毎夜、花と宝石は手を繋ぐ
ブラックサファイアは仕事を終えて、人が見つけることの叶わぬ天空の雲の城に転送された。書棚がずらっと並んだ屋内、シャンデリアなどの過度な装飾はなく、ただ荘厳に佇む。アイボリーだけで区切られた空間。天井は見晴らすように高く高く、ひとつだけ空いた窓から一筋、太陽の光が差し込んでいる。ブラックサファイアが広間に足を踏み込むと、待ち構えていた2人が頭を下げる。1人はバイオレットの色が美しいチャロアイト、1人は淡いピンク色をしたロードナイト。ブラックサファイアも頭を下げ、遅くなったと口を開いた。
「激戦だったの?」
「いや、数が多かっただけだ」
チャロアイトの質問に答える。今日の夜を乗り越えたら、次の夜とその次の夜の担当とだけ、情報交換が出来る。彼らは人間の祈りを聞き届けるために存在しており、誕生日石と認定されてる者がその夜の守り人となる。人の祈りがあやふやなせいで、誕生日石によっては毎年違う者が呼び出されたりする。そのため、彼らの連帯感は希薄だ。誕生日花は毎年咲いては朽ちているので、余計にそうである。それでもそんな希薄であるなかで、なんとか役目をまっとうしようと、彼らは真面目に勤めをこなした。
「22日の夜は、ピエロの顔した風船型のワルプルギスだった」
「2日連続で全く違かったんだね、それもそうか」
今夜出陣するチャロアイトは、発言しながらも呑気にあくびをする。ロードナイトは、気恥ずかしそうに下を向いたり視線が泳いだり。
「俺と組んでくれたのはセンニチコウだった。まだ、花は咲いている」
はっきりとした声で、ブラックサファイアが断言する。ブラックサファイアの声は、重厚感があり広間にぐわんと響いた。花が咲かなくなったら。それは地球の終わりが近づいたというサイン。まだ、花は宝石と手を繋いでいる。
「今夜はなにが咲くのかな。僕、あえては調べない」
「なんで、不安じゃないの?」
ロードナイトは不安を流し込むような視線でチャロアイトを見る。チャロアイトは跳ね返すように笑った。
「誰と組んでも勝たないとだし。誰も来なかったらそれだけで気が滅入るでしょ。それに、花を比べて優劣をつけたくないんだ」
花にも宝石にも、どうしたって強さに差がある。ここの書棚に登録された宝石や花のデータは見れるようになっているが、チャロアイトは見ないという。
「宝石も、花も。在るだけで美しいでしょう?」
チャロアイトの言葉が、ロードナイトに灯って勇気に変わる。ブラックサファイアは天井を見上げる。太陽が動いて、広間に差す光が、斜めってきている。
「そろそろ時間だ。チャロアイトにロードナイト、あとのことは任せたぞ」
「うん、また会える日までさよなら」
「ありがとうございました」
挨拶と共に、チャロアイトとロードナイトが蜃気楼のように揺れて、姿を消す。雲の城には存在している。が、違うレイヤーに存在を移されたので、ブラックサファイアには認知出来なくなった。
(さて、書棚を漁って勉強するか)
ブラックサファイアは仕事熱心で勉強家だった。一夜を救って彼らが得られる休息は、3日間だ。雲の城にそよ風が通る。夜に争い続けているなど、信じられないくらい穏やかな風が。
「激戦だったの?」
「いや、数が多かっただけだ」
チャロアイトの質問に答える。今日の夜を乗り越えたら、次の夜とその次の夜の担当とだけ、情報交換が出来る。彼らは人間の祈りを聞き届けるために存在しており、誕生日石と認定されてる者がその夜の守り人となる。人の祈りがあやふやなせいで、誕生日石によっては毎年違う者が呼び出されたりする。そのため、彼らの連帯感は希薄だ。誕生日花は毎年咲いては朽ちているので、余計にそうである。それでもそんな希薄であるなかで、なんとか役目をまっとうしようと、彼らは真面目に勤めをこなした。
「22日の夜は、ピエロの顔した風船型のワルプルギスだった」
「2日連続で全く違かったんだね、それもそうか」
今夜出陣するチャロアイトは、発言しながらも呑気にあくびをする。ロードナイトは、気恥ずかしそうに下を向いたり視線が泳いだり。
「俺と組んでくれたのはセンニチコウだった。まだ、花は咲いている」
はっきりとした声で、ブラックサファイアが断言する。ブラックサファイアの声は、重厚感があり広間にぐわんと響いた。花が咲かなくなったら。それは地球の終わりが近づいたというサイン。まだ、花は宝石と手を繋いでいる。
「今夜はなにが咲くのかな。僕、あえては調べない」
「なんで、不安じゃないの?」
ロードナイトは不安を流し込むような視線でチャロアイトを見る。チャロアイトは跳ね返すように笑った。
「誰と組んでも勝たないとだし。誰も来なかったらそれだけで気が滅入るでしょ。それに、花を比べて優劣をつけたくないんだ」
花にも宝石にも、どうしたって強さに差がある。ここの書棚に登録された宝石や花のデータは見れるようになっているが、チャロアイトは見ないという。
「宝石も、花も。在るだけで美しいでしょう?」
チャロアイトの言葉が、ロードナイトに灯って勇気に変わる。ブラックサファイアは天井を見上げる。太陽が動いて、広間に差す光が、斜めってきている。
「そろそろ時間だ。チャロアイトにロードナイト、あとのことは任せたぞ」
「うん、また会える日までさよなら」
「ありがとうございました」
挨拶と共に、チャロアイトとロードナイトが蜃気楼のように揺れて、姿を消す。雲の城には存在している。が、違うレイヤーに存在を移されたので、ブラックサファイアには認知出来なくなった。
(さて、書棚を漁って勉強するか)
ブラックサファイアは仕事熱心で勉強家だった。一夜を救って彼らが得られる休息は、3日間だ。雲の城にそよ風が通る。夜に争い続けているなど、信じられないくらい穏やかな風が。
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