荒船部屋
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情熱を燃やせる人が好きだ。懸命に何かを追いかける人が好きだ。熱く夢のように幻のように、雄弁に語ることは尊い。そんなことは無理だと足を引っ張る人になど目もくれず、自分の道を歩む人が好きだ。私も、そうありたいと思う。
「ん……今何時だ……?」
私を抱き枕に、無防備に昼寝をしていた哲次が目を覚ました。最近、哲次は昼寝が増えたような気がする。私との時間を、目一杯とってくれるようになった。私は嬉しさ半分、哲次の目標の邪魔をしてるのではないか、といらない心配をする。だって、哲次の背中に憧れてきたのだ。振り向かれて抱きしめてくれるなんて、あり得ないことだと諦めていたから。ずっと望んでいたことなのに、いざ手に入ると不安になるなんて。感情とは不思議だ。
「なんだよ、起きてたなら声かけろよな」
柔い音、落とされるキス。うっとりと潤んだ瞳に見つめられる。恥ずかしくて背中を向こうとしたが、許してはくれなかった。
「だって、気持ち良さそうに寝てたから」
「おう、あき抱きしめてたからな。すげぇ安心する」
幸せそうに言われては、私もなにか伝えなきゃと思うのだが、上手く言葉に出来ない。今までずーっと、好きだと言えたのに。私の悩みなどお構いなしに、哲次は頬ずりをして甘えてくる。
「なに難しい顔してんだ?」
「なんて言えばいいか、分からないの」
「いいよ、無理に言葉にしなくて。ちゃんと分かってる」
とん、と額と額をくっつけられる。紫色の瞳が優しく細められた。ギュッと目を瞑った。
「照れてんだ、可愛い」
「可愛くない」
「天の邪鬼め。食ってやろうか」
「イヤだ」
逃げる先がなくて、哲次の胸にすがりついた。鍛えられた頼もしい胸から、生きてる鼓動が聞こえる。そっと見上げれば、赤い頬と共に速くなる。
「……本当に食っちまうぞ」
「いーやー……」
首を横に振れば、抱きしめる力が強くなった。目の前に、哲次の首筋がある。白くて綺麗なそれ。鎖骨のくぼみに下顎を当てて、かぷ、と噛み付いてみた。
「ん、なにしてんだ。くすぐってえ」
「いい匂いするから、かじってみた」
「なんだそりゃ。美味いかよ?」
「別に美味しくはないけど」
かじかじと甘噛みを繰り返す。噛み癖があるのかもしれない、私。筋肉のついた哲次の首には、歯型はつかなかった。軽く肩を押され、今度は哲次が私の首に噛みつく。ガブっと効果音がつきそうなくらい。
「いた、い」
「!! わり、勢い余った」
私についた歯型を、今度はゆっくり舐め上げられる。くすぐったくて、恥ずかしくて、哲次の手を握った。しっかりと指を絡めとられる。
「確かに、いい匂いすんな」
黙っていたら今度は強く吸われる。見える位置だから、キスマークはやめてほしいなぁ。身をよじって離れようとすれば、やめる代わりにまた抱き寄せられる。
「吸血鬼になった気分だ」
「血、飲むの?」
「お前の血なら。全部飲み干して俺のものにしたい」
急にロマンチックに愛を囁かれて。ときたま、哲次はロマンチストにスイッチが入る。その度、私は驚いてしまって顔が見れなくなる。
「逆でもいいぜ? 俺の血一滴残らずお前にやるよ」
「……血は別にいらないよ」
「じゃあ、なになら欲しいんだ? こっち向いて言えよ」
くいっと顎を持たれて、意地悪な表情の哲次と見つめ合う。逃れられずに、
「こころなら、欲しい」
と小さく呟いた。その唇に唇を重ねられる。
「んう」
「そんなもん、お前とっくに持って行ったじゃねーか……!」
苦しさをぶつけるように、繰り返しキスされる。そんな大事なもの、私はもう貰ってるというのか。なんて贅沢なんだろうか。私も苦しくなる。
「哲次、私も、」
「ああ?」
「私のこころ、哲次のものだよ」
言わなきゃならないと思った。それを聞いてピタリと哲次は止まると、ゆっくり私を仰向けにして、顔の両側に手をついた。
「もっかい聞くぞ、食っていいよな?」
哲次の一切の情熱が、一心に私に注がれている。その事実に未だに戸惑う。もったいないと恐れることと、ずっとこっちを見てて欲しい気持ちと、ぐしゃぐしゃになる。全身全霊の愛を前に、このまま幸せでいいのだろうかなんて、きっと失礼な悩みだ。それでも、不安は拭えない。
「てつじ、」
「……ごめんな、止められねぇんだ」
愛することとは、こんなにも苦しい。
「ん……今何時だ……?」
私を抱き枕に、無防備に昼寝をしていた哲次が目を覚ました。最近、哲次は昼寝が増えたような気がする。私との時間を、目一杯とってくれるようになった。私は嬉しさ半分、哲次の目標の邪魔をしてるのではないか、といらない心配をする。だって、哲次の背中に憧れてきたのだ。振り向かれて抱きしめてくれるなんて、あり得ないことだと諦めていたから。ずっと望んでいたことなのに、いざ手に入ると不安になるなんて。感情とは不思議だ。
「なんだよ、起きてたなら声かけろよな」
柔い音、落とされるキス。うっとりと潤んだ瞳に見つめられる。恥ずかしくて背中を向こうとしたが、許してはくれなかった。
「だって、気持ち良さそうに寝てたから」
「おう、あき抱きしめてたからな。すげぇ安心する」
幸せそうに言われては、私もなにか伝えなきゃと思うのだが、上手く言葉に出来ない。今までずーっと、好きだと言えたのに。私の悩みなどお構いなしに、哲次は頬ずりをして甘えてくる。
「なに難しい顔してんだ?」
「なんて言えばいいか、分からないの」
「いいよ、無理に言葉にしなくて。ちゃんと分かってる」
とん、と額と額をくっつけられる。紫色の瞳が優しく細められた。ギュッと目を瞑った。
「照れてんだ、可愛い」
「可愛くない」
「天の邪鬼め。食ってやろうか」
「イヤだ」
逃げる先がなくて、哲次の胸にすがりついた。鍛えられた頼もしい胸から、生きてる鼓動が聞こえる。そっと見上げれば、赤い頬と共に速くなる。
「……本当に食っちまうぞ」
「いーやー……」
首を横に振れば、抱きしめる力が強くなった。目の前に、哲次の首筋がある。白くて綺麗なそれ。鎖骨のくぼみに下顎を当てて、かぷ、と噛み付いてみた。
「ん、なにしてんだ。くすぐってえ」
「いい匂いするから、かじってみた」
「なんだそりゃ。美味いかよ?」
「別に美味しくはないけど」
かじかじと甘噛みを繰り返す。噛み癖があるのかもしれない、私。筋肉のついた哲次の首には、歯型はつかなかった。軽く肩を押され、今度は哲次が私の首に噛みつく。ガブっと効果音がつきそうなくらい。
「いた、い」
「!! わり、勢い余った」
私についた歯型を、今度はゆっくり舐め上げられる。くすぐったくて、恥ずかしくて、哲次の手を握った。しっかりと指を絡めとられる。
「確かに、いい匂いすんな」
黙っていたら今度は強く吸われる。見える位置だから、キスマークはやめてほしいなぁ。身をよじって離れようとすれば、やめる代わりにまた抱き寄せられる。
「吸血鬼になった気分だ」
「血、飲むの?」
「お前の血なら。全部飲み干して俺のものにしたい」
急にロマンチックに愛を囁かれて。ときたま、哲次はロマンチストにスイッチが入る。その度、私は驚いてしまって顔が見れなくなる。
「逆でもいいぜ? 俺の血一滴残らずお前にやるよ」
「……血は別にいらないよ」
「じゃあ、なになら欲しいんだ? こっち向いて言えよ」
くいっと顎を持たれて、意地悪な表情の哲次と見つめ合う。逃れられずに、
「こころなら、欲しい」
と小さく呟いた。その唇に唇を重ねられる。
「んう」
「そんなもん、お前とっくに持って行ったじゃねーか……!」
苦しさをぶつけるように、繰り返しキスされる。そんな大事なもの、私はもう貰ってるというのか。なんて贅沢なんだろうか。私も苦しくなる。
「哲次、私も、」
「ああ?」
「私のこころ、哲次のものだよ」
言わなきゃならないと思った。それを聞いてピタリと哲次は止まると、ゆっくり私を仰向けにして、顔の両側に手をついた。
「もっかい聞くぞ、食っていいよな?」
哲次の一切の情熱が、一心に私に注がれている。その事実に未だに戸惑う。もったいないと恐れることと、ずっとこっちを見てて欲しい気持ちと、ぐしゃぐしゃになる。全身全霊の愛を前に、このまま幸せでいいのだろうかなんて、きっと失礼な悩みだ。それでも、不安は拭えない。
「てつじ、」
「……ごめんな、止められねぇんだ」
愛することとは、こんなにも苦しい。