longseries-2-
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「二宮さん、先上がりますねー」
「あぁ」
部下が出払ったタイミングで、設楽に連絡をした。今日も進展はない。だが、俺にはそれを報告する義務がある。お茶請けを用意しながら、思慮にふける。あれから4ヶ月程経った。街もボーダーも相変わらずで、あいつが居なくなった穴などもうないように思えた。ただ、追いすがる俺とそれを待つあの子が、影のように残されているだけ。
「失礼します」
お茶の用意が終わる前に、設楽は到着してしまった。彼女は黙って俺の横に立ち、用意の手伝いをする。
「なにか掴めました?」
「めぼしい情報はない」
「そうだと思いました」
「すまない」
「あっそういう意味じゃなくて……私こそすみません」
曖昧に笑う彼女の、言いたいことは分かっているつもりだ。鳩原を唆した黒幕は、一筋縄にはいかない。証拠や手がかりなど、掴ませるつもりはないのだろうと。だから、俺の非ではないと、設楽は笑う。
「私も知りませんでしたもの。麟児と未来ちゃんが知り合いだなんて」
「…………まだ、確定と決まったわけじゃない」
「同じ日にいなくなったのに?」
お茶の準備は整った。テーブルに移動し、向かいあって座る。紅茶を口にしながら、懐かしそうに設楽は話し始めた。
「随分、未来ちゃんの私物片付いてしまいましたね」
「あっても邪魔だからな」
「……残してはあるんでしょう?」
「オペレーター室の奥」
チラ、と設楽はそちらの方を見ただけで、見に行くことはしなかった。カタ、とティーカップを置いて、ひとつため息を溢す。……冴えない女の影が、ひどく彼女を蝕んでいるのは分かった。
「帰ってくるんでしょうか、未来ちゃん」
「分からない。こちらから迎えに行くのは、……不可能に近いだろうな」
そう伝えれば、いよいよ顔色は暗くなった。申し訳なく思う。俺の部下のせいで。
「でも……弟を探しに行ったきり、こちらに帰ってこないんじゃ意味がないじゃないですか」
「鳩原がそう思っているとは限らない」
それきり、しばしの静寂が訪れた。ぽつり、呟くように設楽は言った。
「未来ちゃんが褒めてくれないなら……もう切っちゃいたいんだけどな、髪」
髪に触れながら、寂しそうにする設楽を見て、鳩原が設楽の髪を触っていたのを思い出す。鳩原はよく、設楽をこの隊室に連れ込んだ。設楽の具合が悪いと、奥の部屋で膝枕をして休ませたりしていた。髪を撫でながら。
『ほんとうに綺麗な髪だなぁ。二宮さんもそう思いません?』
「お前の髪は綺麗だ。切るのは勿体ないと思うが」
「……ありがとうございます」
ゆるりと、哀愁のこもった笑顔を向けられる。俺には、鳩原を連れ戻すことは多分出来ないが。この子の髪は切らせたくないと思う。せめて、あの日と変わらぬ美しさのまま、彼女が生きていけるように。あの日の真実を、俺は求め続ける。
「あぁ」
部下が出払ったタイミングで、設楽に連絡をした。今日も進展はない。だが、俺にはそれを報告する義務がある。お茶請けを用意しながら、思慮にふける。あれから4ヶ月程経った。街もボーダーも相変わらずで、あいつが居なくなった穴などもうないように思えた。ただ、追いすがる俺とそれを待つあの子が、影のように残されているだけ。
「失礼します」
お茶の用意が終わる前に、設楽は到着してしまった。彼女は黙って俺の横に立ち、用意の手伝いをする。
「なにか掴めました?」
「めぼしい情報はない」
「そうだと思いました」
「すまない」
「あっそういう意味じゃなくて……私こそすみません」
曖昧に笑う彼女の、言いたいことは分かっているつもりだ。鳩原を唆した黒幕は、一筋縄にはいかない。証拠や手がかりなど、掴ませるつもりはないのだろうと。だから、俺の非ではないと、設楽は笑う。
「私も知りませんでしたもの。麟児と未来ちゃんが知り合いだなんて」
「…………まだ、確定と決まったわけじゃない」
「同じ日にいなくなったのに?」
お茶の準備は整った。テーブルに移動し、向かいあって座る。紅茶を口にしながら、懐かしそうに設楽は話し始めた。
「随分、未来ちゃんの私物片付いてしまいましたね」
「あっても邪魔だからな」
「……残してはあるんでしょう?」
「オペレーター室の奥」
チラ、と設楽はそちらの方を見ただけで、見に行くことはしなかった。カタ、とティーカップを置いて、ひとつため息を溢す。……冴えない女の影が、ひどく彼女を蝕んでいるのは分かった。
「帰ってくるんでしょうか、未来ちゃん」
「分からない。こちらから迎えに行くのは、……不可能に近いだろうな」
そう伝えれば、いよいよ顔色は暗くなった。申し訳なく思う。俺の部下のせいで。
「でも……弟を探しに行ったきり、こちらに帰ってこないんじゃ意味がないじゃないですか」
「鳩原がそう思っているとは限らない」
それきり、しばしの静寂が訪れた。ぽつり、呟くように設楽は言った。
「未来ちゃんが褒めてくれないなら……もう切っちゃいたいんだけどな、髪」
髪に触れながら、寂しそうにする設楽を見て、鳩原が設楽の髪を触っていたのを思い出す。鳩原はよく、設楽をこの隊室に連れ込んだ。設楽の具合が悪いと、奥の部屋で膝枕をして休ませたりしていた。髪を撫でながら。
『ほんとうに綺麗な髪だなぁ。二宮さんもそう思いません?』
「お前の髪は綺麗だ。切るのは勿体ないと思うが」
「……ありがとうございます」
ゆるりと、哀愁のこもった笑顔を向けられる。俺には、鳩原を連れ戻すことは多分出来ないが。この子の髪は切らせたくないと思う。せめて、あの日と変わらぬ美しさのまま、彼女が生きていけるように。あの日の真実を、俺は求め続ける。