刀鍛冶の少女

ここは新世界。白ひげのナワバリの一つ、バーニングエイト。ここには炎を扱う職人が揃う。ガラス職人、陶磁器職人、そして私達刀鍛冶の一派。刀鍛冶の職人をまとめるのは、ワノ国からの脱国者、十代目鬼徹。私は棟梁である十代目に拾われた捨て子。女の出入りのない刀鍛冶の世界だが、「子供の一人育てられずして刀を打てるのか? この娘は新しい風を起こすかもしれない」と、棟梁は私を刀鍛冶として育てた。三つ上の兄弟子は私を邪険にするが、私は名高い刀工に技を習い、愛されて育ってきた。
バーニングエイトには、海賊、海軍、世界政府と、身分を超えて皆がより良き刀を求めてやって来る。私達には誰でも等しくお客様だ。どんな相手でも金を出せば(あるいは棟梁に気に入られれば)、最高の刀を手に入れられる。また、名刀には年季の入ったものも多いから、それなりの手入れが必要だ。世界中の剣士達が、上質な手入れを相棒に施しにもくる。
少し話が長くなった。ともかく、私はこのバーニングエイトに育ち、刀鍛冶として15歳まで生きてきた。こうしてここで刀が打てるのは、白ひげ海賊団がここをナワバリにしているからである。彼らの武器の手入れも、頻繁に行っている。それから、宴会も。

「「俺の息子達に乾杯!!」」

棟梁と白ひげさんが酒樽を合わせると、皆が酒を掲げて宴が始まる。私はジュースを片手に、白ひげ海賊団の皆さんにご挨拶しながらお酌に回る。五番隊のビスタ隊長や十二番隊長のハルタ隊長などの剣の調子を聞いたり、四番隊のサッチ隊長の冗談を聞いたり。そうこうしてると。

「アケビ、ちょっとこっちで話そうぜ」

エースが笑顔で手招きをしている。最近、私はこの人の傍にいることが多いように思う。彼は私より三つ年上だが、老練なお客様の多いここでは、唯一気兼ねなく話せるような仲だ。彼の傍らに腰を下ろすと、上機嫌で航海の話や故郷の弟さんの話をする。話の途中、急に眠ってしまうこともあるが、私は彼の傍を離れる気にはならない。彼の纏う雰囲気に包まれるのが好きなのだ。

「……はっ! いけね、寝てた!」
「寝てましたね」
「んだよ、起こしてくれてもいーだろ」
「起こしてもまた寝ますよ」

ふふふ、と笑えば、頭を掻きながらそーかぁ? と照れ臭そうに笑う。この笑いが重なる瞬間が好きだ。

「アケビよぉ、そろそろうちの船に来ねぇか?」
「私は刀工ですし……まだここで学ばなければならないことがあるので」
「じゃ、学び終わったらうちに来い! どうだ?」

悩みながら微笑みかければ、にっと笑い返されて。

「誰よりも自由で! 海はいいぞ、航海は最高だ。見たこともねぇようなもんが次から次へと出てくる!」
「…………!」
「キョーミあるだろ? 俺と自由に生きてみねぇか?」

興味がないと言えば嘘になる。ここに自由があると言っても嘘になる。閉ざされた空間で、毎日同じ兄弟子達と刀を打つ日々。退屈、ではないけれど。目の前の輝かしい人を前にすると、その誘いにワクワクする自分がいた。

「…………いつかきっと。エースと旅がしてみたいです」
「いつかじゃなくて、今、だよ」
「まだ私にはここでやるべきことがあるので」
「……ふーん。大事なことか?」
「大事なことですね。私が生まれた意味を考えることですから」
「……そっか」
「けど、必ずいつか。」

貴方と一緒に海の果てまで。そう言ったことは嘘でもなんでもなかったんです。

「おう! 絶対だな? 約束だ!」

これは、私の生涯で唯一の友達との話。
1/27ページ
スキ