荒船部屋
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※ペットのカメを亡くして、自分の中で気持ちの整理をつけるためと、追悼の意味合いで書いたものです。なので、あまり夢としては面白くないかもしれません。
(当時は必死でした。残しておいてよかったと思えます)
「死んじゃったあ」
泣きながらあいつから電話がかかってきたのは、夜の10時を過ぎてからだった。主語はないけど、俺はなんのことかすぐに理解した。
「そうか」
「息、してなかったの。帰って来た時、目が変な気がしてたんだけど、見ない振りしてたの」
「うん」
あきは自宅でオスのリクガメを飼っていた。あきが5歳の時の誕生日にプレゼントされたといっていたので、18年近く飼っていたことになる。あきの家に遊びに行くと、リビングに水槽が置いてあってその中で出迎えてくれていた。生意気な顔をしていて、挑発的な目でいつも俺を見ていた。大きいのか小さいのかよく分からないが、甲羅は立派でツヤツヤしていた。目も黒目でキラキラしていて、あきは自慢げに可愛がっていた。あきの姿を見つけると、口を大きく開けて寄ってくる。確かに可愛いな、と思った。
「落ち着けよ、大丈夫だから」
「うん……」
すっかり弱ったあきの声。辛いのが嫌でも伝わってきた。そして思っていた以上に、あきにとってあのカメの存在は大きかったのだと知った。
「うう、ううえ、ひっく」
兄弟のように育ったと言っていた。頑固でわがままなのだと困ったように笑っていた。具合が悪くなったのはつい最近で、去年の暮れに久々に見た時は元気にしていたのを覚えている。年が明けて、1月の末頃、
「具合が悪いみたい」
と心配そうに俺に話してきた。
「大丈夫、元気になるさ」
と俺は気休めを言った。彼女は黙って頷いた。しかし、エサを全く食べなくなり、日に日に弱っていった。その様子をいつも不安そうに俺に話した。元気になる、と俺は繰り返した。けど、遂に別れの時がやってきてしまったのだ。
「大丈夫か、会いに行こうか」
「……平気。もう落ち着いた」
涙声で、ぼんやりとあきは言う。放心状態なだけで、また思い出したら泣くだろうと思った。なにもしてやれない、あきにも、あいつにも。それが歯痒かった。
「生き物だから、仕方ないだろ。いつかいなくなるもんだ」
「うん」
「幸せだったと思うぞ、お前に飼われて」
「うん……」
失敗した。電話の向こうでまたあきが泣く気配がする。なんて言ってやればいいのか、俺にはペットと死に別れた経験もないし分からない。せめて一緒に泣いてやれればいいのかもしれないが、生憎そんな感受性豊かには育っていない。もう、黙って電話を繋いでいてやることにした。ひとつひとつ、整理して乗り越えていけるように願った。それから、あきの愛した命に手を合わせに行こうと思った。きっとこれからも、ずっと俺達のこと見てるのだろうし。まずは明日、ホワイトデーのお返しを持って会いに行こう。それで少し元気になってくれればいい。
「疲れただろ、落ち着いたらちゃんと寝ろよ」
「うん、そうする」
おやすみ、どうか良い夢を。
(当時は必死でした。残しておいてよかったと思えます)
「死んじゃったあ」
泣きながらあいつから電話がかかってきたのは、夜の10時を過ぎてからだった。主語はないけど、俺はなんのことかすぐに理解した。
「そうか」
「息、してなかったの。帰って来た時、目が変な気がしてたんだけど、見ない振りしてたの」
「うん」
あきは自宅でオスのリクガメを飼っていた。あきが5歳の時の誕生日にプレゼントされたといっていたので、18年近く飼っていたことになる。あきの家に遊びに行くと、リビングに水槽が置いてあってその中で出迎えてくれていた。生意気な顔をしていて、挑発的な目でいつも俺を見ていた。大きいのか小さいのかよく分からないが、甲羅は立派でツヤツヤしていた。目も黒目でキラキラしていて、あきは自慢げに可愛がっていた。あきの姿を見つけると、口を大きく開けて寄ってくる。確かに可愛いな、と思った。
「落ち着けよ、大丈夫だから」
「うん……」
すっかり弱ったあきの声。辛いのが嫌でも伝わってきた。そして思っていた以上に、あきにとってあのカメの存在は大きかったのだと知った。
「うう、ううえ、ひっく」
兄弟のように育ったと言っていた。頑固でわがままなのだと困ったように笑っていた。具合が悪くなったのはつい最近で、去年の暮れに久々に見た時は元気にしていたのを覚えている。年が明けて、1月の末頃、
「具合が悪いみたい」
と心配そうに俺に話してきた。
「大丈夫、元気になるさ」
と俺は気休めを言った。彼女は黙って頷いた。しかし、エサを全く食べなくなり、日に日に弱っていった。その様子をいつも不安そうに俺に話した。元気になる、と俺は繰り返した。けど、遂に別れの時がやってきてしまったのだ。
「大丈夫か、会いに行こうか」
「……平気。もう落ち着いた」
涙声で、ぼんやりとあきは言う。放心状態なだけで、また思い出したら泣くだろうと思った。なにもしてやれない、あきにも、あいつにも。それが歯痒かった。
「生き物だから、仕方ないだろ。いつかいなくなるもんだ」
「うん」
「幸せだったと思うぞ、お前に飼われて」
「うん……」
失敗した。電話の向こうでまたあきが泣く気配がする。なんて言ってやればいいのか、俺にはペットと死に別れた経験もないし分からない。せめて一緒に泣いてやれればいいのかもしれないが、生憎そんな感受性豊かには育っていない。もう、黙って電話を繋いでいてやることにした。ひとつひとつ、整理して乗り越えていけるように願った。それから、あきの愛した命に手を合わせに行こうと思った。きっとこれからも、ずっと俺達のこと見てるのだろうし。まずは明日、ホワイトデーのお返しを持って会いに行こう。それで少し元気になってくれればいい。
「疲れただろ、落ち着いたらちゃんと寝ろよ」
「うん、そうする」
おやすみ、どうか良い夢を。