longseries-2-
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2013年、6月。なんやかんや手続きとか受験の準備とかがあり、ようやくボーダーに入隊する手筈が整った。筆記試験の対策だとか言って、哲次に久々に勉強を教わったが、あの男教えるのが上手くない。なんと言うか、分からない人の気持ちが分かってない。なんとかついていったけれど、解放される頃にはかなり疲れてしまった。まぁ、おかげで筆記試験は余裕だったし、お礼は言った、ちゃんと。……鋼くんは哲次から攻撃手の理論を学んだと言っていたけど、よく完璧以上にマスターしたなぁと思う。サイドエフェクトがあるとはいえ。打ち明けられた時、素直に「いいなぁ、すごい」と言ってしまったけれど、本人はいろいろ悩むと言っていたっけ。鋼くんはなんだか放っておけない感じがあって、優しいし一緒にいて落ち着く友達の1人だ。
さて、そんなこんなで入隊式当日。緊張しているのだが、顔や態度に出ない性分なので、浮いてはいない。と思う。忍田本部長の挨拶のあと、嵐山隊の皆さんがオリエンテーションをしてくれる。佐鳥くんが狙撃手の人達を担当するのは、当たり前なのだが、今考えれば狙撃手に志願しておけばよかったと思う。(私は佐鳥くんのファンだ)私が選んだトリガーは射手トリガーのアステロイドだ。哲次に私に向いてそうなポジションを尋ねたのだが、特にこれといって向いてそうなものはないと言い切られた。それならば、哲次がやっていないことをしたいなと考えて選んだ。とりあえず、やってみてダメなら次を考えようくらいの気持ちで。嵐山さんがポイントの説明をし、訓練をするからと部屋を移動した。
「まず最初の訓練だが、対近界民戦闘訓練をやってもらう」
近界民……遠目で見たりテレビの映像で見たことしかないが、目の前にするとかなり大きい。これでも小型化していると言っていた。私でも倒せるんだろうか。
「制限時間は5分間! 各部屋始めてくれ!」
心の準備が整わないまま、始まってしまった。慌ててトリガーを起動する。光る立方体が手のひらから出て、それを4分割にした。
「まずは……」
足を潰そうと思った。弱点の目が高い位置にあるから、横倒しにする寸法だ。アステロイドを射出して、近界民の左前足に当てる。ほとんど傷がつかない。
「マジで……!?」
踏みつけてこようとするので、それを避けながら考える。考えるが、他にいい案は思いつかない。動きも鈍いし、撃ち続けたらいつかは倒れるんじゃないだろうか。私は、4分割にしたアステロイドを、左前足に一点集中して撃ち込み続けた。予測通り、近界民の体勢を前のめりに崩すことが出来た。仕上げに、弱点を大玉で潰して終わりだ。
「やった! 出来た!」
「3号室、終了。記録、59秒」
部屋を出ると、案外速く倒せていたようで、まだ訓練をしている人が多かった。けれど、次第にみんな近界民を倒して部屋から出てきた。すると、必然的に残っている人に注目がいく。最後まで残っていたのは、眼鏡をかけた中学生の男の子だった。やがて、5分が過ぎて、彼はタイムアップになった。そんな彼を遠巻きに、ヒソヒソと小馬鹿にしているような気配がした。私は、人の噂に疎いけれど、そういった「頑張る人を馬鹿にする行為」は心底嫌いだった。真面目な人が馬鹿にされるのは、許せない性質だ。だからと言って、彼になにか出来るわけじゃないけれど、私は声をかけることにした。
「お疲れ様。大丈夫?」
「あ、はい。大丈夫です……ありがとうございます」
声をかけてから、私はなにを話せばいいのか困った。歳下の男の子と話す機会が、今まで殆どない。私は女子校に通っていたから。とりあえず、名乗っておくことにした。
「私、設楽珠莉。設楽でも珠莉でも、好きに呼んで」
「じゃあ、設楽さんで……三雲修と言います、よろしく」
修くんは、訓練の結果に凹んでる様子はなく、淡々としていた。落ち着いた子だな、という印象を持った。それから、オリエンテーションが終わるまで、なんとなく修くんの横にいた。
「今日はお疲れ様。一緒に無事入隊出来てよかったね」
「はい、お疲れ様です」
このまま解散の雰囲気だったのだが、私はこういったイベント事になると気持ちが舞い上がり、対人欲求が強くなるようで。
「修くん、よかったらお茶していかない? ボーダーのラウンジ見てみたいし」
「はい、いいですよ」
修くんは嫌な顔はせず、かと言って喜んだ感じもしないけど、私の後ろをついてきてくれた。私は自販機で紅茶を買い、修くんはコーヒーを買って、適当な席につく。
「コーヒー飲めるんだ? 大人だね」
「いえ、別に。普通ですよ」
「私コーヒー飲めないからさー従兄弟からはガキって言われるんだけど」
修くんは私の話をうんうんと聞いてくれた。修くんが話さないので、私が自分の身の上をベラベラと喋る形になった。前からボーダーに入りたかったこと、不登校のこと、哲次のこと。退屈させてないか不安だったが、修くんが
「設楽さんは親しみやすいですね」
と言ってくれたので、少し安心した。
「そう? あんまりそうは思わないけど」
「少なくとも、僕はそう感じます」
「そっか。ごめんね、私ばっか話しちゃって……修くんは、どうしてボーダーに?」
「どうして、ですか……」
修くんはちょっと困った顔をして、自分の気持ちを表す言葉を探しているようだ。
「なにも出来ない自分に腹が立ったからです。なにか行動に移したくて」
私と同じだと思ったし、違うとも思った。私は私のために行動してここにいるけれど、修くんの行動は違うとなんとなく思った。
「そっかそっか。なにか出来るようになれるといいよね、私達」
「そうですね」
「そろそろ行かなくちゃ。今日はありがとう! これから頑張ろうね」
修くんの連絡先を訊けば、快く交換してくれた。私は仲間が1人増えて、とても満足した気分で帰路に着いた。
さて、そんなこんなで入隊式当日。緊張しているのだが、顔や態度に出ない性分なので、浮いてはいない。と思う。忍田本部長の挨拶のあと、嵐山隊の皆さんがオリエンテーションをしてくれる。佐鳥くんが狙撃手の人達を担当するのは、当たり前なのだが、今考えれば狙撃手に志願しておけばよかったと思う。(私は佐鳥くんのファンだ)私が選んだトリガーは射手トリガーのアステロイドだ。哲次に私に向いてそうなポジションを尋ねたのだが、特にこれといって向いてそうなものはないと言い切られた。それならば、哲次がやっていないことをしたいなと考えて選んだ。とりあえず、やってみてダメなら次を考えようくらいの気持ちで。嵐山さんがポイントの説明をし、訓練をするからと部屋を移動した。
「まず最初の訓練だが、対近界民戦闘訓練をやってもらう」
近界民……遠目で見たりテレビの映像で見たことしかないが、目の前にするとかなり大きい。これでも小型化していると言っていた。私でも倒せるんだろうか。
「制限時間は5分間! 各部屋始めてくれ!」
心の準備が整わないまま、始まってしまった。慌ててトリガーを起動する。光る立方体が手のひらから出て、それを4分割にした。
「まずは……」
足を潰そうと思った。弱点の目が高い位置にあるから、横倒しにする寸法だ。アステロイドを射出して、近界民の左前足に当てる。ほとんど傷がつかない。
「マジで……!?」
踏みつけてこようとするので、それを避けながら考える。考えるが、他にいい案は思いつかない。動きも鈍いし、撃ち続けたらいつかは倒れるんじゃないだろうか。私は、4分割にしたアステロイドを、左前足に一点集中して撃ち込み続けた。予測通り、近界民の体勢を前のめりに崩すことが出来た。仕上げに、弱点を大玉で潰して終わりだ。
「やった! 出来た!」
「3号室、終了。記録、59秒」
部屋を出ると、案外速く倒せていたようで、まだ訓練をしている人が多かった。けれど、次第にみんな近界民を倒して部屋から出てきた。すると、必然的に残っている人に注目がいく。最後まで残っていたのは、眼鏡をかけた中学生の男の子だった。やがて、5分が過ぎて、彼はタイムアップになった。そんな彼を遠巻きに、ヒソヒソと小馬鹿にしているような気配がした。私は、人の噂に疎いけれど、そういった「頑張る人を馬鹿にする行為」は心底嫌いだった。真面目な人が馬鹿にされるのは、許せない性質だ。だからと言って、彼になにか出来るわけじゃないけれど、私は声をかけることにした。
「お疲れ様。大丈夫?」
「あ、はい。大丈夫です……ありがとうございます」
声をかけてから、私はなにを話せばいいのか困った。歳下の男の子と話す機会が、今まで殆どない。私は女子校に通っていたから。とりあえず、名乗っておくことにした。
「私、設楽珠莉。設楽でも珠莉でも、好きに呼んで」
「じゃあ、設楽さんで……三雲修と言います、よろしく」
修くんは、訓練の結果に凹んでる様子はなく、淡々としていた。落ち着いた子だな、という印象を持った。それから、オリエンテーションが終わるまで、なんとなく修くんの横にいた。
「今日はお疲れ様。一緒に無事入隊出来てよかったね」
「はい、お疲れ様です」
このまま解散の雰囲気だったのだが、私はこういったイベント事になると気持ちが舞い上がり、対人欲求が強くなるようで。
「修くん、よかったらお茶していかない? ボーダーのラウンジ見てみたいし」
「はい、いいですよ」
修くんは嫌な顔はせず、かと言って喜んだ感じもしないけど、私の後ろをついてきてくれた。私は自販機で紅茶を買い、修くんはコーヒーを買って、適当な席につく。
「コーヒー飲めるんだ? 大人だね」
「いえ、別に。普通ですよ」
「私コーヒー飲めないからさー従兄弟からはガキって言われるんだけど」
修くんは私の話をうんうんと聞いてくれた。修くんが話さないので、私が自分の身の上をベラベラと喋る形になった。前からボーダーに入りたかったこと、不登校のこと、哲次のこと。退屈させてないか不安だったが、修くんが
「設楽さんは親しみやすいですね」
と言ってくれたので、少し安心した。
「そう? あんまりそうは思わないけど」
「少なくとも、僕はそう感じます」
「そっか。ごめんね、私ばっか話しちゃって……修くんは、どうしてボーダーに?」
「どうして、ですか……」
修くんはちょっと困った顔をして、自分の気持ちを表す言葉を探しているようだ。
「なにも出来ない自分に腹が立ったからです。なにか行動に移したくて」
私と同じだと思ったし、違うとも思った。私は私のために行動してここにいるけれど、修くんの行動は違うとなんとなく思った。
「そっかそっか。なにか出来るようになれるといいよね、私達」
「そうですね」
「そろそろ行かなくちゃ。今日はありがとう! これから頑張ろうね」
修くんの連絡先を訊けば、快く交換してくれた。私は仲間が1人増えて、とても満足した気分で帰路に着いた。