゃ。私は野菜や肉を切りながら、料理の完成をイメージした。そうして浮かんできたのは、私の料理を美味しそうに食べるエースの顔で。私の手はまた止まる。
(ダメダメダメ! 今エースの事考えたら!)
なんだか熱っぽくなってきた。火もまだ使ってないのに。具合悪いのかな、私。結局頭の片隅にエースの顔がチラついて、どことなくぼんやりしながら料理を完成させた。
「「いただきまーす!!」」
食事の時間は決まって18時。刀派の皆で一斉に食事を摂る。どうしても手が離せない者には作り置くが。エースは私の隣に座った。いつもここで夕飯を食べる時はそうだからだ。私は何故か箸を運ぶエースを見つめていた。今だに身体が熱い。いつもよりも速いペースでがっつくエースは、一通りおかずを食べると、
「うっめええ!!」
と叫んだ。私はほっとして自分の食事を始める。
「美味え! 美味えよ! これ全部アケビが作ったのか!?」
「全部じゃないですけど、これとそれは作りました」
「マジか!! 特に美味え!!」
そうやって褒められると、胸がポカポカと暖かくなる気がした。作ってよかった。私は嬉しくて笑みをこぼしたのだが。
「アケビはいい嫁さんになるな!」
その一言でまた身体がのぼせ上がる。嫁さん!? 誰の!?
「よ、嫁になんか行かないです!!」
「えっ!? あっ、ちが、違くて!! 今のは、その」
お互い言葉にならない言葉を並べて、最後は無言で食事を終えた。
