荒船部屋
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突然ですが、彼氏とボーダーの一室に閉じ込められました。時刻は14時、この場所に来るようにある男から言い渡され、到着してみれば哲次もいて。二人揃ったところで、盛大な音を立てて入り口の鍵がかかったのです。どうやら、内側からは開かない様子。
「どうしよう、故障?」
「いや…………」
哲次を振り返るも、苦い顔をしている。私も、故障かとは言ったものの、そうではない予感がしていて苦笑いをした。ブツッと何かの電源が入る音がする。
『よしよし、二人共揃ったね!』
「その声は……王子!!」
「………………」
この部屋へ導いた張本人の声に、ノリよく反応してやる。哲次はげんなりといった様子だ。私の返事に満足したのか、王子は嬉々として説明を開始した。
『ようこそ! ここは僕が設定した「お互いの好きなところを10個言わないと出られない部屋」だよ!』
「「嘘つけ」」
同時にツッコむが、王子は楽しげな笑い声を漏らす。イヤな予感する。
『残念ながら、嘘じゃない! この部屋は、内側からは鍵が開かないようになっているからね。そして! 鍵を開ける判断をするのはーー僕だよ!』
絶望した。なんてローカルな部屋なんだ。
『ちなみに、判定員として玉狛のクーガー、カウントをそこら辺にいたポカリとミズカミングにお任せしてるよ』
「かなりガチな公開処刑じゃねぇか!!」
哲次が声を荒げるのも無理はない。哲次は照れ屋だし、人前で私の好きなところなんて言えないだろう。
「……どちらか一人じゃダメなの?」
『ノンノン! それじゃあフェアじゃないじゃない? やっぱり、お互いの口から聞かないとー』
やっぱり無理か……仕方がない。王子が飽きるまで、付き合わなければならないようだ。最悪、タイムアップで出させてもらおう。
「じゃあ、私から……」
「!! おい、待っ……」
哲次が身構えるのを待たずに、淡々と一つ目を告げた。
「めんどくさいところ」
「……はぁ?」
「だから、めんどくさいところ」
王子サイドのざわめきがなんとなく聞こえる。やがて、
「あきさんは嘘言ってないよ」
と、空閑くんのフォローが入った。カチ、とカウントがされる音。
「……どういう意味だそれ」
「そのまま。こだわり強くて頑固なところだよ」
「…………」
「哲次ないなら、次言うよ? 女子を女子として扱わないところ」
「喧嘩売ってんのか、テメェ」
カチ、とこれもカウントされる。静かに詰め寄る哲次に、笑いを堪える。
「そういうとこだよ。女の子だから、と手加減せずに全力でぶつかってくるところ。その分、ちゃんと意見や意思を尊重してくるところ」
「じゃあそう言えよ! 紛らわしい言い方すんな!」
でも女の子の扱いは悪いんだけどね、とは付け足さなかった。哲次はまだまだ言い出しそうもないので、次々述べていくことにした。
「現実主義で夢はしっかりとした目標にするところ。カッコつけでロマンチストなところ。世話焼きなところ、嫉妬深くて負けず嫌いなところ」
「おい、なんか変なの混ざってる」
「怒っても照れ隠しが九割なところ、亭主関白で感覚が古風なところ、言い出したら最後、止まらないところ」
「お前本当に俺のこと好きなのか!?」
カチカチ、と私のカウントは進んでいく。そう、嘘は言ってないのだ。証拠に、
「あらふねさん、あきさんは嘘言ってないよ」
と、空閑くんのお墨付きをいただいた。真っ直ぐ哲次を見れば、たじろぐ瞳。息を吸って、最後の一つを伝える。
「なんだかんだ、私を愛してくれるところ」
「…………!!」
気恥ずかしくなり、少し距離を置きそっぽを向く。部屋に沈黙が訪れる。静寂を破ったのは、王子の声だった。
「あきのんは10個答えたよ! ……彼氏からは、なにもないのかい?」
「…………ある。俺だって、それくらい」
哲次は煽られて意気込んだものの、また部屋は静かになってしまう。言えるわけない、と思っても、少し期待をして様子を伺った。
「…………胸が、でかい」
「ねぇそれ、どうなの?」
非難の目を向ければ、逃れるように背中を向けた。カチ、とカウントが進む。
「付き合いが長い」
『それ、ただの事実だからカウント出来ないなー』
王子の声は心底楽しそうだ。私は未だにそんなことしか言えない哲次に、呆れを通り越して微笑んでしまう。不器用な彼が、やっぱり好きなのだ。
「……全部でいいだろ」
『んーオマケでカウントしてあげるけど、それを詳しく!!』
いよいよ追い詰められた哲次が可哀想なので、王子にギブアップを申し入れようとしたら。すうっと哲次が大きく息を吸い込んだ。
「素直でバカなとこ優しいとこ可愛いとこ一緒にいて落ち着くとこ変なことに詳しいとこ甘えんぼなとこ!!」
叫ぶように一息で言われ、情報の処理が追いつかない。驚いて呆然としていると、意を決したように哲次が振り向いた。外せない視線。
「世界で一番、俺が好きなとこ。……俺も、お前が誰よりも好きだ」
ガチャン、と鍵の開く音がした。けれど、お互い動けずにいた。染まった頬は、揃いの色。
『お疲れ様~! いいもの聞かせてもらったよ! じゃあ、あとは二人でごゆっくりー』
そんな呑気な声がブツッと途絶える。立ち尽くしていると、哲次が私の腕を取り出口へ向かう。いつもより力加減が出来ていなくて少し痛い。
「哲次、あの」
「うるさいなんも言うな」
「でも、」
「あーなんだよ!」
ツカツカと歩いていく背中に、愛しさを込めてこう告げた。
「私も、哲次大好き」
「だーっそういうとこだよ!! バーカ!!」
「どうしよう、故障?」
「いや…………」
哲次を振り返るも、苦い顔をしている。私も、故障かとは言ったものの、そうではない予感がしていて苦笑いをした。ブツッと何かの電源が入る音がする。
『よしよし、二人共揃ったね!』
「その声は……王子!!」
「………………」
この部屋へ導いた張本人の声に、ノリよく反応してやる。哲次はげんなりといった様子だ。私の返事に満足したのか、王子は嬉々として説明を開始した。
『ようこそ! ここは僕が設定した「お互いの好きなところを10個言わないと出られない部屋」だよ!』
「「嘘つけ」」
同時にツッコむが、王子は楽しげな笑い声を漏らす。イヤな予感する。
『残念ながら、嘘じゃない! この部屋は、内側からは鍵が開かないようになっているからね。そして! 鍵を開ける判断をするのはーー僕だよ!』
絶望した。なんてローカルな部屋なんだ。
『ちなみに、判定員として玉狛のクーガー、カウントをそこら辺にいたポカリとミズカミングにお任せしてるよ』
「かなりガチな公開処刑じゃねぇか!!」
哲次が声を荒げるのも無理はない。哲次は照れ屋だし、人前で私の好きなところなんて言えないだろう。
「……どちらか一人じゃダメなの?」
『ノンノン! それじゃあフェアじゃないじゃない? やっぱり、お互いの口から聞かないとー』
やっぱり無理か……仕方がない。王子が飽きるまで、付き合わなければならないようだ。最悪、タイムアップで出させてもらおう。
「じゃあ、私から……」
「!! おい、待っ……」
哲次が身構えるのを待たずに、淡々と一つ目を告げた。
「めんどくさいところ」
「……はぁ?」
「だから、めんどくさいところ」
王子サイドのざわめきがなんとなく聞こえる。やがて、
「あきさんは嘘言ってないよ」
と、空閑くんのフォローが入った。カチ、とカウントがされる音。
「……どういう意味だそれ」
「そのまま。こだわり強くて頑固なところだよ」
「…………」
「哲次ないなら、次言うよ? 女子を女子として扱わないところ」
「喧嘩売ってんのか、テメェ」
カチ、とこれもカウントされる。静かに詰め寄る哲次に、笑いを堪える。
「そういうとこだよ。女の子だから、と手加減せずに全力でぶつかってくるところ。その分、ちゃんと意見や意思を尊重してくるところ」
「じゃあそう言えよ! 紛らわしい言い方すんな!」
でも女の子の扱いは悪いんだけどね、とは付け足さなかった。哲次はまだまだ言い出しそうもないので、次々述べていくことにした。
「現実主義で夢はしっかりとした目標にするところ。カッコつけでロマンチストなところ。世話焼きなところ、嫉妬深くて負けず嫌いなところ」
「おい、なんか変なの混ざってる」
「怒っても照れ隠しが九割なところ、亭主関白で感覚が古風なところ、言い出したら最後、止まらないところ」
「お前本当に俺のこと好きなのか!?」
カチカチ、と私のカウントは進んでいく。そう、嘘は言ってないのだ。証拠に、
「あらふねさん、あきさんは嘘言ってないよ」
と、空閑くんのお墨付きをいただいた。真っ直ぐ哲次を見れば、たじろぐ瞳。息を吸って、最後の一つを伝える。
「なんだかんだ、私を愛してくれるところ」
「…………!!」
気恥ずかしくなり、少し距離を置きそっぽを向く。部屋に沈黙が訪れる。静寂を破ったのは、王子の声だった。
「あきのんは10個答えたよ! ……彼氏からは、なにもないのかい?」
「…………ある。俺だって、それくらい」
哲次は煽られて意気込んだものの、また部屋は静かになってしまう。言えるわけない、と思っても、少し期待をして様子を伺った。
「…………胸が、でかい」
「ねぇそれ、どうなの?」
非難の目を向ければ、逃れるように背中を向けた。カチ、とカウントが進む。
「付き合いが長い」
『それ、ただの事実だからカウント出来ないなー』
王子の声は心底楽しそうだ。私は未だにそんなことしか言えない哲次に、呆れを通り越して微笑んでしまう。不器用な彼が、やっぱり好きなのだ。
「……全部でいいだろ」
『んーオマケでカウントしてあげるけど、それを詳しく!!』
いよいよ追い詰められた哲次が可哀想なので、王子にギブアップを申し入れようとしたら。すうっと哲次が大きく息を吸い込んだ。
「素直でバカなとこ優しいとこ可愛いとこ一緒にいて落ち着くとこ変なことに詳しいとこ甘えんぼなとこ!!」
叫ぶように一息で言われ、情報の処理が追いつかない。驚いて呆然としていると、意を決したように哲次が振り向いた。外せない視線。
「世界で一番、俺が好きなとこ。……俺も、お前が誰よりも好きだ」
ガチャン、と鍵の開く音がした。けれど、お互い動けずにいた。染まった頬は、揃いの色。
『お疲れ様~! いいもの聞かせてもらったよ! じゃあ、あとは二人でごゆっくりー』
そんな呑気な声がブツッと途絶える。立ち尽くしていると、哲次が私の腕を取り出口へ向かう。いつもより力加減が出来ていなくて少し痛い。
「哲次、あの」
「うるさいなんも言うな」
「でも、」
「あーなんだよ!」
ツカツカと歩いていく背中に、愛しさを込めてこう告げた。
「私も、哲次大好き」
「だーっそういうとこだよ!! バーカ!!」