longseries-2-
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俺は米屋陽介。先パイは設楽珠莉。2人の境界線は溶け合うことはないし、俺もそんなことは望んじゃいない。けど、先パイの寂しさを埋めるくらい、バチは当たらねぇんじゃないかな、って思うんだよ。
5月2日は、変則任務だった。確か、二宮隊が急遽シフトに入れなくて、暇なやつを募って組んだんだったっけか。B級のフリーが何人かと、俺で任務にあたった。連携取りにくいし、オペも蓮さんじゃなかったから、わりとみんなベイルアウトしちまって、本部に歩いて帰ったのは俺一人だった。夕方まで続いた長雨は晴れて、空には星が輝いてた。だからってわけじゃないけど、俺はふと、空を見上げたんだ。
「あ…………?」
本部の屋上に、人が見えた。ふらふらしていて、今にも落ちそうな。隊服を着ていないから、生身だと思った。直感的にやべぇと感じ、俺は本部を駆け上がった。屋上のドアを蹴破った時、足を踏み外して傾く背中が見えた。必死で腕を伸ばして、手を掴んだ。先パイも手を伸ばしてくれていて、間一髪で助けられた。……今思えば、トリオン体の俺が下で待機して、受け止めた方が安全だったんじゃね? まぁ、あの時は焦ってたし。助けられたんだから、まぁ万々歳だろ。引っ張り上げて、声をかける。
「おい、大丈夫か!?」
「あ…………」
実はこの時、俺は先パイの名前を知らなかった。覚えてなかったのが正しいかな。長い髪は印象に残ってたけど。先パイは俺の顔を見るなり顔を歪ませて。遂には、俺の胸元にすがりついて泣き出してしまった。
「えっちょ……」
「うわああああ……ああああぁぁ」
どれくらいそれを許していただろう。少しでも落ち着けるように、恐る恐る背中を撫ぜた。なんだかいけないことをしてるようで、心音は上がっていったけど。そんなこときっと知らねぇよな。やがて、叫ぶような泣き声はしゃっくりに変わり、徐々に落ち着いていった。
「落ち着いた?」
「う、うん……ありがとう、えっと」
先パイは俺の顔を見て、目を丸くした。そうして、今度は悲鳴をあげたのだった。俺は可笑しくて、ケラケラ笑ってしまった。
「えっ、えっ? えっと、三輪隊の……よね、やくんだっけ……なんで?」
「おっかしー誰だと思ってたんだよ。あんだけわんわん泣いてたくせに」
「えっと……あれ? 私誰だと思ってたのかな……」
うんうんと今度は悩み出す。忙しいな。星明かりでも、先パイが顔を赤らめてるのはなんとなく分かった。
「分かんねぇなら別にいいよ、そこ気にしてねーし」
「ごめんなさい、お恥ずかしいところを……」
「いいって。……で? あんたこんなところでなにしてたの」
そう尋ねれば、思い出したのか顔色は暗くなった。そうして、俯いて話さなくなってしまった。
「……いちお、俺は命の恩人だし? 理由くらい教えてくれてもいいんじゃねーの」
「ごめん、えっとね……えっと。……今は、話せないかも」
「ふーん? なんにも?」
「……大切な人が、親友と行方不明になったの」
「?? 昔の話??」
「……どっちでもいいよ」
あー、最近の話なのか、と俺は察した。
「それで、死にたかったのか」
「ううん、ただ分からなくなって……気付いたら落ちてたの。だからありがとう」
その時、ふんわりと見せた笑顔が、星明かりに照らせて綺麗だった。俺が先パイにこだわってしまう理由なんて、それだけのことだ。
その後、名前を聞いて、少しずつ珠莉先パイの心の傷を覗いた。傷に触れる度に、先パイの不安は溢れでてきたから、それを癒すために二つ、俺は約束した。一つ、俺は珠莉先パイの前からいなくならないこと。一つ、その証明として、一週間に一度、必ず顔を見せて会うこと。今日は、ちょうど約束の日。場所は放課後の学校の屋上で。
「こんにちは、米屋くん」
「うっす。元気?」
「うん、おかげさまでね。米屋くんは?」
「見た通り、元気だよ」
交わす言葉は、多い日ばかりじゃない。ただ、屋上からの眺めを堪能して終わる時もある。でも、珠莉先パイが穏やかそうなので、そんな時間も悪くない。
「……泣きたくなったら、頼れよな」
「あ、またその話! 泣かないよ、もう」
先パイの髪を風がさらう。夕日を背にして、にかっと笑顔を見せた。
「後輩にカッコ悪いとこ、これ以上見せられないでしょ!」
あぁ、俺は。強がりな珠莉先パイが気がかりなんだ。いや、強いんだけど。その強さは、儚さを含んでいるから。
「今更っすよ、あんだけぐしゃぐしゃな姿見せといて」
「うー意地悪だなぁ。忘れてよ」
絶対、忘れてなんかやんねー!
5月2日は、変則任務だった。確か、二宮隊が急遽シフトに入れなくて、暇なやつを募って組んだんだったっけか。B級のフリーが何人かと、俺で任務にあたった。連携取りにくいし、オペも蓮さんじゃなかったから、わりとみんなベイルアウトしちまって、本部に歩いて帰ったのは俺一人だった。夕方まで続いた長雨は晴れて、空には星が輝いてた。だからってわけじゃないけど、俺はふと、空を見上げたんだ。
「あ…………?」
本部の屋上に、人が見えた。ふらふらしていて、今にも落ちそうな。隊服を着ていないから、生身だと思った。直感的にやべぇと感じ、俺は本部を駆け上がった。屋上のドアを蹴破った時、足を踏み外して傾く背中が見えた。必死で腕を伸ばして、手を掴んだ。先パイも手を伸ばしてくれていて、間一髪で助けられた。……今思えば、トリオン体の俺が下で待機して、受け止めた方が安全だったんじゃね? まぁ、あの時は焦ってたし。助けられたんだから、まぁ万々歳だろ。引っ張り上げて、声をかける。
「おい、大丈夫か!?」
「あ…………」
実はこの時、俺は先パイの名前を知らなかった。覚えてなかったのが正しいかな。長い髪は印象に残ってたけど。先パイは俺の顔を見るなり顔を歪ませて。遂には、俺の胸元にすがりついて泣き出してしまった。
「えっちょ……」
「うわああああ……ああああぁぁ」
どれくらいそれを許していただろう。少しでも落ち着けるように、恐る恐る背中を撫ぜた。なんだかいけないことをしてるようで、心音は上がっていったけど。そんなこときっと知らねぇよな。やがて、叫ぶような泣き声はしゃっくりに変わり、徐々に落ち着いていった。
「落ち着いた?」
「う、うん……ありがとう、えっと」
先パイは俺の顔を見て、目を丸くした。そうして、今度は悲鳴をあげたのだった。俺は可笑しくて、ケラケラ笑ってしまった。
「えっ、えっ? えっと、三輪隊の……よね、やくんだっけ……なんで?」
「おっかしー誰だと思ってたんだよ。あんだけわんわん泣いてたくせに」
「えっと……あれ? 私誰だと思ってたのかな……」
うんうんと今度は悩み出す。忙しいな。星明かりでも、先パイが顔を赤らめてるのはなんとなく分かった。
「分かんねぇなら別にいいよ、そこ気にしてねーし」
「ごめんなさい、お恥ずかしいところを……」
「いいって。……で? あんたこんなところでなにしてたの」
そう尋ねれば、思い出したのか顔色は暗くなった。そうして、俯いて話さなくなってしまった。
「……いちお、俺は命の恩人だし? 理由くらい教えてくれてもいいんじゃねーの」
「ごめん、えっとね……えっと。……今は、話せないかも」
「ふーん? なんにも?」
「……大切な人が、親友と行方不明になったの」
「?? 昔の話??」
「……どっちでもいいよ」
あー、最近の話なのか、と俺は察した。
「それで、死にたかったのか」
「ううん、ただ分からなくなって……気付いたら落ちてたの。だからありがとう」
その時、ふんわりと見せた笑顔が、星明かりに照らせて綺麗だった。俺が先パイにこだわってしまう理由なんて、それだけのことだ。
その後、名前を聞いて、少しずつ珠莉先パイの心の傷を覗いた。傷に触れる度に、先パイの不安は溢れでてきたから、それを癒すために二つ、俺は約束した。一つ、俺は珠莉先パイの前からいなくならないこと。一つ、その証明として、一週間に一度、必ず顔を見せて会うこと。今日は、ちょうど約束の日。場所は放課後の学校の屋上で。
「こんにちは、米屋くん」
「うっす。元気?」
「うん、おかげさまでね。米屋くんは?」
「見た通り、元気だよ」
交わす言葉は、多い日ばかりじゃない。ただ、屋上からの眺めを堪能して終わる時もある。でも、珠莉先パイが穏やかそうなので、そんな時間も悪くない。
「……泣きたくなったら、頼れよな」
「あ、またその話! 泣かないよ、もう」
先パイの髪を風がさらう。夕日を背にして、にかっと笑顔を見せた。
「後輩にカッコ悪いとこ、これ以上見せられないでしょ!」
あぁ、俺は。強がりな珠莉先パイが気がかりなんだ。いや、強いんだけど。その強さは、儚さを含んでいるから。
「今更っすよ、あんだけぐしゃぐしゃな姿見せといて」
「うー意地悪だなぁ。忘れてよ」
絶対、忘れてなんかやんねー!