longseries-2-
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ボーダーに入隊して、3日経った。今日は合同訓練があるので、本部に来ている。地形踏破訓練は全くダメだった。これは練習が必要だ。隠密行動訓練はまずまず。とは言っても、満点からは程遠いのだが。一通り訓練を終えて、加点されたのは40点程度。B級への道のりは長い。
「個人ランク戦でも、点稼げるって言ってたよね」
独り言を呟き、私は更なる点を求めて個人ランク戦のブースを目指すことにした。広いボーダー本部内を、1人で歩き回る。うん、迷った。全然知らない場所にいる。
「あれ、珠莉ちゃんじゃん。こんなとこでなにしてるの?」
「あ、えっと犬飼くん」
ばったり犬飼くんと出会す。犬飼くんとは、哲次に紹介されて何回か会ったことがある。明るくて、友達多そうだなぁという印象。人間関係、私と違って器用そうだ。
「個人ランク戦のブースに行きたくて」
「ランク戦ブース!? ここから真反対だよ?」
「えっそうなの」
犬飼くんは笑うのを隠すことはせず。
「あはは、珠莉ちゃんもしかして方向音痴?」
「うーんたまに」
「たまに! たまにね!」
犬飼くんはなにかツボったらしく、しばらく笑っていた。なにが可笑しいんだろう。
「あの……」
「あーごめんごめん。ランク戦ブースね。連れてったげる」
「おい、犬飼。そいつは?」
犬飼くんの言葉尻に被せるようにして、後ろから声がかかる。視線を移せば、背の高いクールな顔立ちの男の人と、バチッと目があった。反射的にお辞儀をする。
「あ、二宮さん。この子ですよ、荒船の従姉妹。18歳で入隊してきて、トリオン強い子」
「こいつが……」
二宮さん、はどうやら私のことを知っているらしい。なんで? と疑問に思うが、初対面なのには変わりがないので、挨拶をしようと思った。
「設楽珠莉と言います。この前入隊しました。分からないことだらけなので、いろいろ教えてもらえたら嬉しいです。よろしくお願いします!」
深々と頭を下げた。なにも言葉が降ってこないので、少し不安になり顔を上げる。そうすると、一呼吸置いて
「……二宮隊の二宮だ」
と一言だけ言われた。すごくマイペースで独特な間を持った人だな、と思った。妙な緊張感が走る。
「具体的に何が分からないの? 珠莉ちゃん」
それを感じてか、犬飼くんが間に入ってくれた。
「具体的に? えっと、何から始めたらいいかも分からないくらいなんだけど……射手の理論というか、動き方が知りたい」
本当に右も左も分からないのだが、まず射手の理論を知りたいと言ったのは、哲次が知りたがるだろうなぁとぼんやりと思ったからだ。
「へぇ…………」
犬飼くんが意味ありげに二宮さんを見る。二宮さんの表情は変わらないが、急に
「設楽、このあと時間はあるか?」
と訊かれた。私は不意をつかれて瞬きを数度した。
「あ、はい! 大丈夫ですけど」
「なら、うちの訓練室に来い」
また瞬きを数度。私はどこへ連れて行かれるのだろうか。不安になって、思わず犬飼くんを見る。犬飼くんは、少し呆れたような表情で
「うん、大丈夫だよ。というか、行った方がいい。うちの隊長は腕利きの射手だからさ」
と、私の背中を押した。そうか、二宮さんも射手なのか。それなら、いろいろ教わることが多いだろう。既に歩き出そうとしている背中に声をかける。
「あの、二宮さん!」
「!」
「射手のこと、たくさん教えてください! よろしくお願いします!」
それを聞いて、二宮さんは初めて、ほんの少し笑った。
本部のどこをどう歩いたかは、全く分からなくなってしまったが。私は二宮さんと犬飼くんについていき、二宮隊の作戦室まで来た。中は驚くほど綺麗に整理整頓されていて、すっきりとしていた。男の子がテーブルでなにか飲み物を飲んで休憩していて、奥の部屋からはパソコンのキーボードを叩く音が響いている。テーブルの男の子が、私に気づいた。すると、こちらがびっくりするくらいに彼は動揺した。
「えっちょ、誰!? えっ!?」
飲んでいたコーヒーをひっくり返してしまって、テーブルはびちょびちょだ。私もどうしたらいいのか分からなくて固まっていると、犬飼くんがあーあーと言いながらふきんを持ってくる。
「辻ちゃん、しっかりしてよー」
「す、すみません、でも。女子……」
「設楽珠莉ちゃんね。荒船の従姉妹」
「あ、設楽珠莉です。その、大丈夫?」
恐る恐る声をかけると、男の子はおどおどとする。
「ぁ、はぃ……辻、新之助です……」
辻くんは蛇に睨まれたカエルのようで、こちらが申し訳なくなってくる。どうしようか悩んでいると、二宮さんに声をかけられた。
「辻は放っておいていい。こっちだ」
「あ、はい」
「氷見、訓練室を使う」
「分かりました」
部屋の奥に進むとモニターがあり、そこで女の子が作業をしていた。目が合ったので、会釈をする。二宮さんの後ろをついていき、訓練室に入る。だだっ広い空間に、いくつか的が出ていた。
「とりあえず、あの的を撃ってみろ」
20m先の的を指差される。私はトリオンキューブを出し、8分割にして的を狙う。8個中、6個が的に当たる。
「よし。……設楽、トリガーはなにを選んでる?」
「え、アステロイドです」
「ハウンドに変えろ。お前のトリオンならそれでも充分な威力になるし、戦略も広がる」
「はい、分かりました!……えっと」
「?」
「ハウンドって、どんなトリガーですか?」
「ハウンドは……」
二宮さんは言葉数が少なく、端的な表現しかしないが、それでも熱心に私を指導してくれた。突然のレッスンだったが、1時間半は訓練室に2人でいた。
「……今日はこの辺にしておくか」
「はい、ありがとうございました」
お辞儀をすると、頭に重みがあった。びっくりして頭を抑えると、同じように驚いた顔の二宮さんと目が合う。どうやら、二宮さんが私の頭を撫でたらしい。
「えっと……」
「いや、悪い。つい。……出るか」
訓練室を出ると、辻くんと犬飼くんはもういなくなっていて。女の子だけ、まだ作業をしていた。
「お疲れ様です」
「あ、ありがとうございます……お邪魔しました」
また一礼をして、出口に向かう。思うところがあって、出るのを躊躇した。
「? どうした」
「えっと、また教わりに来てもいいですか?」
今日教わったことを、100%理解するのには時間がかかりそうだ。出来ることなら、また見てもらいたかった。
「俺に時間がある時なら構わない」
「ありがとうございます! 連絡先交換しても」
「ああ」
どちらともなく携帯端末を出して、慣れた作業を行う。心残りはなくなったので、もう一度だけ頭を下げて、今度こそ作戦室を出た。
「さて……」
帰り道が分からない。哲次は今本部にいるだろうか。迎えに来て欲しい。
「個人ランク戦でも、点稼げるって言ってたよね」
独り言を呟き、私は更なる点を求めて個人ランク戦のブースを目指すことにした。広いボーダー本部内を、1人で歩き回る。うん、迷った。全然知らない場所にいる。
「あれ、珠莉ちゃんじゃん。こんなとこでなにしてるの?」
「あ、えっと犬飼くん」
ばったり犬飼くんと出会す。犬飼くんとは、哲次に紹介されて何回か会ったことがある。明るくて、友達多そうだなぁという印象。人間関係、私と違って器用そうだ。
「個人ランク戦のブースに行きたくて」
「ランク戦ブース!? ここから真反対だよ?」
「えっそうなの」
犬飼くんは笑うのを隠すことはせず。
「あはは、珠莉ちゃんもしかして方向音痴?」
「うーんたまに」
「たまに! たまにね!」
犬飼くんはなにかツボったらしく、しばらく笑っていた。なにが可笑しいんだろう。
「あの……」
「あーごめんごめん。ランク戦ブースね。連れてったげる」
「おい、犬飼。そいつは?」
犬飼くんの言葉尻に被せるようにして、後ろから声がかかる。視線を移せば、背の高いクールな顔立ちの男の人と、バチッと目があった。反射的にお辞儀をする。
「あ、二宮さん。この子ですよ、荒船の従姉妹。18歳で入隊してきて、トリオン強い子」
「こいつが……」
二宮さん、はどうやら私のことを知っているらしい。なんで? と疑問に思うが、初対面なのには変わりがないので、挨拶をしようと思った。
「設楽珠莉と言います。この前入隊しました。分からないことだらけなので、いろいろ教えてもらえたら嬉しいです。よろしくお願いします!」
深々と頭を下げた。なにも言葉が降ってこないので、少し不安になり顔を上げる。そうすると、一呼吸置いて
「……二宮隊の二宮だ」
と一言だけ言われた。すごくマイペースで独特な間を持った人だな、と思った。妙な緊張感が走る。
「具体的に何が分からないの? 珠莉ちゃん」
それを感じてか、犬飼くんが間に入ってくれた。
「具体的に? えっと、何から始めたらいいかも分からないくらいなんだけど……射手の理論というか、動き方が知りたい」
本当に右も左も分からないのだが、まず射手の理論を知りたいと言ったのは、哲次が知りたがるだろうなぁとぼんやりと思ったからだ。
「へぇ…………」
犬飼くんが意味ありげに二宮さんを見る。二宮さんの表情は変わらないが、急に
「設楽、このあと時間はあるか?」
と訊かれた。私は不意をつかれて瞬きを数度した。
「あ、はい! 大丈夫ですけど」
「なら、うちの訓練室に来い」
また瞬きを数度。私はどこへ連れて行かれるのだろうか。不安になって、思わず犬飼くんを見る。犬飼くんは、少し呆れたような表情で
「うん、大丈夫だよ。というか、行った方がいい。うちの隊長は腕利きの射手だからさ」
と、私の背中を押した。そうか、二宮さんも射手なのか。それなら、いろいろ教わることが多いだろう。既に歩き出そうとしている背中に声をかける。
「あの、二宮さん!」
「!」
「射手のこと、たくさん教えてください! よろしくお願いします!」
それを聞いて、二宮さんは初めて、ほんの少し笑った。
本部のどこをどう歩いたかは、全く分からなくなってしまったが。私は二宮さんと犬飼くんについていき、二宮隊の作戦室まで来た。中は驚くほど綺麗に整理整頓されていて、すっきりとしていた。男の子がテーブルでなにか飲み物を飲んで休憩していて、奥の部屋からはパソコンのキーボードを叩く音が響いている。テーブルの男の子が、私に気づいた。すると、こちらがびっくりするくらいに彼は動揺した。
「えっちょ、誰!? えっ!?」
飲んでいたコーヒーをひっくり返してしまって、テーブルはびちょびちょだ。私もどうしたらいいのか分からなくて固まっていると、犬飼くんがあーあーと言いながらふきんを持ってくる。
「辻ちゃん、しっかりしてよー」
「す、すみません、でも。女子……」
「設楽珠莉ちゃんね。荒船の従姉妹」
「あ、設楽珠莉です。その、大丈夫?」
恐る恐る声をかけると、男の子はおどおどとする。
「ぁ、はぃ……辻、新之助です……」
辻くんは蛇に睨まれたカエルのようで、こちらが申し訳なくなってくる。どうしようか悩んでいると、二宮さんに声をかけられた。
「辻は放っておいていい。こっちだ」
「あ、はい」
「氷見、訓練室を使う」
「分かりました」
部屋の奥に進むとモニターがあり、そこで女の子が作業をしていた。目が合ったので、会釈をする。二宮さんの後ろをついていき、訓練室に入る。だだっ広い空間に、いくつか的が出ていた。
「とりあえず、あの的を撃ってみろ」
20m先の的を指差される。私はトリオンキューブを出し、8分割にして的を狙う。8個中、6個が的に当たる。
「よし。……設楽、トリガーはなにを選んでる?」
「え、アステロイドです」
「ハウンドに変えろ。お前のトリオンならそれでも充分な威力になるし、戦略も広がる」
「はい、分かりました!……えっと」
「?」
「ハウンドって、どんなトリガーですか?」
「ハウンドは……」
二宮さんは言葉数が少なく、端的な表現しかしないが、それでも熱心に私を指導してくれた。突然のレッスンだったが、1時間半は訓練室に2人でいた。
「……今日はこの辺にしておくか」
「はい、ありがとうございました」
お辞儀をすると、頭に重みがあった。びっくりして頭を抑えると、同じように驚いた顔の二宮さんと目が合う。どうやら、二宮さんが私の頭を撫でたらしい。
「えっと……」
「いや、悪い。つい。……出るか」
訓練室を出ると、辻くんと犬飼くんはもういなくなっていて。女の子だけ、まだ作業をしていた。
「お疲れ様です」
「あ、ありがとうございます……お邪魔しました」
また一礼をして、出口に向かう。思うところがあって、出るのを躊躇した。
「? どうした」
「えっと、また教わりに来てもいいですか?」
今日教わったことを、100%理解するのには時間がかかりそうだ。出来ることなら、また見てもらいたかった。
「俺に時間がある時なら構わない」
「ありがとうございます! 連絡先交換しても」
「ああ」
どちらともなく携帯端末を出して、慣れた作業を行う。心残りはなくなったので、もう一度だけ頭を下げて、今度こそ作戦室を出た。
「さて……」
帰り道が分からない。哲次は今本部にいるだろうか。迎えに来て欲しい。