longseries-2-
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今でも、あの人が先に屋上に立っているとドキッとしてしまう。その背中に翼などないのに、飛び降りてしまいそうで。
「こんにちは、米屋くん」
「ちっす、珠莉先パイ」
陽射しを受け止める彼女は、天使のようでどこか儚げだ。そんなのはこちらの思い込みなことも、分かってるけど。人影まばらな学校の屋上の、端っこに2人で並び立つ。
「最近、面白いことありました?」
「そうだねぇ、あっ。今朝、佐鳥くんがね……」
俺と話す時、珠莉先パイはこちらを見ない。遠くを見つめながら、独り言のように話す。それは多分、俺に泣き顔を見られたことがある恥ずかしさから来ているのだと思う。
「はは、佐鳥馬鹿だなぁ」
「ふふ、可愛いよね」
「…………最近どう? 悩み事はあるか?」
会話の隙間、俺の心配事をぶつけてみる。目線は前を向いたまま、表情が少し曇った。
「…………悩み事、ないのが悩みかな」
「悩まなくてよくねぇ?」
「2人がいなくなっても、私、大丈夫みたいで。それがなんか嫌と言うか、怖い」
俯いて、珠莉先パイの長い髪が顔を隠した。憂いを帯びた様子は、何故か心惹かれてしまう。
「ありのまんまに、受け止めればいいと思うけど。俺は」
「ありのまま?」
「時間が解決しちまうものもあんだろ」
誰しもなんかしら傷を持ってる街で、みんなそれでも生きていけるのは、そういうことなんではないだろうか。俺は、幸運にも傷らしいキズを持たないから分からないけれど。
「嫌なことも怖いことも、隠さず受け入れちまえばいい。俺は横で聞いててやるよ?」
「…………私、そんな強くないよ」
「だーかーら。俺がいるっしょ?」
そこで初めて、珠莉先パイは俺を見た。迷子の子供みたいな顔で、俺は笑ってしまう。すると、今度はスネてむくれた顔になる。珠莉先パイは表情豊かだ。
「米屋くん、強くて頼もしくて……嫌い」
「お褒めいただき光栄でーす」
「なんで、」
「ん?」
「なんで、そんな優しいの」
泣きそうな声、顔は背けられて表情は隠れた。なんでだろうなぁ。
「あん時さ、あんたを助けた時。手を取れたのが、俺じゃなくてもよかった、とか。思いたくねーんだ、多分」
俺が珠莉先パイを助けた。助けてしまった。俺が救い上げた命なら、守ろうと思うのも、普通のことじゃないだろうか。
「……迷惑な先輩で、ごめんね」
「バーカ。そういうことじゃねぇーって」
上手く言葉に出来ないけれど。俺の頭の中がまとまったら、ちゃんと言葉にして伝えるから。今はまだ、淡い恋心を育てさせてください。
「たまにはさ、学校の屋上とかじゃなくて、どっか出かけねー?」
「えっいい、けど。どこに行くの?」
「本当は海とか行きてーけどなー。無理っぽいから、もうちょい近場でなんか考えといてくださいよ」
責任感、だとは思わないけど。珠莉先パイが強く前を向けるまで、俺はいくらでも付き合おうと思ってるんだ。
「こんにちは、米屋くん」
「ちっす、珠莉先パイ」
陽射しを受け止める彼女は、天使のようでどこか儚げだ。そんなのはこちらの思い込みなことも、分かってるけど。人影まばらな学校の屋上の、端っこに2人で並び立つ。
「最近、面白いことありました?」
「そうだねぇ、あっ。今朝、佐鳥くんがね……」
俺と話す時、珠莉先パイはこちらを見ない。遠くを見つめながら、独り言のように話す。それは多分、俺に泣き顔を見られたことがある恥ずかしさから来ているのだと思う。
「はは、佐鳥馬鹿だなぁ」
「ふふ、可愛いよね」
「…………最近どう? 悩み事はあるか?」
会話の隙間、俺の心配事をぶつけてみる。目線は前を向いたまま、表情が少し曇った。
「…………悩み事、ないのが悩みかな」
「悩まなくてよくねぇ?」
「2人がいなくなっても、私、大丈夫みたいで。それがなんか嫌と言うか、怖い」
俯いて、珠莉先パイの長い髪が顔を隠した。憂いを帯びた様子は、何故か心惹かれてしまう。
「ありのまんまに、受け止めればいいと思うけど。俺は」
「ありのまま?」
「時間が解決しちまうものもあんだろ」
誰しもなんかしら傷を持ってる街で、みんなそれでも生きていけるのは、そういうことなんではないだろうか。俺は、幸運にも傷らしいキズを持たないから分からないけれど。
「嫌なことも怖いことも、隠さず受け入れちまえばいい。俺は横で聞いててやるよ?」
「…………私、そんな強くないよ」
「だーかーら。俺がいるっしょ?」
そこで初めて、珠莉先パイは俺を見た。迷子の子供みたいな顔で、俺は笑ってしまう。すると、今度はスネてむくれた顔になる。珠莉先パイは表情豊かだ。
「米屋くん、強くて頼もしくて……嫌い」
「お褒めいただき光栄でーす」
「なんで、」
「ん?」
「なんで、そんな優しいの」
泣きそうな声、顔は背けられて表情は隠れた。なんでだろうなぁ。
「あん時さ、あんたを助けた時。手を取れたのが、俺じゃなくてもよかった、とか。思いたくねーんだ、多分」
俺が珠莉先パイを助けた。助けてしまった。俺が救い上げた命なら、守ろうと思うのも、普通のことじゃないだろうか。
「……迷惑な先輩で、ごめんね」
「バーカ。そういうことじゃねぇーって」
上手く言葉に出来ないけれど。俺の頭の中がまとまったら、ちゃんと言葉にして伝えるから。今はまだ、淡い恋心を育てさせてください。
「たまにはさ、学校の屋上とかじゃなくて、どっか出かけねー?」
「えっいい、けど。どこに行くの?」
「本当は海とか行きてーけどなー。無理っぽいから、もうちょい近場でなんか考えといてくださいよ」
責任感、だとは思わないけど。珠莉先パイが強く前を向けるまで、俺はいくらでも付き合おうと思ってるんだ。