荒船部屋
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ヴッーとスマホが顔の横で震えたので目を覚ます。大好きな彼女からのLINEを、働かない頭で開いた。
『どうした? なんかあった?』
「……??」
なんで心配されてんだ? LINEを遡れば、
『着いたー!!』
『今、家出たよ!』
と出てきて。そこでようやく現在の時間を見た。
「……やっべえ! 寝坊したっ!」
跳ね起き、とりあえずタンスから洋服を引っ張り出し、着替える前に顔を洗うべきか、だとか、歯も磨かないと、だとか。わたわたと右往左往しながら支度をする。今日は、珍しく俺からしっかり誘った映画デートの日だ。いつもなんとなく一緒にいてグダグダするから、それもいいんだけど、たまにはおめかししてちゃんとデートしようか、なんて。朝の待ち合わせが楽しみだから、お互いの家から出発しよう! なんて提案を受け入れて。
『わりぃ、いま起きた!』
そう素直にLINEすれば、すぐにつく既読。けれど、電話をかけても出てはくれない。LINEも反応はない。サーッと血の気が引いた。昨日の夜に映画の復習なんかするんじゃなかった!
『すぐ! すぐ行くから! 待ってろ!』
カバンをひったくって、帽子かぶって。急いで家を出た。空きっ腹での全力疾走。少し目眩を起こしそうになったが、とにかく待ち合わせ場所まで走った。あの馬鹿、もしかしたら寒い中じっと待ってるかもしれねぇ。到着して、息と一緒に唾を飲み込んで。見回したが、あきはいない。帰っちまった、という選択肢は俺の中にはなかった。電話をもう一度かければ、今度は繋がった。
「今ついた! どこにいる!?」
「…………映画館のロビー」
完全に不貞腐れた声で、でも声を聞いた途端、どうしようもなく会いたくなった。また俺は映画館まで走り出した。
「ごめん、待たせて悪かった!」
「遅い」
「知ってる、もうちょっと待てって」
「嫌だ」
「んなこと言うなって」
電話を繋いだまま、とにかく走る。愚図って鼻を鳴らすような声が聞こえる。
「……楽しみにしてたのに。哲次に早く会いたかったのに」
「っ、分かったから、今行くからごめん!」
ああ、ダメだ。あいつの機嫌損ねてるのに。
「哲次は楽しみじゃなかったんだぁ」
「そんなことねぇよ! 超楽しみにしてた!」
「嘘だぁ……!」
愚図るあきが、どうしても可愛らしくて。頬が緩むのを抑えられない。映画館に飛び込んで、ロビーの椅子にちょこんと座っている背中を見つけた。駆け寄って、後ろから抱き締めた。
「「待たせたな、ごめんな?」」
電話で俺の声が重なって聞こえる。あきは電話を切ると、身をよじって逃げ出そうとする。
「遅い、遅いー!」
「悪かったって本当に」
「悪いと思ってない、哲次笑ってるもん!」
じとーっと睨むあきに、きゅっと胸を締め付けられる。
「また笑ってる!」
「ごめん、可愛いんだよあきが」
「可愛くない!」
そっぽを向くあきの頬に、思わずキスをした。そうするとポスッとこちらに倒れてくるあきを、もう一度強く抱き締め直した。
「……映画始まっちゃったよ」
「次の回で見りゃいい。つーか、いいよ。今日はお前の好きなことするのでも」
「……哲次と映画見る」
「そっか、ありがとな」
こんな甘ったれた関係、望んでたわけじゃねぇけど。一度ハマったら、抜けられねぇ。今日一日、わがまま姫になってもらっても構わない。どんなあきでも、笑って愛せてしまえるんだ。
『どうした? なんかあった?』
「……??」
なんで心配されてんだ? LINEを遡れば、
『着いたー!!』
『今、家出たよ!』
と出てきて。そこでようやく現在の時間を見た。
「……やっべえ! 寝坊したっ!」
跳ね起き、とりあえずタンスから洋服を引っ張り出し、着替える前に顔を洗うべきか、だとか、歯も磨かないと、だとか。わたわたと右往左往しながら支度をする。今日は、珍しく俺からしっかり誘った映画デートの日だ。いつもなんとなく一緒にいてグダグダするから、それもいいんだけど、たまにはおめかししてちゃんとデートしようか、なんて。朝の待ち合わせが楽しみだから、お互いの家から出発しよう! なんて提案を受け入れて。
『わりぃ、いま起きた!』
そう素直にLINEすれば、すぐにつく既読。けれど、電話をかけても出てはくれない。LINEも反応はない。サーッと血の気が引いた。昨日の夜に映画の復習なんかするんじゃなかった!
『すぐ! すぐ行くから! 待ってろ!』
カバンをひったくって、帽子かぶって。急いで家を出た。空きっ腹での全力疾走。少し目眩を起こしそうになったが、とにかく待ち合わせ場所まで走った。あの馬鹿、もしかしたら寒い中じっと待ってるかもしれねぇ。到着して、息と一緒に唾を飲み込んで。見回したが、あきはいない。帰っちまった、という選択肢は俺の中にはなかった。電話をもう一度かければ、今度は繋がった。
「今ついた! どこにいる!?」
「…………映画館のロビー」
完全に不貞腐れた声で、でも声を聞いた途端、どうしようもなく会いたくなった。また俺は映画館まで走り出した。
「ごめん、待たせて悪かった!」
「遅い」
「知ってる、もうちょっと待てって」
「嫌だ」
「んなこと言うなって」
電話を繋いだまま、とにかく走る。愚図って鼻を鳴らすような声が聞こえる。
「……楽しみにしてたのに。哲次に早く会いたかったのに」
「っ、分かったから、今行くからごめん!」
ああ、ダメだ。あいつの機嫌損ねてるのに。
「哲次は楽しみじゃなかったんだぁ」
「そんなことねぇよ! 超楽しみにしてた!」
「嘘だぁ……!」
愚図るあきが、どうしても可愛らしくて。頬が緩むのを抑えられない。映画館に飛び込んで、ロビーの椅子にちょこんと座っている背中を見つけた。駆け寄って、後ろから抱き締めた。
「「待たせたな、ごめんな?」」
電話で俺の声が重なって聞こえる。あきは電話を切ると、身をよじって逃げ出そうとする。
「遅い、遅いー!」
「悪かったって本当に」
「悪いと思ってない、哲次笑ってるもん!」
じとーっと睨むあきに、きゅっと胸を締め付けられる。
「また笑ってる!」
「ごめん、可愛いんだよあきが」
「可愛くない!」
そっぽを向くあきの頬に、思わずキスをした。そうするとポスッとこちらに倒れてくるあきを、もう一度強く抱き締め直した。
「……映画始まっちゃったよ」
「次の回で見りゃいい。つーか、いいよ。今日はお前の好きなことするのでも」
「……哲次と映画見る」
「そっか、ありがとな」
こんな甘ったれた関係、望んでたわけじゃねぇけど。一度ハマったら、抜けられねぇ。今日一日、わがまま姫になってもらっても構わない。どんなあきでも、笑って愛せてしまえるんだ。