荒船部屋
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気に食わねえ。
「せんせーなんかまた照準ズレがちだから矯正してー」
「んー? しょうがねぇな早乙女は」
あいつが駆け寄る先は当真で、俺じゃない。俺が狙撃手に転向した時に、ひっついて一緒に変えたクセに。あきが真っ先に教わりに行ったのは当真んとこだ。確かに、初めは俺だって人に教えられはしねぇが。だったら俺が出来るまで待ってりゃいいのに。あいつはそうしない。
「……んーな睨むなよ、荒船。教えてるだけだろ?」
「…………俺が教える」
「えー……?」
なんだその、えーって。イラついてしまって睨めば、困ったように首を傾げる。
「でも先生のが私の癖は分かるよね?」
「まあ、最初から見てっからな」
確かな信頼関係があるのが腹立たしいのは、俺が小さい男だからなのか。ぐっと拳を握りしめて舌打ちまでしてしまうのは、あきのことだから勘弁してほしい。
「まあまあ、そこまで言うなら荒船が教えてみるか?」
「!!」
すっと当真がスペースを空ける。そこに入れ替わりで立って、あきの後ろから構えを見る。
「……もうちょい右だ」
「中心が?」
「そう。寄りすぎ」
言えば素直に直して、撃つ。的には当たるが、少しまだ甘い。それから何回か調整してやるが、どうにも上手くいかない。
「……左肩、上がってんじゃねぇの?」
背後から当真がそう言った。ハッと気づいたようにあきの身体が揺れて、すっと構え直した。的はど真ん中を射抜いた。
「……!!」
悔しくて、苦しくて。黙って俺はその場を立ち去った。
「哲次、」
呼びかける声も振り払って、早足であきから離れた。
モヤモヤが胸を埋め尽くして、最悪な気分だ。そもそも、あいつなんなんだ。俺のこと追っかけるみたいにボーダー入ってきて、俺の目標聞いたら一緒にやるって言い出して。それなのに、最初に俺から教わろうとしない。教わるのを待たない。使ってるトリガーだってそうだ。イーグレットこそ同じだが、あいつが使う攻撃手トリガーはスコーピオン。俺の専門じゃねぇ。そのスコーピオンだって。
「ぶはは、なんだ荒船! ひっでえ面してんなぁ!」
今話しかけてきたこいつに教わってる。カゲに思いっきりイラついた感情をぶつけてしまった。
「痛ってー……なんだよ、俺なんかしたかぁ?」
「悪い」
「相当キテんなー。なんだ? 早乙女か?」
図星を突かれ黙れば、くいっと休憩場に誘われた。そのまま、コーヒーを買って横並びに座る。
「で? どうしたんだよ?」
「……あいつ、なんで俺から教わんねえんだよ」
「あ? なにがだよ」
「トリガー。お前とか、当真に教わるじゃねぇか。気に食わねえ」
「……なに、おめぇ知らねぇのか?」
純粋に驚いた声を出されて、こちらも面食らう。きょとんとしてれば、カゲはまた笑い出した。
「言ってねぇのかよ! あいつ本当大事なことお前に話さねぇな!」
その言葉にイライラを通り越して、不安に駆られる。大事なこと? あいつなんか隠し事してんのか? ぐるぐると視界が回って気持ちが悪い。
「わざとだよ。早乙女がお前以外から教わんのは。」
「……どういう意味だ」
「だからよ、荒船は独学だろ? けど、攻撃手とか狙撃手の理論なんて、一概にゃ言えねぇだろ。だから、違う方法で完璧万能手目指すんだと」
「な……は?」
理解が追いつかなくて情けない声が出る。そんなこと、話されたことがない。思いもしなかった。
「『哲次の理論の助けになりたいんだー』って。あいつ言ってたぞ」
「……そんなの、知らねぇ」
頭を抱えた。こみ上げる何かで目頭が熱い。なんだっていつも、あきは俺の知らないところで頑張るのか。なんで、俺はいつも気付いてやれねえんだ。今度は、自分が情けなくて恥ずかしくて、消えたくなる。
「あ、哲次いたー!」
いつだって最悪なタイミングで、あきは俺を見つける。
「じゃ、あとは2人で話せよ」
さっさとカゲは離れて行っちまう。あきは気にしない風に俺の横にぴったりと座った。
「どうしたの? 具合悪い?」
「……ああ悪いな」
「……私のせい? ごめんなさい」
また無駄に謝らせた。くそ。肩を引き寄せて、もたれかからせた。
「哲次?」
「怖がらせたよな、さっき。悪かった」
「うん? 気にしてないよー」
「言っていいんだぞ、怖かったって」
「……ちょっと怖かった」
小さい声で、遠慮がちにそう言った。俺に憧れるこいつは、時折嘘を吐く。隠し事もする。それも無自覚でだ。タチが悪いからやめさせたいのに、上手くいかねぇ。
「お前、俺のために他の奴に教わってたのか」
「うん? 哲次の役に立てるかなって、いろんな話聞いてる」
「それなんで俺に言わねえんだ」
「あれ? 言ってなかったっけ?」
えへへと誤魔化すようにあきは笑うので、ビシッとデコピンをお見舞いする。
「いたっ」
「言ってねぇよ。馬鹿」
「うーん、ごめん。だってね、」
あきは俺の腕にしがみついて甘えながら、
「言ったら、なんかかっこ悪いじゃん!」
と言い切った。そんなとこカッコつけなくていいっての。憧れで結ばれた俺たちは、憧れの壁に阻まれている。俺はもう、その憧れって距離を飛び越して傍にいたいんだよ。
「せんせーなんかまた照準ズレがちだから矯正してー」
「んー? しょうがねぇな早乙女は」
あいつが駆け寄る先は当真で、俺じゃない。俺が狙撃手に転向した時に、ひっついて一緒に変えたクセに。あきが真っ先に教わりに行ったのは当真んとこだ。確かに、初めは俺だって人に教えられはしねぇが。だったら俺が出来るまで待ってりゃいいのに。あいつはそうしない。
「……んーな睨むなよ、荒船。教えてるだけだろ?」
「…………俺が教える」
「えー……?」
なんだその、えーって。イラついてしまって睨めば、困ったように首を傾げる。
「でも先生のが私の癖は分かるよね?」
「まあ、最初から見てっからな」
確かな信頼関係があるのが腹立たしいのは、俺が小さい男だからなのか。ぐっと拳を握りしめて舌打ちまでしてしまうのは、あきのことだから勘弁してほしい。
「まあまあ、そこまで言うなら荒船が教えてみるか?」
「!!」
すっと当真がスペースを空ける。そこに入れ替わりで立って、あきの後ろから構えを見る。
「……もうちょい右だ」
「中心が?」
「そう。寄りすぎ」
言えば素直に直して、撃つ。的には当たるが、少しまだ甘い。それから何回か調整してやるが、どうにも上手くいかない。
「……左肩、上がってんじゃねぇの?」
背後から当真がそう言った。ハッと気づいたようにあきの身体が揺れて、すっと構え直した。的はど真ん中を射抜いた。
「……!!」
悔しくて、苦しくて。黙って俺はその場を立ち去った。
「哲次、」
呼びかける声も振り払って、早足であきから離れた。
モヤモヤが胸を埋め尽くして、最悪な気分だ。そもそも、あいつなんなんだ。俺のこと追っかけるみたいにボーダー入ってきて、俺の目標聞いたら一緒にやるって言い出して。それなのに、最初に俺から教わろうとしない。教わるのを待たない。使ってるトリガーだってそうだ。イーグレットこそ同じだが、あいつが使う攻撃手トリガーはスコーピオン。俺の専門じゃねぇ。そのスコーピオンだって。
「ぶはは、なんだ荒船! ひっでえ面してんなぁ!」
今話しかけてきたこいつに教わってる。カゲに思いっきりイラついた感情をぶつけてしまった。
「痛ってー……なんだよ、俺なんかしたかぁ?」
「悪い」
「相当キテんなー。なんだ? 早乙女か?」
図星を突かれ黙れば、くいっと休憩場に誘われた。そのまま、コーヒーを買って横並びに座る。
「で? どうしたんだよ?」
「……あいつ、なんで俺から教わんねえんだよ」
「あ? なにがだよ」
「トリガー。お前とか、当真に教わるじゃねぇか。気に食わねえ」
「……なに、おめぇ知らねぇのか?」
純粋に驚いた声を出されて、こちらも面食らう。きょとんとしてれば、カゲはまた笑い出した。
「言ってねぇのかよ! あいつ本当大事なことお前に話さねぇな!」
その言葉にイライラを通り越して、不安に駆られる。大事なこと? あいつなんか隠し事してんのか? ぐるぐると視界が回って気持ちが悪い。
「わざとだよ。早乙女がお前以外から教わんのは。」
「……どういう意味だ」
「だからよ、荒船は独学だろ? けど、攻撃手とか狙撃手の理論なんて、一概にゃ言えねぇだろ。だから、違う方法で完璧万能手目指すんだと」
「な……は?」
理解が追いつかなくて情けない声が出る。そんなこと、話されたことがない。思いもしなかった。
「『哲次の理論の助けになりたいんだー』って。あいつ言ってたぞ」
「……そんなの、知らねぇ」
頭を抱えた。こみ上げる何かで目頭が熱い。なんだっていつも、あきは俺の知らないところで頑張るのか。なんで、俺はいつも気付いてやれねえんだ。今度は、自分が情けなくて恥ずかしくて、消えたくなる。
「あ、哲次いたー!」
いつだって最悪なタイミングで、あきは俺を見つける。
「じゃ、あとは2人で話せよ」
さっさとカゲは離れて行っちまう。あきは気にしない風に俺の横にぴったりと座った。
「どうしたの? 具合悪い?」
「……ああ悪いな」
「……私のせい? ごめんなさい」
また無駄に謝らせた。くそ。肩を引き寄せて、もたれかからせた。
「哲次?」
「怖がらせたよな、さっき。悪かった」
「うん? 気にしてないよー」
「言っていいんだぞ、怖かったって」
「……ちょっと怖かった」
小さい声で、遠慮がちにそう言った。俺に憧れるこいつは、時折嘘を吐く。隠し事もする。それも無自覚でだ。タチが悪いからやめさせたいのに、上手くいかねぇ。
「お前、俺のために他の奴に教わってたのか」
「うん? 哲次の役に立てるかなって、いろんな話聞いてる」
「それなんで俺に言わねえんだ」
「あれ? 言ってなかったっけ?」
えへへと誤魔化すようにあきは笑うので、ビシッとデコピンをお見舞いする。
「いたっ」
「言ってねぇよ。馬鹿」
「うーん、ごめん。だってね、」
あきは俺の腕にしがみついて甘えながら、
「言ったら、なんかかっこ悪いじゃん!」
と言い切った。そんなとこカッコつけなくていいっての。憧れで結ばれた俺たちは、憧れの壁に阻まれている。俺はもう、その憧れって距離を飛び越して傍にいたいんだよ。